連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
現在、お腹に第二子がいます。出産予定は来年の4月です。今はつわりがひどく会社を休みがちです。もともと子どもが小さいうちは自分の手元で育てたいと思っていたので、第二子出産を機に会社を辞めて専業主婦になろうかと思っていますが、昨年家を買ったばかりなので、これからの収入減を考えるとこのタイミングで本当に私が会社を辞めてしまっていいのかどうか不安です。アドバイスお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • これまでずっと共働きで頑張ってこられ、3才のお子さんを保育園へ預けながら仕事と育児を両立するペースも軌道に乗ってきた頃ではないでしょうか。ただ、中村さんのように、2人目のお子さんをご出産ともなると、いったん家庭に入り子育てしたいと希望するママは少なくありません。世帯収入と支出の状況を踏まえ、家計が無理なく回っていくかどうかを具体的に確認してみることから、働き方や子育てについても考えていきましょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


家計のやりくり どこまで可能か?

片働き世帯になった場合に、現状から何をすれば安心して暮らしていけるでしょうか。収支の状況を改善するには、(1)収入を増やす (2)節約をする (3)お金を貯蓄・運用するという3つの方法により調整することができます。ただ、収入を増やすことは、雇用者側が決めることで、大方の会社では副業も認めていないケースが多いため、すぐに収入アップが見込めるかというと簡単ではないでしょう。また、今よりも年収の高い会社へ転職するということも現時点の経済環境では望みにくい状況です。

では、節約はどうでしょうか? 中村さんの場合、ご主人様の収入27万円で生計を立てていくことに。現状のままだと住居費と食費が家計に重くのしかかることになります。特に、住居費は収入に対して25%以内を目安として留めておきたいところですが、住居費として住宅ローン返済額が12万円のため、44%に及ぶことになります。また食費に関しては、収入に対して13%以内を目安とすると、共働きのときの6万円から3万5千円くらいに節約することができるでしょうか。

保育園代については、ひとみさんがお家で子育てに専念できるため、保育園へ預ける必要はなくなります。その一方で、保育料の45,000円の代わりに、幼稚園費用として公立の場合231,920円/年、私立は537,518円/年がかかり、私立の幼稚園に通う場合にはさほど変わらない計算になります。(文部科学省「子どもの学習費調査 平成22年」)

家族のお小遣いを収入の10%に抑え25,000円とし現状の約半分にすると、食費の節減と合わせて約5万円を節約することに成功します。それでも4万9千円の赤字になってしまい、節約には限界があることがわかります。これを仮に貯金を取り崩していくと3年5カ月で普通預金が底をついてしまうことに。

小さいお子さんを手元で育てることは母としても幸せなこと、お子さんにとっても安心であることは間違いありません。お金に換えることのできない貴重な時間でもあります。中村さんがその経験と時間を大事にしたいという気持ちを最優先するのであれば、上の子さんが就学し、下のお子さんが3年保育に通えるまでを目途に家庭に入ってもよいと思います。ただ、その数年間は家計的には貯金を取り崩すことも想定しなければならない厳しい状況とも言えます。

ライフプランの優先順位

昨年、マンションを購入され、35年ローンで、残り3,000万円のローンを、繰上げ返済をしながら期間短縮をする方向で計画している最中、収入減の道を一時的にでも選んでしまうのは躊躇されるところでしょう。現在、月間の収支残高が約10万円、ボーナス貯蓄100万円とボーナス収支残高が30万円あり、年間約250万円もの貯蓄が可能です。仮に150万円を10年以内に2年おきに5回に分けて繰上げ返済をした場合、期間を25年に短縮でき、尚且つ利息分として5,236,953円の負担を減らせることになります。(金利2.2% 35年固定金利で試算)

一度会社を退職してしまうと、働きたいタイミングで条件に合った仕事に出会えるとも限らないでしょう。そのため産休後の育児休暇を利用する、または、時間短縮勤務など利用できる制度があれば活用し、現状の雇用形態を継続された方が、将来へ不安を残すことは少ないと思われます。

世の中の変化にも対応

いよいよ消費税が来年4月に8%にアップし、その1年半後には10%に引き上げが予定されています。他にも社会保険料の引き上げなどがあり家計の負担は増える一方です。消費税が10%になれば、年間いくらの負担増になるでしょうか。現在の中村さんの家計で、消費支出(384,000円)に110分の10をかけて試算してみると、年間約19万円の負担になることが予想されます。片働き4人世帯で年収400万円から450万円の世帯で約10万円の負担増。さらに厚生年金保険料の引き上げがあり、税引き前の収入が変わらないとしても、生活に使えるお金に余裕がなくなるということが起こり得るとみられます。

そのような環境も踏まえて、貯蓄に、レジャーに、住宅ローンの繰上げ返済にも自由に使えるお金が増えて、生活にゆとりを保てるような収入源の確保は大事だと言えるでしょう。今一度じっくり検討してみてはいかがでしょうか。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 村松祐子

大学卒業後、大手証券会社に勤務。外国株式部、投資コンサルティング部、調査部を経て、資産運用コンサルタントからFPへ転身。子どもから大人へ投資と学習の普及を中心に、ライフ&マネープランの相談・執筆・セミナーなどで活動中。