「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第41回のテーマは「話し合いで自分の心を整理整頓」です。

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夫婦そろって在宅仕事の我々。保育園への送りから帰ってきたら、「相手の部屋へ行って帰宅したことを知らせる」ことになっています。というか、私はいつも仕事部屋のドアを開けているのですが(閉めると玄関の呼び鈴が聞こえないので)、パートナーは部屋のドアを閉めています。彼は映像の仕事をしていて音を使う仕事をすることが多いので、そうしているのですが……ドアの立て付けが悪く、力を入れないとドアが開きません。

なので、急いでたり、力の入れ具合を間違えたりしてドアを開けると「バーン!」と大きな音がしてしまいます。我が家は賃貸なので、大家さんに言って直してもらえばいいんですけど、致命的に不便じゃないことって面倒で、そのままにしちゃいますよね……。

というわけで「バーン!」とドアを開けると、「怖い」と言われてしまいました。確かに、怒ってるとき……というか「話し合いしなきゃ!」と思っているときって、自分の心理状態も相まって思いきりドアを開けることが多かったかもな? と反省しました。前回、我がパートナーは「怒って伝えたほうがコミュニケーションしやすい」ということが判明したのですが、だからといって彼も怒られるのが平気なわけではない。やっぱり怖いのはイヤなんですよね。

こういうのは私のほうにもあって、以前パートナーが低いトーンから「あのさぁ」と始めた話が、ものすごく心をえぐるような深刻な、イヤな話だった時期があって、それ以来「あのさぁ」から話を始められると、話の内容がどうであるか聞く前に「あわわわわ」と気が動転してしまうようになりました。パートナーは深刻な話じゃなくても「あのさぁ」から始めることが多かったため、「動揺しちゃうので『あのさぁ』から話を始めないで!」とお願いしたことがあります。

夫婦をやっていると過去の経験などから、お互いのコミュニケーションにおいて「それは怖い!」というポイントが出てくるので、我々夫婦ではマメに整理整頓をするようにしています。コミュニケーションの整理整頓を話し合いでたくさんすると、なんだかお互いをカウンセリングしてるみたいです。

パートナーが、「悲しい」と言われるよりも「なんでそんなことするんだ!」と怒られたほうが素直に話を聞ける人だと気が付いたときは、「あ、だからそういう気の強いタイプの女性が好きなんだね?」とわかったり。自分のことがわかると、コミュニケーションで問題があった部分や「なんでだろう」と思っていた部分の解決方法がわかってくるので、心の整理整頓は面白いし、大事だと思います。

我が夫婦は、パートナーが基本的には頼りになって楽しくていい人なのに、ある一定のパターンで「キレる」ことが問題でした。これを数年かけて、「キレて」しまう心理や、思考の癖を考えて話し合いで解決したことがあります。この話をすると「どうしてキレるような人と一緒にいたのか」と言われてしまうのですが、「どうして」を突き詰めたり、夫婦で話し合ったりすると、自分の心を整理整頓していくことができるのです。とはいえ、夫婦の会話だけで全ての謎は解明できず……。私がどうしてそういう人と一緒にいることが多いんだろう? という理由は、まだ解明できていません。

我々がこういう会話をたくさんするようになったのは、お互いが離婚経験者だからです。「一生一緒にいよう」と約束した相手と、うまくコミュニケーションができなくなって、関係を解消したとき、大きな挫折を味わいましたし、深く傷つきました。なので「もうあんなことにはなりたくない」と日々、小さなことから大きな問題まで2人でたくさん話し合うのですが、そうやっているうちに自分が小さいときは、「家族で心の話をする」ということが全然なかったな……と気が付きました。

昔は「どうしてそんなことをしたの?」「何がつらかったの?」ということに、「家族が」というよりも「社会全体が」着目してなかったと思います。自分が育ってきた環境を振り返ると、今よりももっと「システム」「慣習」「常識」「社会的な体裁」などの、社会の枠組みのほうが優先されていて、その枠組みの中にあるべき「心」は置き去りにされていた。それに比べると今はだいぶ社会全体の関心が「心」のあり方に移ってきているなと思います。

研究で心の解明が進んでいるのと、社会が豊かになっている証拠だとは思うのですが、それでも多くの人が心穏やかに暮らせているかといえば、そうではないと感じます。もっと「心のあり方」は社会の中で大事にされていってほしいと思います。

社会的な枠組みに気を取られて、心のやりとりをうまくできなかった私達。そのときの反省を活かして、「ドアの開け方」や「話を始める一言」とかを丁寧にやりとりして「心のあり方」を大事にしています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。