都市部の生き方は最適か?

  • 2020年2月に行われた、これからの生き方について考えるトーク&交流イベント「生き方見本市TOKAI」。司会を務める様子

    2020年2月に行われた、これからの生き方について考えるトーク&交流イベント「生き方見本市TOKAI」。司会を務める様子

長らく名古屋駅すぐという、超都心部で活動だった。しかし、ここ数年で、なぜローカルに目を向けるようになったのだろうか?

「都市部の生き方が最適ですか? ということは、めっちゃ考えていますね。名古屋でずっと活動してきましたが、都会は良くも悪くも、すごい人もいっぱいいるから、若い人たちは新しい挑戦がしにくい。

マサラタウン(※ポケットモンスターで最初の一歩を踏み出す町)には向いていないと思うんですよ。さびれている町のほうが、最適だったりする。ローカルだと、家賃や物価も安くて、週5とか週6で働かなくても、もっと自分らしい働き方ができますよね。

その可能性を社会に広げたい。僕ら自身も、新たに実践している最中で、全力でローカルで楽しむ。新しい生き方の発信は、会社を立ち上げた21歳の時から好きだったので、そういう提案はしていきたいなと思います!」

“大喜利”が楽しい街、瀬戸

  • 瀬戸市内の中心街にある、宮前地下街。地上にあるけど、地下街の謎。(c)濱津和貴

    瀬戸市内の中心街にある、宮前地下街。地上にあるけど、地下街の謎。(c)濱津和貴

実践の場のひとつに、瀬戸がある。訪れるようになったきっかけは、「ゲストハウスますきち」の南慎太郎くんだった。同世代の起業家が開くライティングスクールで出会い、瀬戸に遊びに来るようになり、町を好きになっていく。

「瀬戸の場合、マサラタウンからは、すでにレベルアップしてるんですが、町自体が大喜利している感じが好きですね。歴史ある神社の参道に、『宮前地下街』という商店街があって、待て待て~地下じゃないやないか! みたいなツッコミ待ちがあったりする。街がボケてるのがおもしろい。ツッコミスキルが試されて、突っ込む人によって、楽しみ度合いが変わるんですよ」

  • 先日出演したラジオ局のパーソナリティから、“起業家芸人”の呼び名を授かる

    先日出演したラジオ局のパーソナリティから、“起業家芸人”の呼び名を授かる

お題をもらい、ムムッと頭をひねり、おもしろおかしく回答する「大喜利」。それはきょうちゃんにとって、仕事の提案の姿勢にも近い、という。

「例えば、最近お仕事することが多い行政だったり、先日、相談を受けたテレビ局だったりには、常識や当たり前、それに通例だったりがあると思うんですが、僕にとってはフリ(常識。お題)なんですね。

それに対して、こんなことできますか!? とボケ続けていると、おもしろいからやろ~と通ったりするんですよ(笑)。

それに、相手からツッコミが入ったりする。突っ込むということは主体性を持って、物事を見てくれた瞬間だと思うので、僕たちは常に大喜利をしていてみんなにいかに突っ込んでもらえるか? に挑戦しているのかもしれません」

突然、瀬戸の物件を購入する

  • 「せと銀座通り商店街」の様子。シャッター商店街だったものの、ここ数年で借りる場所がなくなるほど、空きが減っている。(c)濱津和貴

    「せと銀座通り商店街」の様子。シャッター商店街だったものの、ここ数年で借りる場所がなくなるほど、空きが減っている。(c)濱津和貴

そんなある日、オーナーの南くんと「せと銀座通り商店街」を歩いていると、「瀬戸に物件があったら、借りたいんだよね~」と口にする。商店街内に、ちょうど格安で空き物件があったので、南くんが「売ってるらしいよ」と紹介すると、「おもしろいことが起こるかも」と即決で購入。

現在、その物件は友人のDAVID YUくんに貸され、「ライダーズカフェ瀬戸店」としてオープンとして、生まれ変わった。

  • 「ライダーズカフェ瀬戸店」オーナーのダビ君と。

    「ライダーズカフェ瀬戸店」オーナーのダビ君と

それは、冒頭で紹介した「さかさま不動産」のマッチングで、リアルにオープンした、初のお店となった。

「『さかさま不動産』では、どうして借りたいのか。その想いが可視化されることによって、信頼ができたり、価値が生まれて、経済が回っていくんじゃないかと思っています。不動産というものを新たな価値観で回していくには、どんな情報を、どう可視化していくのがベストなのか、探っている状態ですね。

『さかさま不動産』のずっと先には、僕がめざす “目の前の人間を一瞬で信頼できる社会”ができるんじゃないかなと思っています。目の前にいる人間が、信頼できるなと思って、ものをあげたりできる人のほうが、人は暮らしやすいと思うんです」

“目の前の人間を一瞬で信頼できる社会”とは何か?

  • 瀬戸に来る際にふらりと立ち寄る、ゲストハウスますきちにて

    瀬戸に来る際にふらりと立ち寄る、ゲストハウスますきちにて

もともと、信頼ベースで生きているというが、そのきっかけかも、というエピソードは大学生の頃に遡る。シェアハウスを始めるときに、水谷さんと一緒に物件を運営していた吉原旭人さんに、物件をどう探したらよいかと相談すると、「一緒に探すか!」と町を歩いてくれたのだという。

「そしたら、物件が1時間ぐらいで見つかりました(笑)。近所のおじいちゃんやおばあちゃんに、このへんで空き物件ないですか? と聞いたら、そのなかのひとりに『うちこい!』と呼ばれて、一緒にビール飲んだんです。そしたら、わかった、隣の物件紹介したるわって、マッチングしたんですよね。

その時に、この人はどこの馬の骨かもわからないような僕を信頼してくれたんだなーと思って。ふつうはそれが起きないんだけど、目の前の人を信頼する人が増えると、多くの人が幸せになれる。そんなふうに考えています」

きょうちゃんにとって、契約書は相手を信頼できない代名詞であり、「クソつまんない」こと。家や車に鍵をかけることも、ルールづくりもそう。

今、仕事になっていることは、人と人の関係性や「信頼」をベースに「間」をとりのぞく、サービスの実験のように見える。みなさんは、「目の前の人間を一瞬で信頼する社会」をどう思いますか?