データを分析し、いろいろなデータを組み合わせることで価値を見出し、売り上げが出せるような形に整える。会社で初めてとなるプロジェクトを立ち上げる過程で、中村さんは焦燥を感じるようになる。

「データを扱う中で、いろいろな人に会ったり情報収集したりしていると、かなりのスピードで成長している企業がたくさんあったんです。そういう環境がうらやましくなった、というのは正直なところ。僕はプロジェクトの立ち上げからやりましたが、1人ではスピード感にも限界がある。それで、自分が作ったデータで初めて売り上げが上がったとき、『新しい環境に行きたい』と転職を決意しました。0を1にしたことで、『この先の仕事は僕じゃなくてもいい』と感じたんです」

テクノロジーに対して理解と投資をしている企業への憧れが、中村さんを転職へと動かした。新たにプロジェクトを組み、新規のサービスツールを会社へと導入して売り上げを創出する――。自らの成し遂げた実績を胸に、新天地へと臨んだ。

  • 0を1にした自信が、中村さんを3回目の転職へと突き動かした

増えた収入以上の余裕と「好き」という充実感

3度目の転職もエージェントを通して探したが、希望職種もデータを扱う仕事に決め打ち。職務経歴書などを公開し、スカウトを待つ形をとった。数社からオファーを受け、3社ほど面接をして約3カ月で内定を取った。

「データを扱う仕事は今、とても需要がある。ゼロベースから大きな規模のツール導入に携わったことは、今の会社から評価してもらえたんじゃないかと思います」

転職先を選ぶにあたっても、ただやりたい仕事ができるというだけではなく、もうひとつ、大きなポイントがあった。

「自分が今までやっていた仕事をよりスピーディに、大きな規模でできるということは単純にエキサイティングなこと。携わっている仕事以外で新しいスキルを学ぶことができる点も、今の会社を選んだ大きな理由になりました。eラーニングなどで新たなキャリア開発もしやすい環境になっているんですよ」

直近の転職は、自分のこれからのキャリア形成をしっかりと意識したものだったと、中村さんは振り返る。年収面でのアップ額は100万円に満たないが、意外なところで余裕を実感できているという。

「福利厚生の面で、今までかかっていたお金がかからなくなったんです。なので、額面以上の余裕が感じられる。その分、プライベートが充実してきました。今勤めている会社は、社風としてそれぞれの仕事が明確になっていて、個々の責任がはっきりしていて、それぞれ仕事をしている印象がありますね。ちゃんと責任を果たしていれば定時で帰れる。そこは働きやすいですね」

自らの転職を振り返り、転職のコツを尋ねてみたところ、冒頭でも出てきたある言葉が発せられた。

「合わない環境の中でも、どこか1点でも『好き』なことを見つけて、その好きなことだけをやるために、次の転職先を探す。そして、その転職先を目指すために、好きなことのスキルを伸ばす。そのために社内で交渉事などもあるかもしれませんが、好きなことなら続けられますからね。新卒のときの『好き』とは違うけれど、今の仕事も『好き』だから、選んだ仕事です」