寝苦しい夜が続く今日この頃。真夏の暑さを吹き飛ばすべく、3人のお笑い芸人に奇妙な体験について語っていただきました。涼しさとともにほかのなにかがやってこないよう、ご注意ください……
今回の語り手は、お笑いコンビ「井下好井(いのしたよしい)」の好井まさお。とあるホテルで遭遇した、偶然とは思えない奇妙な体験です。
『隣の部屋から……』
仕事で埼玉のとあるホテルに宿泊したときの話です。
そのホテルのフロントスタッフの1人が僕のことを知ってくれていて、チェックインのときにけっこう仲良くなったんです。
僕は喫煙者なんですが、予約している部屋が禁煙の部屋だとわかって、「喫煙の部屋空いてないかな……」と聞いてみたんです。
すると、彼は「空いてないこともないんですが……」と言いながら、なにやら迷っています。
聞くと、ある事情でしばらく使えない部屋(仮に102号室)があって、そういう場合その両隣の部屋(101号室と103号室)も空けておかないといけない決まりになっているんだそう。それでもよければ、特別にその両隣のどちらかの部屋になら泊まることができる、ということでした。
隣の部屋なら、と僕はその部屋に泊まることにしたんです。
その彼に案内されて部屋に行くと、問題の部屋の前に、腰くらいの高さまである見たことがないくらい大きな盛り塩が。
「ゴリゴリやん……」と彼と話しながら、その隣の部屋に入りました。
案内してくれた彼はフロントに戻り、僕は荷物を置いてタバコを吸い始めました。するとすぐ、誰もいないはずの隣の例の部屋から、机を手でたたくような音がしてきたんです。
バンバンバンバン
というその音は、だんだんと大きく、速くなっていきます。
いよいよ怖くなってきた僕はフロントの彼に電話し、「だから言ったじゃないですか!」と言われながらも部屋を変えてもらいました。
次の部屋は禁煙なので、怖いしタバコも吸いたい僕は、近くに住んでいる芸人仲間に連絡して、外に飲みに行くことにしました。
スマホにお店の地図が送られてきたんですが、住所が新しいのか、なかなか上手く場所が表示されません。なんとか試行錯誤しているうちに、ふとピン(目的地)が立ったんです。
土地勘もないのでそれをもとに歩いていたんですが、ふと気が付くと、どんどん繁華街から離れていっていました。
人気もなく、なんだかおかしいな……と思いながらも、目的地はもう角を曲がってすぐ
僕はゆっくりと角を曲がりました。
するとそこには、規制線が張られた丸焦げのビルが建っていたんです。
明らかにおかしいと思い、さっきの芸人仲間に電話すると、指定されたお店はまったく違う場所。わざと違う場所を教えたというわけでもなさそうでした。
次の日、チェックアウトのときに、あのフロントの彼にその話をしたんです。
すると、彼は言いました。
「そのビルの火事で亡くなった方の1人が、例の使用禁止の部屋に泊まっていたんですよ……。だからあの部屋は供養が済むまで使用禁止になっているんです」
あの物音といい、丸焦げのビルに立ったピンといい、未だに偶然とは思えない出来事です……。
井下好井・好井まさお
お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。大阪府出身。2007年相方の井下昌城とお笑いコンビ・井下好井を結成。フジテレビ『人志松本のゾッとする話』にも数回出演。Netflixのオリジナルドラマ『火花』など俳優としても活躍している。