音楽の街であり、きらびやかな貴族文化を今に残すウィーン。そんな素敵な街と日本を結ぶ唯一のエアラインがオーストリア航空だ。シェフがフライトに同行する「フライング・シェフ」、そして10種類のコーヒーメニューをサーブすることでビジネスクラスが有名だが、実はエコノミークラスだってなかなかのものである。
まず試したのはオーストリアビール。ワインで有名なオーストリアだが、実はビールもけっこう飲まれている。とはいえ、日本の専門店でもオーストリアビールはなかなかお目にかかれないのではないだろうか。珍しさというだけでなく、とにかく往路の旅気分を盛り上げるには地物のビールが一番だ。
……と盛り上がったところで食事が運ばれてくる。2種類のうちポークをチョイス。三角形のトレーに台形と三角形の器が収まっており、なんともおしゃれだ。メニューはポークのグリルにいんげんとベーコンのソテー、そしてポテトグラタンである。洋食メニューではあるがそばがついており、アントレ(前菜)はついていない。デザートはオーストリアの代表的なお菓子メーカー「マンナー」のヘーゼルナッツウエハースというシンプルぶり。女性にはちょうどいいかもしれないが、男性にはちょっと物足りないかもしれない。隣の席の欧米人男性はパンを何度もお代わりしていたし。
とにかくパンがおいしい
しかしこのパン、非常においしいのだ。数種類から選べ、どれもちゃんと温められて出てくる。小さなプチバゲットをいただいたが、外側はカリカリで香ばしくて食欲をそそり、内側はふっくらしていながらなかなかしっかり詰まっている感があり、もう1つ、またひとつ、と手を伸ばす気持ちはわかる。隣の男性、とうとうバターが足りなくなり、筆者の残したバターを「もう食べないならもらっていい? 」と聞いてきた。それほどまでにおいしいのである。
メインのポークはしっかりと火が通っているためナイフを入れると固く感じたが、ソースなのか、それともグラタンから溶け出たチーズなのか、とにかくしゃぶしゃぶ状態に汁が入っており、なんだかこう書くと「おいしくないの? 」と思われるかもしれないが、そこに浸して食べるとこれまた固さを感じさせず美味だった。ポテトやいんげんなどの付け合わせも同じ味になってしまうものの、乾燥した機内ではこのしゃぶしゃぶ感が実はありがたい。
帰国便では残念ながら洋食は売り切れとのことで、和食が運ばれてきた。サラダ、白身魚のフライのあんかけ、付け合わせの野菜。相変わらずシンプルである。ごはんもいい炊き上がり。魚はぷりりと揚がっており、サクサク感はないもののほんのりと酸味のある餡にからめていただいても、ちょっと塩をふって天ぷら風にいただいてもなかなかおいしい。魚料理は難しいというが、揚げ物なら時間が経ってもおいしくいただけるのだなと感心した。デザートはコーヒー風味のムース風。香り豊かでまろやか、甘味もくどくないところがいい。
食事がおいしいことで知られるオーストリアだけに、そのフラッグキャリアもレベルが高い。今回は残念ながらチョイスがなかったが、前回は帰国便で皇帝フランツ・ヨーゼフも愛したというウィーン伝統料理「ターフェルシュピッツ」をいただいた。品数が少ないとはいえ、1つひとつの料理に手をかけており、エコノミークラスにもかなり気合が入っていることは間違いない。