ところで、特に中高年の方などで「持病の薬を飲みながら、不足しがちな栄養素をマルチビタミンなどのサプリメントで補っている」――なんてケースに心当たりはありませんか? はたして、薬とサプリは併用しても大丈夫なのでしょうか。

以前、アメリカで710人のサプリメント服用者に対して行われた調査によると、薬とサプリメントの飲み合わせで副作用を経験したことのある人が33.2%もいたとのことです。さらに副作用が出現した人のうち、29%が「重大な副作用」と分類されました(American Journal of Medicine vol.121(3)より)。

単純に計算すると、薬とサプリメントを併用している人の9人に1人に「重大な副作用」が現れるということです。看過できない数字ですね。具体的にどのような飲み合わせ(好ましくない組み合わせ)があるのでしょうか。いくつかの例をあげてみましょう。

セント・ジョーンズ・ワート×抗うつ薬・偏頭痛薬など

セント・ジョーンズ・ワートは「西洋オトギリソウ」とも呼ばれるハーブで、海外ではさまざまな目的で昔から使われています。脳神経系に作用する成分が「セロトニン症候群」という症状を引き起こすことがあるため、同症候群を起こしやすい医療用の抗うつ薬や偏頭痛薬、咳止めの薬と一緒に飲むとこの症候群が強まり、興奮やふるえが止まらないという副作用が出てくるケースがあります。

また、セント・ジョーンズ・ワートは肝臓の代謝酵素(薬を分解する酵素)の活性を高めるため、多くの薬(心臓薬・喘息薬・経口避妊薬ほか)の効き目を弱めてしまいます。このハーブを使っているときは必ず医師や薬剤師にそのことを伝えておきましょう。

コエンザイムQ10×心臓病薬

コエンザイムQ10は「アンチエイジングサプリ」などと標榜され今でも販売されていますが、元々は「ユビデカレノン」という名前の強心薬です。今でも病院で薬として処方されているため、「半分は薬」と言っても差し支えないのではないでしょうか。サプリメント成分と薬成分を合計し、一日に30mg以上は摂取しない方が安全でしょう。本来は心臓の機能を強める薬ですから、他の循環器系薬剤を常用している人は注意したほうがよいですね。

薬用ニンジン×睡眠誘導薬・抗血栓薬など

薬用ニンジンは昔から滋養強壮剤として有名です。脳神経系の興奮作用があると言われているため、睡眠誘導薬や抗不安薬との組み合わせはよろしくないですね。中枢神経刺激作用のあるカフェイン(を含む薬や飲料)も避けましょう。抗血栓作用もあるので抗血栓薬と一緒に飲むと効きすぎるかもしれません。他にも、薬用ニンジンには血糖値を下げる作用もあると言われていますから、糖尿病の薬との併用に気をつけましょう。

食物繊維入りトクホ×すべての薬

薬の吸収が遅れて薬の効き目が出にくくなることがあります。

このほかにも、イチョウ葉エキスやグルコサミン、にんにく・しょうがエキス、ナイアシン、葉酸などは薬との併用時には注意が必要となってきます。さらに詳しく知りたい人は薬剤師さんに遠慮なく尋ねてみましょう。

※写真と本文は関係ありません

参考サイト

一般社団法人日本健康食品・サプリメント情報センター

筆者プロフィール: フリードリヒ2世

薬剤師。京都薬科大学薬学部生物薬学科卒。徳島大学大学院薬学研究科博士後期課程単位取得退学。洋画と海外ミステリーを愛す。Facebookアカウントは「Genshint」。主な著書・訳書に『共著 実務文書で学ぶ薬学英語 (医学英語シリーズ)』(アルク)、『監訳 21世紀の薬剤師―エビデンスに基づく薬学(EBP)入門 Phil Wiffen著』(じほう)がある。