連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。
【相談内容】
今、長男は4歳です。現在、学資保険ぐらいしか積み立てておらず、今後の教育費がいくらぐらいかかるのかあまり把握していないので、少し不安です。教育費準備はいつまでに、いくらぐらいを目標に、どのように貯めていったらいいでしょうか?
【プロからの回答です】
大学以上の教育には、子ども自身で学費を支払わせることも一考です。自立した人生を若いうちから実践することは本人のためにもなります。その時の強い味方となってくれるのが各種の奨学金制度です。最近は内容が非常に充実していますのでお子様が高校生になったら考えてみて下さい。
ただ、大学以上は自力で行くといっても現実になれば当面は親が立て替えたり、奨学金を借りたりして、就職してから返済をしていくことになります。そこで、まずはお子様1人につき1,000万円を教育資金として準備していただきたいと思います。
(※詳細は以下をご覧ください)
教育資金については、今後いくら準備しておけばいいのかと悩まれている方は、多くいらっしゃいます。教育費は、子どもが成長すればするほど多くなるという特徴を持つとともに、子どもの数が増えるほど負担は確実に重くります。また、生活関連費のように節約がしにくいため、収入が伸びないときほど早めの準備が必要です。
公立か私立かによって異なる教育費
文部科学省が発表した保護者が支出した学費総額(大学以外は学校教育費、学校給食費、学校外活動費を含み、大学は入学金、授業料、施設設備費等を含む)は、下記のようになります。
公立と私立を比較すると幼稚園では私立が公立の約2.3倍、小学校では約4.8倍、高校が約2.8倍、大学が約1.8倍となっています。大学においてはこの他に課外活動費や自宅外通学の場合の生活費等がかかってきます。子どもを公立か、私立に行かせるのかによってかなり費用が違ってくるのが現状です。学校選択には、様々な理由があり一概には言えませんが、費用、内容、通学、本人の希望などどこに重点をおくかということになるのではないでしょうか? 安部様の場合、お子様を公立か私立に行かせるのかまだ決めていないと思われますので、まずは高めに教育資金を見積もっておきましょう。
大学では奨学金を利用
一般的に幼稚園から大学までの教育費は、子ども1人について約1,000万円かかると言われています。また、その教育費の捻出方法としては、公立、私立で大きな違いはなく「生活費の切りつめ」によってという家庭が多いようです。
ただ、今後消費税アップ、復興増税の実施と収入が増えないのに支出だけが増えるという経済状況下、子どもの教育費にお金をかけてしまうと老後資金が心配になります。事実、今の50代の方には、貯金をすべて教育費と家のローンにつぎこんでしまって老後資金がゼロという方もめずらしくありません。
そこで、大学以上の教育には、子ども自身で学費を支払わせることも一考です。自立した人生を若いうちから実践することは本人のためにもなります。その時の強い味方となってくれるのが各種の奨学金制度です。最近は内容が非常に充実していますのでお子様が高校生になったら考えてみて下さい。
さて、大学以上は自力で行くといっても現実になれば当面は親が立て替えたり、奨学金を借りたりして、就職してから返済をしていくことになります。そこで、まずはお子様1人につき1,000万円を教育資金として準備していただきたいと思います。安部様は、まだお子様がお1人ですが、もう1人欲しいと思うのであれば2,000万円準備する必要があります。1,000万円を20年間で貯めるには、金利が1%であれば毎年約46万円、金利が2%であれば約42万円が必要になります。家計を見てみますと月々3万円を普通預金で貯金していますので、これを今すぐ積立商品にしましょう。これで学資保険の2万円と合わせて月々5万円、年間60万円貯金していることになりますので、長男の分は大丈夫でしょう。
問題はもう1人お子様ができた場合。確かにボーナスをあてるという方法もありますが、ボーナスは景気に左右されるため長期の目的のある貯金には向いていません。ボーナスは不意の支出や旅行などに活用すべきでしょう。また安部様の場合、1,000万円の証券がありますが、これは時価で評価されるため景気によっては500万円になるかもしれないというリスクがあります。そこで第2子が誕生されたらこの証券の半分を安全確実な金融商品に預け替えをして教育資金としてストックしておくという考え方もあります。
また、安部様の保険料ですが、収入に対してかなり高い割合で支払われています。特に順子様の場合、月々2万円以上です。そこで保険について見直しをして、貯金にまわしてみてはいかがでしょうか。お子様が1人であればそのまま老後資金になります。
会社員なら財形貯蓄で教育資金を貯める
教育資金の準備方法には、銀行・郵便局や一般財形貯蓄などの積立商品を利用する方法と、子ども保険や学資保険などの保険商品を利用する方法があります。財形貯蓄制度は、一般、住宅、年金と3種類あり、会社員などが勤務先を通して給与天引きで積み立て貯蓄をする仕組みで、一定の要件を満たした場合に非課税枠がある点や融資制度がある点が特徴です。
勤務先によっては、一般財形貯蓄を子どもの教育費にあてた場合、一定の財形活用給付金が支給されたり、財形教育融資が受けられます。この財形貯蓄は勤務先が金融機関と契約を結んでいないと利用できませんので、一度勤務先に問い合わせをするとよいでしょう。
教育資金は子どもの夢を叶える資金でもあり、できる限り希望を叶えてあげたいのが親心。しかし、そのために家計の支出を切りつめても限界があります。そこで今の貯金の仕方や保険を見直してきちんと教育資金を貯める計画を立てることからまずは始めて下さい。
<著者プロフィール>
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士 菅田芳恵
大学卒業後、証券会社・銀行・生保・コンサルティング会社に勤務。49歳から2年間で7つの資格を取得し独立。様々な資格を活かして多面的に話をすることが得意。資産運用、家計管理、ライフプラン、キャリア形成、年金、心の健康についてアドバイス、執筆、セミナー講師として活躍中。