財形住宅や財形年金には非課税などのメリットがあることをおわかりいただけたと思います。では一般財形貯蓄には社内預金以上のメリットはあるのでしょうか? もしも会社に社内預金と財形貯蓄の両制度があって、どちらを優先するのがいいか迷うときのため、財形貯蓄だけのメリットを知っておきましょう。

■雇用形態

財形貯蓄制度は雇用の形態にかかわらず、事業主に雇用されるすべての人を対象としています。契約社員やアルバイト、パートタイムの人でも、継続して雇用関係が見込まれる場合、積立期間(一般は3年以上、住宅・年金は5年以上)などの要件を守ることができれば利用できます。

■貸付制度

財形貯蓄制度には「財形持家転貸融資」という住宅ローン制度があります。利用条件は3種ある財形貯蓄のうち、いずれかの財形を1年以上継続しており、貯蓄残高が50万円以上あることです。一般的な住宅ローンのような複雑な審査はありません。

このローンを利用すると、財形貯蓄残高の10倍相当以内(最高4,000万円)で、実際の所要額の90%相当以内の金額の融資を受けられます。返済期間は最長35年(リフォームは20年)、融資金利は5年間固定金利で、2018年11月現在の金利は年0.71%と低金利です。ただし、利用するには会社に「財形持家転貸融資」の規程があるなど、会社側の要件も定められています。担当者に確認してみましょう。

財形制度を利用する際の注意点

財形住宅および財形年金には加入目的が定められていますが、非課税の特典を受けるためには、払い出し(解約)の目的もそれぞれ遵守しておかなければなりません。

わかりやすく言うと、住宅取得または年金受取以外で払い出しをする場合、5年間さかのぼってその間に生じた利子全体に20%(2037年12月31日までは20.315%)が課税されてしまいます。また、財形住宅では、住宅取得のための払い出しであっても、床面積や居住者などの要件があり、要件に合わない住宅を取得すると5年間さかのぼって同様に課税されます。

ただし、両者ともに払い出しの理由が「災害」「疾病」「寡婦(寡夫)になったとき」「倒産・リストラなどによる失業」などの場合は、目的外の払い出しであっても課税されません。

制度を利用するには?

実際に制度を利用するときは、総務や人事などの担当者に申し出ましょう。財形制度は会社が契約している金融機関(銀行、信託銀行、保険会社など)以外は申し込みできません。会社が複数の金融機関と契約してる場合は、その中から積立先を決めることになります。それによって貯蓄型・保険型などに分かれ、金利や非課税枠が違ってきます。よくわからない場合は、総務や経理の部署に相談してみましょう。

参照: 厚生労働省「第18回労働政策審議会勤労者生活分科会」資料および厚生労働省「財形制度の実施状況」

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。