私は、35年も為替のディーリングに携わってきました。「35年もやっていると飽きるでしょう」と言われるかもしれません。しかし、本人は、日々新たに気づくことがあって、実に新鮮です。
ディーラーからストラテジストへ
35年前、半年間の短期ディーリング集中講座とも言える特訓を受けて、曲がりなりにもディーラーになりました。
最初の半年間のディーリング集中講座は地獄でしたが、何がきっかけだったのかはもう忘れましたが、「ディーリングは面白いっ!」と気づいてからはもう夢中の世界でした。ディーリングの世界に入って1年も経たずに、この仕事をこれからの一生の仕事にしようとまで心に決めました。
そして幸運にも、場にも恵まれました。
ロンドンに始まり、東京、ニューヨークで経験を積みました。それが骨になり、肉となっていきました。何よりも大きな収穫は、内外に多くの知己を得ることができたことでした。これは、得難いものがありました。
そして50歳近くなった頃、このまま現場でいくのもありだが、せっかくここまで得た経験や知り合いから得たことを、次の世代やこれから学んでいこうという人たちに伝えていくのも自分の役目ではないかと思い、今のストラテジストという為替戦略を練る専門家になることにしました。
それから10年、ストラテジストをやってきました。もちろんそれなりの苦労はありましたが、実に、素直にマーケットが見られた10年間だったと思っています。
10年前よりも、格段に「なるほど、相場の仕組みとはこんなものなんだ」ということは、例えば過去にもご紹介しています値動き分析などを解明していく中でわかってきました。
実は、値動き分析は私が発見したものではなく、日々インターバンクディーラーたち、あるいはロンドン勢など世界のトレーダーたちが感じていることを、文章化したものに過ぎません。
ただ、感じているものを文章化するというのが実に難しく、かなりの時間を要しました。多分、私のようなある程度自分で自由に時間の使える人間でないとやれなかったのではないかと思っています。
他にも気づくことは多く、例えば着想したものが現実化するには、自分が思っている以上に時間がかかるとか、反発はそこまではしないだろうと思うぐらいまでは実際にはするといった、一言で言えば、相場で良く言う、「焦りは禁物」といったことの具体的な仕組みなどがわかってきました。
こうした解明はこれからも続くと思います。
また、自分の持つ五感について、世の中では非科学的で気のせいにすぎないとされてしまうことが多いように思いますが、私はせっかく持って生まれた五感をできるだけ使わないと損だと思っています。
気配(けはい)という言葉があります。その部屋に誰もいなくても、そのしばらく前に誰かいれば、気配を感じるものです。
もっと、トレーディングの世界で言えば、私が一番インターバンクディーラーとしてバリバリやっていたときは、自分に危険が迫っていることは背筋がゾクゾクすることでわかりました。お客からプライスを求める電話が来るなと、着信する数分前に感じました。
こうした、気配を感じることが、自らを防衛することになります。
具体的に、個人のトレーダーの方々にお勧めするとしたら、プライスを見るなり、チャートを見るなりしたときに、それらの裏に何かがあると語りかけてくることを感じ取るように心がけてほしいということです。
せっかくの五感ですから、大事に使ってほしいと思います。
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