鉄ちゃん用語は、鉄道会社の方々が使う業界用語から、特定の地域やグループ内のみで通用する言葉、ちょっと過激な隠語まで実に様々。こういった用語は、鉄ちゃん活動をするうちになんとなく覚えていくもので、他の鉄ちゃんにはなかなか質問しづらいものです。多くの用語の中から、これから鉄ちゃん仲間をつくりたい人の為にさわりだけご紹介します(鉄道名や駅名などの設定は架空です)。
鉄ちゃん仲間が欲しくなってきたテツヤくんは、また"お立ち台"の御目出塔駅大俯瞰にやってきました。「列車の形式も覚えたし、会話に入れるかな!? 」と積極的な気持ちで鉄ちゃんたちの間に三脚を据え、列車の通過を待ちました。しかし、時間になっても列車が来ません。
「開(あ)いたか? 」
「開(あ)きません」
「バカ停(てい)? 」
「バカ停はない、ウヤか? 」
「ウヤ勘弁してくださいよ、自分マルヨだったのにー」
……。またもや鉄ちゃんたちの間で、テツヤくんにとっては意味不明な会話が繰り広げられています。友達をつくりたいテツヤくんは、思い切って隣の鉄ちゃんに質問してみましたが、無視されてしまいました。しかしこれは仕方ありません、撮影に集中したいときに話しかけられても答えてはいられませんよね。
先ほどの会話を普通の言葉に直すと、以下の通りです。
「信号は青になったか? 」
「青になっていません」
「駅での長時間停車があるのでしょうか? 」
「駅での長時間停車はありません、運休でしょうか? 」
「運休は勘弁してくださいよ、自分は撮影のために宿泊したんですよー」
といったところです。鉄ちゃん用語は、前回の「系」と同じように、情報を手短に伝えるためにあると言えます。このような言葉を使って話せるようになる必要はありませんが、リスニングはできた方がいいですね。他にも覚えておきたい代表的な鉄ちゃん用語を以下にまとめておきます。
- カマ=機関車
- お立ち台=有名鉄道撮影地
- 激(げき)パ=お立ち台が鉄ちゃんで非常に混雑していてパニックのような状態
- バリ順(じゅん)=申し分のない順光
- 記録=撮影、録画、録音などの行為
- 鉄ちゃんバー=プレート(1つの三脚にカメラを2台装着するための板)
- キャク=三脚
- アシ=脚立
さらには、「ケツ打ち(列車のバックショットを撮影すること)」などのお下品系(!?)や過激な言葉を取り入れた用語もあります。
しばらくすると、鉄ちゃんの1人が携帯電話で話しながら、「コロハチ」「コロナナ」などと言い始めました。他の鉄ちゃんは、緊張感を持って聞き耳を立てています。「これは時刻のことを言っているのかな」と勘が働いたテツヤくん。大正解でした。●時07分頃に、遅れていた列車がやってきました。
数字やアルファベットの特別な読み方をするのは、聞き間違いをなくすためのもので、時刻や列車の形式番号を呼ぶのに使われます。こちらに関してはリスニングはもちろん、話せるようにもなっておくと重宝します。
「0=コロ」「8=パー」「10=トウ」の他、特定のアルファベットと数字の並びに特別な読みが付く場合もあります。おなじみのSLの「D51=デゴイチ」「C57=シゴナナ」などがそうですね。その他に「485系電車=ヨンパーゴ」「583系電車=ゴッパーサン」「EF58形電気機関車=ゴハチ」「EF81形電気機関車=パーイチ」「DD51形ディーゼル機関車=デデゴーイン」「DE10形ディーゼル機関車=デート」「キハ58・28の2両編成=ゴッパーニッパー」などがあります。特別な呼び方が付くということは、重要な車両であるといえます。鉄ちゃん風の呼び方とともに、その姿も覚えておくといいでしょう。ただし、鉄ちゃん用語には地域差や、使う人たちの年齢によっても違いがあります。自分の活動する範囲で有効かどうかを確認のうえ、使ってみてくださいね。
ちょっと遅れて来た列車をうまく撮影できたテツヤくん。ほっとして隣の鉄ちゃんと目が合ったとき、自然に「お疲れ様」と声がかけられ、そこから少し会話もできました。マニアックな知識より明るいあいさつ。これが鉄ちゃん仲間をつくる1番のコツかもしれません。
ミニ情報
「EF65 501=P(ピー)トップ」
EF65といえば、紺地にクリーム色のラインが入った電気機関車。東海道、山陽本線を走る多くのブルートレインを引いた他、貨物列車の牽引もします。同じ形式でも、貨物を牽引するものはF(freight)、客車を牽引するものはP(passenger)と区別され、仕様が違います。このうち、旅客用(P)のトップナンバーである501号機は「Pトップ」と呼ばれ、多くのEF65が引退した今もまだ現役です。501号機の登場は、約30年前のブルートレイン黄金期の始まりを告げるものでしたから、鉄ちゃんから特に愛されているのです。