2008 年に八戸市議会議員の藤川優里が「美人すぎる市議」と呼ばれたその日から、日本ではありとあらゆる職業カテゴリーで美人探しが始まった。美人すぎる海女、美人すぎる公認会計士、美人すぎる女相撲取り…。さすがに世間も飽きてきたと思われるこのタイミングで、「美人すぎる○○」ブームを締めくくるにふさわしい存在が登場した。
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森崎友紀 |
テレビ朝日系『お願い!ランキングGOLD』などで活躍する栄養管理士の森崎友紀は、誰もが認める正統派の美貌を誇るだけでなく、バスト88センチ(推定Fカップ)というグラビアアイドル顔負けの巨乳を有する奇跡の逸材だ。彼女はいつしか「美人すぎる料理研究家」と呼ばれて男性誌のグラビアを飾るようになり、平野レミをはじめとする先人たちとは異なるファン層を開拓することに成功。11月5日に発売されるレシピ付き写真集『for Men』(発売中 2,100円 集英社刊)では、水着やセクシー衣装の写真だけでなく、『男が元気になる』をテーマにした「今夜のおかず編」というレシピ集も付いているという。男の食欲と性欲に訴える、まさに二つの意味で「男のおかず」というわけだ。
美人でセクシーで料理も上手い。こうした極めて古典的でオーソドックスな「理想の女性像」に辿りついた「美人すぎる○○」ブームとは、結局一体なんだったのか。実は「美人すぎる○○」ブームが訪れる以前にも、昭和の時代からさまざまなジャンルに「美人」と呼ばれる女性は存在した。美人棋士、美人プロボウラー、美人プロレスラー、美人プロゴルファー。しかし失礼ながら、彼女たちは美貌を必要とされないジャンルにおいて低い期待値を上回った、実際のところは「○○にしては美人」と言ったほうがふさわしい、下駄を履かせてもらった感じの「美人」がほとんどだった。
しかし「美人すぎる市議」藤川優里は違った。本来は美人であることが必要とされない公職という、従来の「○○にしては美人」枠の中で登場しながら、アイドルや女優と比較しても上の部類に入るであろう、誰も異論を唱えられないほどの輝きを放っていた。「美人すぎる」の「すぎる」とは、過去の「美人○○」という言葉では追いつかないほどの、低い期待値を大幅に超えたそのギャップに与えられた勲章のようなものだった。
彼女の登場が「意外な職業に就いている超美人」探しブームを呼び、それがいつしか美貌よりも「意外な職業」に情報的な面白さや新奇性が求められ始めて「美人」部分がおろそかになっていく。その結果、濫用された「美人すぎる」という勲章は形骸化していった。
そんなときに「美人すぎる料理研究家」は登場した。美人と料理という組み合わせにギャップは無く、職業的な意外性を楽しむ余地は皆無。美貌と料理、性欲と食欲。男の期待にストレートにこたえる彼女に、ギャップを楽しむ言葉としての「美人すぎる」はもはや不要だろう。「美人すぎる」ブームはこれでひとまずの区切りをつけられた。「美人すぎる○○」ブームに翻弄された美人たちに幸あらんことを祈りたい。
真実一郎
サラリーマン、ブロガー。『SPA!』(扶桑社刊)、『モバイルブロス』(東京ニュース通信社)などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社刊)がある。ブログ「インサイター」