栄えてる商店街から、廃れている商店街へ!?
2年ほど前から、ダビ君はきょうちゃんとともに瀬戸を歩いたり、「ゲストハウスますきち」にも訪れたり、瀬戸に現れるようになる。そのなかで、この街はいいなと思ったという。
「いろんな人に、なんで大須の栄えてる商店街から、廃れている商店街へ? って、めちゃくちゃ聞かれました(笑)。でも、商店街を歩いてみて、シャッターは閉まってるんだけど、人は死んでない街だなと思ったんです。もともとやきものの産地で、カルチャーのあるまち。クリエイティブなものに、寛容な人たちが多い。知らない人が来ても、瀬戸の人は興味を持って、普通に話しかけてくる。これって、これからの時代にすごく必要なスキルだと思うんですね。間違いなく」
それに加えて、土地代の安さ、名古屋の繁華街・栄まで電車に乗って、1本で不便しない。ファミリーが、相当増えそうだと感じたという。
「これから盛り上がっていく可能性を感じています。僕は今すぐ儲けたいわけじゃないので、今後がおもしろそうなところがいいなと。正直、都市部でやったら、絶対に儲ける自信はあるんです。でも、そんなのは、30歳でも40歳でもできる話。都市部で挑戦するより、ローカルで挑戦したほうがおもしろいやん! という思いが勝っちゃいました」
瀬戸で暮らす若者のコミュニティをつくりたい
大須店では、20代前半から後半の若いお客さんたちが中心だった。若手美容師、アパレル、ファッション業界など、カルチャーをつくる人たちが多く、そのなかには瀬戸に住む若者も含まれていた。
「オープン初日にも、大須に来てくれていた、おしゃれな瀬戸の3人組の子たちが来てくれて、『なんで、瀬戸なんですか!?』って、その時もめちゃくちゃ言われて。でも、喜んでくれていましたね」
瀬戸で暮らす多くの若者にとって、遊ぶ場所といえば、名古屋。けれど、ダビ君はカッコイイお店が、瀬戸にあればいいな、と思っている若い層は絶対いて、つかみきれていないだけだと語る。
「瀬戸って、いい街なんだ、と彼らが気づけば、彼らが何かはじめてくれる。彼らが『自分はこれがやりたい』を見つけて、商店街とかで商売をはじめたら、おもしろいですよね。ライダーズカフェは、もともと若い人が希望を持てる場所、夢を叶えるコミュニティである、ということを大事にしてきたんですよ。それで、自転車屋なんだけど、夢が叶えられる場になればと“カフェ”がつく。
でも、僕は本当の意味でのライダーズカフェをつくりたいなと思っていて、今回、飲食スペースもつくったんです。若い層のコミュニティをつくれたらいいな」
「家族を大事にしないなら、働く意味はない」
ダビ君は、現在、26歳にして1歳と2歳半の2児のパパ。家族と過ごす時間を何よりも大事にしている。
「単純に働く意味を考えた時、人を純粋に喜ばせたいとかあると思うんですけど、まずは自分たちが幸せにならないと意味がない。家族を大事にしなかったら、仕事をしている意味がないと思っています」
そうキッパリ語る。「ライダーズカフェ瀬戸店」は営業時間も端的に短く、営業時間は14時~19時のみ。定休日は毎週2日間。
「コロナになって、予約制をスタンダードに変えたんです。でも、売り上げが変わらなかった。ずっと開けっ放しの営業だと、一気にお客さんが来ちゃうと、対応が薄っぺらくなっちゃうけど、予約制であれば、マンツーマンでしっかり話せるからかもしれないですね」
ダビ君が、なぜ独立精神旺盛に働くのか? そこには、お母さんの存在がある。
「僕は母親がフィリピン人で、父親が日本人。母親に女手ひとつで育ててもらったので、早い段階で親孝行したい。それは親になってすごく思う。前は親孝行の形として、老後も安心できる家をプレゼントするのがいいのかなと思ったりして、稼ごうと思っていたんだけど、最近はなんかそうじゃないなって感じ始めていて。
もともと母親は化粧品の訪問販売をしていて、全盛期は2,000万近くひとりで売り上げていていたんです。けど、今は子育てもひと段落、仕事も普通のパートに。今、燃え尽き症候群みたいな感じなんです。だから、一緒に事業をやって、そのお金で家を買ったりできたら理想だな。何かやりがいをつくってあげられたらいいですね」
家族が第一。僕たちの世代で、長時間労働をやめ、生産性を良くした働き方へと変えたいと語るダビ君。地域にいると、自分なりの考えを持った若い人たちが着実に増えているように感じる。