連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
地方出身で現在都内で一人暮らしをしている大学2年生です。生活費は奨学金とバイト代で賄い、学費と通信費は親に払ってもらっています。毎月の収入と支出がほぼ一致しており、現在貯蓄がありません。今は欲しいものもある程度は我慢し、海外旅行も夢のまた夢です。大学生とはいえ、今後のためにも貯蓄ゼロはいささか不安。収支をどう調整して、いくらぐらい貯蓄すればいいものなのか、アドバイスお願いします。
【プロからの回答です】
毎月の収入の中で、余ったものを貯金に回すという方法ではいつまでたってもお金を貯めることはできません。まず収入の中から「先取り」でご自身が決めた金額を別の口座や財布に分けます。木村さんの場合は、主に食費4万5000円の中での調整となるので、先取りする金額を1万円とすると残りの3万5000円でやりくりをすることになります。ちょっときついかもしれませんが、できるだけ自宅で食事をとるようにすれば、食費はある程度抑えられると思います。
「目的貯金」を実践する中で、お金を貯める方法は少しずつ身についてくると思いますが、実際に将来のための貯蓄を始められるのは社会人になってからになります。まずは1万円でも2万円でもいいので、できる範囲でコツコツと貯めるようにしましょう。もしもっと貯蓄をしたいと思うなら、大きな出費となっている家賃をもう少し下げるという方法もあります。
(※詳細は以下をご覧ください)
貯蓄はしたいがなかなか難しいのが現状
最近の各種調査によると、多くの大学生や20代の若者が将来に不安を感じ、老後のために貯蓄をしたいと考えているようです。しかし、ある調査によると2012年で20代単身の4割が貯蓄ゼロとなっています(出典 : 「家計の金融行動に関する世論調査(平成24年)」知るぽると(金融広報中央委員会))。
現在の家計の収支は…
「収支をどう調整して、いくらぐらい貯蓄すればよいか」とのご相談ですが、まずは現在の収支を見てみましょう。
木村さんの月の収入は、バイト代と奨学金を合わせて14万5000円、ご両親に払ってもらっている学費と通信費以外の月の支出は、住居費、食費、光熱費、レジャー費、その他で約14万3000円なので、月々の収支はほぼ一致していますね。
ただ収入については、月に9万5000円の奨学金は確実に入るものの、バイト代は今後、就職活動や卒業論文などで、現在と同じ金額を得るのが難しくなってくるかもしれません。
次に支出ですが、そのほとんどが住居費と食費ですね。住居費は減らすのが難しいと思いますので、調整できるのは食費4万5000円の部分になります。
まずは目標を持って貯蓄を始めてみよう
では、いくらぐらい貯蓄をすればいいでしょう。ここで一つの考え方をご紹介したいと思います。
木村さんは現在大学2年生なので、今年の12月からは就職活動が始まりますね。就職情報会社ディスコの調査によると、2013年3月卒の大学4年生や大学院生が就職活動にかけた費用は平均で約15万円だったそうです。結構お金がかかりますね。
内訳としては、交通費約7万1400円、スーツ代約3万9500円、かばんなどの備品約1万1300円となっています。
木村さんがご自身でこの費用を準備する場合は、12月までの10カ月間に月々1万5000円ずつ貯める必要があります。なかなか高いハードルかもしれませんね。15万円はあくまで平均の費用なので、厳しそうなら月々1万円、目標10万円としてもかまいません。できそうな目標を設定してみて下さい。
まずこのような就職活動の費用を貯めるための「目的貯金」から始めてみてはいかがでしょうか。
「先取り」で貯蓄を!
では、どのように貯蓄をしていけばよいのでしょう。毎月の収入の中で、余ったものを貯金に回すという方法ではいつまでたってもお金を貯めることはできません。まず収入の中から「先取り」でご自身が決めた金額を別の口座や財布に分けます。
木村さんの場合は、主に食費4万5000円の中での調整となるので、先取りする金額を1万円とすると残りの3万5000円(先取りの金額を1万5000円とした場合は3万円)でやりくりをすることになります。ちょっときついかもしれませんが、できるだけ自宅で食事をとるようにすれば食費はある程度抑えられると思います。節約できた分で時には外食したり、遊びに行ったりするのもよいでしょう。大切なのは、メリハリをつけてお金を使うということです。
こうして目的をもって貯蓄をするという習慣が身につけば、木村さんが夢のまた夢と感じている「海外旅行」も実現可能になっていくと思います。
本格的に貯蓄を始められるのは社会人になってから
「目的貯金」を実践する中で、お金を貯める方法は少しずつ身についてくると思いますが、実際に将来のための貯蓄を始められるのは社会人になってからになります。
では20代独身男性はいくら貯金をすればよいのでしょう。
厚生労働省の「平成23年度賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況」によると、平成23年度の初任給は以下の通りでした。
あくまでも平均ですが、初任給を20万円として考えてみましょう。実際の手取額は、ここから健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの保険料と、所得税の源泉徴収分が引かれて約17万円になります。
一般的に2割程度は貯蓄に回したほうがいいと言われていますが、木村さんの場合、奨学金の返済が毎月2万5000円あります。就職した会社に社宅や寮があればいいのですが、現在の住居のままだと難しいかもしれません。まずは1万円でも2万円でもいいので、できる範囲でコツコツと貯めるようにしましょう。
もしもっと貯蓄をしたいと思うなら、大きな出費となっている家賃をもう少し下げるという方法もあります。ただ家賃については、就職後に住む場所によって大きく違ってきますので、その時に改めて見直してみて下さい。
また木村さんは現在、奨学金で生活費をまかなっていますが、月9万5000円の支給なので、4年間で456万円を借り入れることになり、就職後に毎月2万5000円ずつ20年間で計600万円の返済をすることになります。奨学金には利息が付いているため、返済する金額の方がかなり多くなってしまうのです。利息分を節約するためにも、お金が貯まったら無理のない範囲で繰り上げ返済していくという選択肢も考えられます。
将来への不安を減らすだけでなく、夢をかなえるためにも貯蓄をしよう
まだ大学生の木村さんですが、早いうちから貯蓄の大切さを知りその方法を身につければ、将来の不安を減らすことができると思います。また具体的な目標をもつことで、さらに前向きな貯蓄が出来るようになるでしょう。まずは「目的貯金」から始めてみてください。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 白子里美
大学卒業後、大手総合商社に勤務。退職後、FP資格を取得。現在webにてコラムの執筆の他、教育費や生命保険、老後資金などに関するセミナーなども行っている。(株)プラチナ・コンシェルジュ所属