■翔太は犬だったの? 事件

「車ぼこぼこ」事件以降、大きなトラブルはなく、対人関係による小さないざこざもなくなってきたと安心していた頃、翔太が友だちに嚙みつくという事件が起きました。

相手は転校生でしたが、幼い頃からの顔見知りでもありました。

なので、翔太に対して親近感があったのでしょう。そばに来ることが多かったようです。

でも、翔太はどちらかというとうるさくつきまとわれたりするのは嫌い。

友だちに近寄られることに過敏になっていて、持ち物に触られたりすると、反撃行動として「嚙みつき」を始めました。

そのことをトモニ療育センターの個人セッションで相談すると、「どうしても嫌なことや生理的に合わないものは誰にでもある。それを好きになれとか、我慢しろとは言わなくていい。頭からダメと禁止し、押さえつけて止めるのではなくて、彼が内面的なところから自分を控えることができるようにしていきましょう」と言われました。

そこで、翔太には「人に嚙みついたりするのは犬よ。人間はそんなことしない」と教えることに。

そして、嫌なことをされたときは「やめて」と言うように教えました。

就寝前の読み聞かせのとき、本の中に犬がぬいぐるみをくわえていくシーンが出てきたので、
「ほら、やっぱり嚙みつくのは犬よ」私。最初は笑っていた彼も、
「あなた、嚙みついたとき、犬になってたんでしょう?」
「えぇ、違うよ。なってないよ」
「だって、人間は人に嚙みついたりしないもの。あなた、しっぽ出てなかった?」
「え〜、出てないよ。ぼく、犬じゃないよ」

だんだん真剣になってきます。からかい甲斐があるなぁ、と内心くすっと笑いながら、こういう導き方ができるようになった彼の成長を喜びました。

犬になりたくない彼は嚙みつかないことを誓いましたが、怒りながらも「やめて」と訴えて自制できるときもあれば、できずにカプッと思わずやってしまうこともありました。

担任から「犬になったよ」と言われると「ごめんなさい。紳士になります」と慌てて言うこともあったそうです。

連絡帳でそのこと知った私。

「そっか、翔太は今日、犬なんだ。晩ご飯はドッグフードかなぁ」
「やだ……やだよ。ぼく、人間がいい」

どうやら「犬になった」作戦は成功したよう。

でも、「犬はみんな嚙みつく」なんて、犬に失礼な話なので途中からは野良犬にしました。

「やめて」と言えるようになった翔太は、パニックも起こさないようになり、トラブルもなくなりました。


次回は翔ちゃんが一人で外出するお話です<11/5(水)公開予定>。

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