またまた、トヨタ自動車から新型SUVが登場した。今度は「カローラ」がベースの「カローラクロス」というクルマだ。こんなにSUVの選択肢が増えると、かえって各車の立ち位置が微妙になるのでは…などと思いながらカローラクロスに乗ってみると、これはこれでいいクルマなのだからトヨタには驚かされる。

  • トヨタの新車「カローラクロス」

    トヨタは2021年9月14日、新車「カローラクロス」を日本で発売した

トヨタのSUVラインアップ、さらに充実

「カローラクロス」は12代目カローラのファミリーとしてトヨタが開発したグローバルカー。2020年にタイで発表し、このタイミングで日本に導入した。なぜ日本発売がタイより遅いのかトヨタに聞いてみると、市場投入の時期は「各地の車種ラインアップをかんがみて」決めているとのことだった。

日本での受注台数は、10月5日時点で約3万台に達しているとのこと。月間販売目標が4,400台だから、かなり好調だ。購入者の世代は幅広く、20代~60代の顧客に「均一に」選ばれているという。SUVやミニバンから乗り換える人が多いそうだ。「カローラ」といえば「顧客層の若返り」が急務のクルマだと思っていたのだが、SUVの登場で若年層の掘り起こしが進むかもしれない。

  • トヨタの「カローラクロス」

    「カローラクロス」にはガソリン車とハイブリッド車がある。ガソリン車(2WDのみ)のグレードは安い順に「X」「G」「S」「Z」で価格は199.9万円~264万円。ハイブリッド(2WDと4WD=E-Four)は「G」「S」「Z」で259万円~319.9万円だ。サブスクリプションの「KINTO」なら、ハイブリッド「S」の2WDが月額2.739万円からで使えるとのこと

海外仕様と日本仕様では違うところがある。大きな違いはデザイン、とりわけ顔つきだ。

  • トヨタの「カローラクロス」
  • トヨタの「カローラクロス」
  • 左が「カローラクロス」の日本仕様、右が海外仕様だ

なぜ海外と日本でデザインを変えたのか。トヨタによれば「タイや中南米などではタフでラギッドなSUVが求められているので、力強さを押し出したデザインを採用した一方、日本においては都会的な上質さ、洗練されたSUVが求められるので、少しフォーマルなイメージが持てるデザインに変更した」とのことだ。

ほかに日本仕様だけの特徴としては、オプションで大型のパノラマルーフが付けられることや、ハイブリッドで4WDの「E-Four」が選べることなどがある。

  • トヨタの「カローラクロス」

    新型「カローラクロス」の後ろ姿はかなりシンプル

ハイブリッドの走りは爽快!

試乗したのはハイブリッド「S」の2WD。車両本体価格275万円に「パノラマルーフ」など全部で36万円強のオプションが付いて、計311万円強というクルマだった。

■試乗した「カローラクロス」(Sグレード、ハイブリッド、2WD)の概要
・ボディサイズ:全長4,490mm、全幅1,825mm、全高1,620mm、ホイールベース2,640mm、最低地上高160mm
・エンジン:直列4気筒、排気量1,797cc、最高出力98PS、最大トルク142nm
・モーター:フロントは72PS、163Nm、リアは7.2PS、55Nm
・車両重量:1,380kg
・燃費:26.2km/l(WLTCモード)

実物を見ると、意外に大きくて立派なクルマだ。横幅が1,825mmだから、そう感じるのかもしれない。日本で売っているクルマは、1,800mm以内に収まっていることが多いからだ。なので当然、走ってみても横幅の広さを多少は意識してしまう。車内が広々としているので気分はいい。

ハイブリッド車の走りは、なるべく電気で走ろうとしてくれているような気がするほど、モーター走行の領域が広いと感じた。特に走り出しは静かでスイスイと進み、その状態が走り出してからも長く続いた。立派な見た目のSUVなのに、走り出しに重苦しさを感じないので爽快だ。乗り心地としては、なんとなく柔らかいような感じがする。後席に乗っているときは、大きめの段差で少しぐらっときた。

車内の雰囲気としては何も不足を感じない代わりに、特に目立つようなものも少なかった。気に入ったのは、オプション装備の大きなパノラマルーフ(電動サンシェード&挟み込み防止機能付、11万円)だ。かなり後ろまで開くので、後席に乗っているときの開放感は開けると段違いになる。試乗中は昼も夜も開けっ放しで楽しんだ。

  • トヨタの「カローラクロス」

    後ろまで開く大きなパノラマルーフは嬉しいオプション装備だ

試乗では都内の一般道と首都高を走ったが、横幅にもすぐに慣れたし、電動感のある走り出しも気分がよくて文句なしだった。純正ナビは付いていなかったが、iPhoneをつなげば「apple carplay」がすぐに起動するので、標準装備のディスプレイオーディオでナビを見ながらドライブできた。「radiko」でラジオを聞いたり音楽をかけてみたりもしたが、音質は普通で不満はない。車内が静かだから、よく聞こえた。

  • トヨタの「カローラクロス」
  • トヨタの「カローラクロス」
  • トヨタの「カローラクロス」
  • 車内はとてもシンプルな印象だが、変にギラギラしていたり奇をてらっていたりすれば、それはそれで「カローラ」のキャラに合わないだろう

トヨタのSUVラインアップは選択肢が豊富だが、キャラで分けると大体、都会派の「ハリアー」「ヤリスクロス」、タフなキャラクターの「ランドクルーザー」「RAV4」「ライズ」、個性派の「C-HR」といった感じになる。新たに加わったカローラクロスは都会派のタフガイ、といった感じだろうか。

小型車「ヤリス」をベースとするヤリスクロスに比べると、カローラクロスは大きい分、広さや積載性などが魅力となる。C-HRに比べれば見た目がオーソドックスなので、デザイン的な守備範囲は広そうだ。サイズ、キャラ、価格を幅広く、かつまんべんなく取りそろえるトヨタの全方位型SUVラインアップにおいて、カローラクロスはうまく間隙を縫う(あるいは隙間を埋める)存在となっているように見える。

最近、自動車の納期はコロナと半導体不足の影響で長くなりがちだが、カローラクロスについては、グレード・仕様により異なるものの大体2~3カ月で届くとのことだ。