怒りは何かとデメリットが多いと思われがちな感情ですが、プラス面もあります。その一つが、怒りはエネルギーになるということです。怒りは扱い方を間違えると、人間関係や信頼、物や心身の健康までも破壊する強力なパワーになります。ですが、悔しさをバネに建設的に活かすことのできる感情でもあるのです。

  • 怒りをプラスに変える方法

これまでに、悔しさをバネに努力して掴み取った成功体験はありませんか? スポーツで負けたのが悔しくて練習を頑張って勝利を手に入れたり、仕事をバカにされたのが悔しくて努力して昇進することができたり、パワフルな怒りは、自分のモチベーションを上げる力に転換することもできるのです。

最終回は、怒りをプラスに変える方法をご紹介します。

自分の理想の状態(ゴール)を考えよう

怒りを感じるときは、自分の理想が裏切られたときです。つまり、怒りは「こうありたい」「こうなりたい」という自分の理想の状態を教えてくれるサインでもあります。そのサインをキャッチできれば、自分が進みたい方向性、叶えたいこと、実現したいこと、自分が目指すゴールがわかります。あなたは具体的にどのような状態を望んでいますか? 長距離走でゴールがわからなければ、どこに向かえばいいかわからず迷走してしまいます。怒りをプラスに活かすためには、まず自分が向かって行きたい理想の状態(ゴール)をイメージすることから始めましょう。

自分の理想の日を思い描くアンガーマネジメントのテクニック「ミラクルデイ・エクササイズ」をご紹介します。

【ミラクルデイ・エクササイズ】
怒りを感じる問題や悩みが全て解決できた理想の状態である奇跡の日を何の制限もなくイメージします。
・朝起きたときはどのような気持ちですか?
・自分の変化に気づく人はいますか? それは誰ですか?
・あなたに表れる表情や態度はどのように変化していますか?
・職場の人は、あなたにどのような言葉をかけますか?
・この1年を振り返って、この理想に近い日はありましたか? どこにいて何をしていましたか?

理想の日を考えることで、今できることに向き合うことができます。

具体的な行動を考えよう

現実と自分の理想の状態(ゴール)とは少なからずギャップが生じています。そのギャップを埋めていくためには「行動」が必要です。

山登りで登山口から山頂まで瞬時に移動するということがないように、何も行動をせずに目指すゴールに到達することはありません。自分の理想の状態をイメージするだけ、目標、計画を立てることだけにとどめず、一歩ずつ確実に理想の状態に近づける具体的な行動を起こしていきましょう。

具体的な行動と言っても、「何から取り組んでいけばいいかわからない」「理想の状態を実現するなんて無理」と思ってしまう人もいるかもしれません。人は「現状維持バイアス」が働き、何かと「変わらない」状態に安心感や居心地の良さを感じるものです。そのため、「変わること=行動すること」なので、なかなか行動に移せないという人もいるでしょう。行動に移せるようになる方法として「変化ログ」をご紹介します。変化ログは、次の2つのことを書き出します。

【変化ログ】
1. 自分が作りたい変化
2. 変化を作るための現実的で具体的なステップ

例)
1. 自分が作りたい変化
・仕事の話さえ苦痛に感じる上司Aとの関係を改善したい

2. 変化を作るための現実的で具体的なステップ
・毎朝、自分から挨拶をするようにする
・1日1回は笑顔で話しかけてみる
・自分からランチに誘ってみる
・信頼している上司Bと一緒に参加できる飲み会をセッティングする

書き出すポイントは、すぐに実現できる具体的な行動であること、自分にとっても周囲の人にとっても長期的に健康的な行動であることです。スモールステップで、理想の状態に近づいていきましょう。

自分に自信を与えよう

怒りをプラスに変えるためには、毎日少しずつでもいいので変化ログに書いた行動に取り組むことが大切です。とは言え、できていないことに目が向き落ち込んだり、やる気を失くしたりすることもあるかもしれません。反省することは大切ですが、必要以上に自分を卑下したり責めたりするのはやめましょう。私たちは当たり前のように毎日小さな成功体験も積み重ねています。継続して自分を奮い立たせるために、「サクセスログ」を使って日々できていることを実感し、自己肯定感を高めていきましょう。

【サクセスログ】
・どんな些細なことでもいいので、「できたこと」「上手くいったこと」を記録していきます。

例)
・いつもより10分早起きできた
・会議でプレゼンが上手くいった
・部下を褒めることができた
・変化ログの行動に挑戦できた

書き出すことで、自分のできていることや頑張っていることなどのプラス面に着目でき、自信を持てるようになります。自己肯定感アップは、モチベーションを高めるだけでなく、怒りの感情も持ちにくくします。怒りをプラスに活用できれば、自分だけでなく周囲の人にも幸福感を与えることになるでしょう。