育児休業後復帰予定の職場から退職を促されたとき……あなたならどうしますか? いきなりショッキングな質問ですが、想像ではなく実際に筆者が体験した話です。自分自身が育休切りにあうとは想像したこともなく、突然のことにどうすればよいのかとても戸惑いました。筆者はこのときにどう考えどう行動したのかご紹介します。

  • 育休中に突如、会社から退職を促されたらどうすべき?

正社員として勤めた会社で第一子の育児休業明け間近、春からの保育園入園決定の案内が届き、職場復帰のスケジュールについての確認で電話連絡をしたときに育休切りを言い渡されました。

  • 会社担当者から言い渡されたこと

会社の事業状態が良くないことはうすうす感じていました。しかし、電話で突然退職を促され、何と返答してよいかわからなかったため、しばらく時間をもらうことにしました。

育休切りを何とか回避するために調べたこと

戸惑いつつも何かできることはないかとインターネットで調べ、関係各所へ問い合わせをする毎日が始まりました。そこで確認できたことは次の通りでした。

(1)まずは労働局へ相談

まず考えたのは「育児休業明けの解雇宣告は違法に当たるのではないか?」ということでした。不当な解雇だとしたら、どう会社と話し合いを進めたらよいのか、相談先である都道府県労働局雇用環境均等部(室)に電話相談をしました。どのような経緯で、どのように退職を促されたのか詳しく聞かれました。

  • 労働局からのアドバイス

労働局へ相談してみて、「育児休業明けというタイミングでの解雇は不当」という回答を得ました。とはいえ、会社の事業状態が要因で仕事自体がないのが事実なら、雇用の整理はやむをえない状況もあるとのことでした。そのため、筆者の希望する休暇前と同じフルタイム勤務はもちろん、多少労働条件を妥協しても復帰は難しいのではないかと考え始めました。

(2)会社に退職金の代わりを請求してみた

退職金のない給与体系で働いていた筆者ですが、育児休業後の退職要請で不当解雇であり今後の生活に支障をきたすため、退職に納得する代わりに特別に退職金は支払ってもらえないのか聞いてみました。それでも、会社の事業状態によるものでやむをえないため、このような退職金は用意できず、退職日の相談をするので何とか了承してほしいと言われました。

改めて調べたところ、会社は正当な理由がない限り従業員を解雇できませんし、従業員を解雇しようとする場合には少なくとも30日前にその予告をしなければならないということがわかりました。30日前に予告をしない場合は、平均賃金の30日分以上を解雇予告手当として支払わなければならないことも後で知りました。

(3)育児休業給付金の受給可能期間を調べた

育児休業給付金を受給中でしたので、もしこのまま退職することとなった場合にいつまで受給可能なのか調べてみました。その結果、退職日が育児休業最終日以降だと満額受給できることがわかりました。ただし、退職が決まったタイミングによっては育児休業給付金の受給終了日が早まることがあります。筆者の場合は、何とか職場復帰はできないかと話し合いが長引いた末やむをえず退職が決まったため、当初予定の育児休業最終日以降の退職となりました。

「自己都合による退職」として届いた離職票

話し合いの末退職を決めた筆者、手元に届いた離職票には「自己都合による退職」との記載がありました。最終的に受け入れたものの、仕方なく退職に至ったのは言うまでもありません。退職済みの職場に連絡するのは億劫だったため、退職理由についてハローワークに相談することにしました。

(1)ハローワークで離職理由変更申立てを経験

ハローワークへ行った際、これまでの経緯を説明、復帰希望であるにも関わらず退職を受け入れざるをえなかった旨を伝えました。事業主と離職者で主張が異なる場合はハローワークが事実関係を調査し、離職理由を判定するとのことでした。調査について、筆者は関わることなく、ハローワークと会社とのやり取りで済みました。しばらくして、離職理由は筆者の申し出の通り、解雇と判定されました。

(2)予定より早く多く受給できた失業給付

離職理由を解雇と判定された筆者は「特定受給資格者」(倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者)に該当となりました。筆者の場合、離職理由が自己都合による退職の場合と解雇により特定受給資格者として扱われるのとでは、雇用保険からの支給される基本手当(いわゆる通常の失業給付)の受給スケジュールや受給日数が下図のように変わりました。

  • 厚生労働省HP内雇用保険制度Q&A内Q6受給手続きの流れより(執筆者作成)

自己都合で退職した場合には、受給手続日から7日経過した日の翌日から、さらに3カ月間受給できない「給付制限期間」がありますが、この給付制限期間なく受給開始となりました。さらに、退職時30歳未満、雇用保険加入期間が前職から通算して7年だったので、受給期間が自己都合なら90日のところ、120日と長くなりました。

結果として基本手当を予定より早く多く受給できたので離職理由変更申立てをしてよかったです。

一連の経験を振り返ってみて

育休切りを言い渡されて筆者なりにできることを調べて行動しましたが、改めて振り返ってみて思い返すことをまとめます。

  • 行動してよかったこと・こうすればよかったと思い返すこと

育休切りからやむをえず退職した筆者は、基本手当を受給しながら転職活動を行い、金融機関に勤めることになりました。それがきっかけとなって今こうしてファイナンシャルプランナーとしての活動につながっています。

あってはならない育休切りですが、筆者の経験が同じような状況の方のお役に立てればと思います。

イラスト=オオノマサフミ