「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

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  • 兄弟喧嘩を「コミュ力」を高める機会にするには?


長期休暇やコロナ禍でお出かけが難しくて家にいる時間が長いと、子ども同士の喧嘩も増えてきますよね。

今回は、「喧嘩する程仲がいいと思うことにして子ども同士に任せているんですけど、結局どっちかが泣いたりして、最後怒ってしまうんです。どうしたらいいのでしょうか?」というご相談に、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

喧嘩を成長の機会にしよう

最初は優しくなだめていても、どんどんヒートアップして、結局怒鳴ってしまい自己嫌悪に陥る……というお母さんお父さんからのご相談が増えています。

2020年はいろいろなことが普通じゃなくなり、大人も戸惑いや不安の中で変化に対応し、子どもたちも頑張っていてすごいなあと思う1年でした。

2021年は穏やかに過ごしたいと思う気持ちもわかりますが、兄弟姉妹で喧嘩することも、お母さんお父さんがどなってしまうことも、ストレス発散と捉えていいのではないでしょうか。

外で人と話したり関わったりしないことが推奨されているいま、家の中くらい、いっぱい関わり合えるってありがたいことだなあと思います。

そうはいっても、喧嘩に成長がないのももったいない気がしますね。外で上手に喧嘩できたり、将来上手に自分の意見や考えを伝えられたりできるようになるために、兄弟喧嘩を対話のコツを学ぶ場にしてしまいましょう。

喧嘩をやめさせるより、喧嘩の仕方を学ばせる

親としては、喧嘩をどのようにやめさせるのかを考えてしまうことが多いようですが、それでは子どもの主張する力や交渉する力、妥協点を見つける力などが育つ機会を奪ってしまうことになります。

だからといって、喧嘩を放任していてもこうした力はなかなか育ちにくいもの。手や足が出てしまったり、泣いたり、叫んだりする時期も必要かと思いますが、ぜひ「ことば」という武器をひとつずつ与えて、ことばで話し合いができるように努めましょう。

そのために親にできることは、「通訳」に徹することです。つい「お兄ちゃんなんだから優しくしたら」「もう、泣かないで。どうして泣いてるのか説明して」 などと尋問して裁判官になってしまってはいけません。

どっちが正しいのかやどうすべきかを決めたくなってしまいますが、それでは自分で考える力が育ちにくいですし、フェアではありません。なぜなら兄弟には年齢差があるからです。感情の伝え方にも差があります。ことばや体力差のある不公平感を「通訳」に徹して埋めてあげましょう。

例えば、ロボットのおもちゃの取り合いの場合
親「お兄ちゃんはロボットをどうしたいの?」
兄「絶対に触られたくない」
親「(弟に)お兄ちゃん、今はロボットを触られたくないんだって」
弟「ええ、やだあ!」
親「(兄に)ロボットを貸して欲しいんだって。どうする?」
兄「いやだ」
親「(弟に)お兄ちゃんは貸したくないんだって。他のおもちゃで遊ぶ?」

このように、通訳を繰り返します。うまく言えない気持ちを親がことばに置き換えていくことで、子どもも表現力が身につき、ことばで伝えられるようになっていきます。

親がどちらにも正解を強要せず、中立な立場で向き合ってくれることで、子どもは安心して、自分がすべきことを考えられるようになっていきます。

ここでは、お兄ちゃんが「お母さんは、いつも弟(妹)の味方をする」と思っているうちは、ロボットを貸さないと意固地になることもあるでしょう。しかし、通訳をとおして対話を繰り返すことで自分の気持ちに向き合えるようになり、「貸すor貸さない」「お兄ちゃんとしてどうすべきか」を考えられるようになっていきます。

両成敗ではなく、自分で考えて会話する力をつけてあげる

あきらかにお兄ちゃんが悪いとわかっている場合でも、通訳に徹してくださいね。なぜならその要因はお母さんが見ている範囲でのことかもしれないからです。もしかしたら、喧嘩が始まる前に弟が何かしたのかもしれず、それをお兄ちゃんが我慢している最中だったのかも。あるいはお兄ちゃんの中では、何か毎日思うことがあったのかもしれません。

どちらが正しいか悪いかを決める必要はありませんし、決められないと思います。長い人生、自分の考えややりたいことをどのように主張し、説明をしたら、わかってもらえるのかを考える練習に兄弟喧嘩が出来るといいですね。

親「(弟に)お兄ちゃんは貸したくないんだって。他のおもちゃで遊ぶ?」
弟「いやだ!」 親「そっか。ロボットはお兄ちゃんにとって大事なんだよ。そおっとだったら?」 兄「そおっと触るだけならいい」 弟「そっと触る」 親「おお、お兄ちゃん。いいの? すごいね!」 兄「うん! いっしょに遊ぼ」

子どもは、親が自分に関心を持ってくれれば、案外それだけでケロッとするものです。この例のように、お兄ちゃんはロボットがとても大切なものだとお母さんにわかってもらえたことで、弟の気持ちにも気づくことができるかもしれません。

とはいえ「こんなに丁寧に接する余裕がない」という方も多いかもしれませんが、喧嘩のたびにずっと怒ってやめさせ続けても成長はありません。目標は、子ども同士で喧嘩を解決できるように育てることです。遠回りに見えますが、きっと早道になります。

この先理不尽なことや思い通りにならないことに出会ったときに、力を発揮できる子に育てていけるといいですね。