女性のどこに、性的な魅力を感じるか? いわゆるセックスアピールの問題である。顔、胸、尻、脚……。ときにうなじであったり、二の腕であったり、くびれた腰であったり……。それはもう好みであり、フェティシズムの問題だからどこでもいい。だが、その偏向した好みこそが、諸君がモテない理由であることだけは自覚しておく必要があるだろう。
質問の仕方を変える。女体のどこに性的魅力を感じるかではなく、女体のどこが一番いやらしいか? この質問に、諸君はどう答えるであろう。
やはり顔だ、脚だ、うなじだと、同じ答えをするだろうか。口に出た言葉は、表層的なものでしかない。そこから核心に歩を進めよう。それこそがモテる男になる、第一歩である。
そもそも淫乱という言葉である。猥褻という熟語である。この画数の多い、しかも視覚的にも音感でも、なぜか心がそそられる言葉を、女体のどこが創りだすことができるだろう。胸か尻か、はたまた陰部か? 答えは否である。では、どこが考え、創り出したかといえば、頭である、脳である、脳細胞である。その論理でいうなら、ふたつ目の質問、つまり女体で一番いやらしい部分はどこか? との質問の答えは、頭であり、脳であり、脳細胞ということになるだろう。
人間は見た目ではない、心である。という言葉は、ときにモテない人間の戯言でもあるが、一方で真理でもある。なぜなら心は心臓にあるわけではなく、脳の中にあるからだ。ついでに言えば、「人間は見た目やお金や社会的な地位ではなく中身よ」とほざく人間もいる。人間は中身? それは内蔵に疾患もがなく、内視鏡でみるときれいであるということか! こちらの方は、モテない、あるいは社会にも認められない人間の戯言である。
そんなことはどうでもいい。話を本題に戻そう。女体で一番性的魅力のある部分、平たく言えばいやらしい部分は、ボクは脳だと断言する。ここまで見てきたように、脳こそが一番いやらしいことを考えるし、そしていやらしい考えを行為へと移すからである。
すなわちその部分に興味を抱かずに、目に見える部分、顔だ、胸だ、尻だ、脚だと、そんな瑣末な部分のみズームアップし、そこしか見ない、見えないからこそ、諸君はモテないのだろう。胸や尻にしか興味のない男を、果たして女性が興味を抱くであろうか? 街を歩いているだけで声をかけられるような美貌、明らかに使えないくらい所有している財産、あるいは誰もが知っている名声でもなければ、普通は「キモイ」と言われるだけである。
見えない部分を見る、少なくとも見る努力をする。これこそがモテるための第一歩である。まして、これまで女性と縁のなかった諸君であるならば、誰もが狙う美貌や美形、スタイルのいい女など、まず相手にされない確率の方が高いのだから。
それにしても頭のいい女とのセックスは、とても気持ちがいい、との報告がある。報告といっても呑み屋で、ボクがここまでの持論を懇々と訴え、「そういえば確かに頭のいい女は……」といった程度の報告だが、それでも頭のいい女は床上手であることを、モテる男は本能的に知っている証左でもあろう。
もっとも頭が良くて美形であるなら、それはもう文句はないのだが、セックスの上手い、すなわち頭のいい女が必ずしも美人なわけではない。というより、往々にして不美人、平たく言えばブスである場合も多い。
「色の白いは七難隠す」というが、ボクに言わせれば「頭のいいは十難、いや百難隠す」といっても言い過ぎではない。なにより女体の中で一番、いやらしい部分が最も成熟しているのだ。ときにその褒め言葉は、「あいつは頭がいい」としか使えなかったとしても、こうしたタイプこそ狙い目であるとかんがえるボクは、やはり少し異常性愛者なのだろうか?
本文: 大羽賢二
イラスト: 田渕正敏