「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第29回のテーマは「お母さんも夜のお出かけをします」です。
世の中のお母さんたちは、まだまだ「夜のお出かけ」の難易度は高いでしょうか。
我が家では産後1カ月頃から週に一度、趣味の空手に出かけています。パートナーが「子どもは見てるから行っておいで」と言ってくれたので、我が家ではお母さんも夜のお出かけが可能となっています。
パートナーは、私が家に籠もりきりで赤ちゃんの世話だけしていたら、精神的にも追い詰められるし、妻が精神的に追い詰められたら困るのは自分だし、どう考えても週1の空手の稽古だけは確保したほうが夫婦にとっていいことしかない。と考えて「稽古に行っておいで」と言ってくれました。
いや、本当にそうだと思うんですよね。そもそも私が空手を始めたのは、独身時代に仕事も生活も1人きりのフリーランス生活で、家に籠もりきりの生活をしていたのが精神的につらくて、メンタルが不安定になっていたからなんです。誰とも話さずに1人で仕事をしていたら、世界と自分の境目がよくわからなくなってしまったんですよね。
赤ちゃんがいなくったって、家で籠もりきりで何かをするのはメンタルに悪影響なのに、自分の生活リズムと全然違う、目を離したらすぐ死んでしまうかもしれない赤ちゃんと籠もりきりの生活で、精神が健康に保たれるわけがないじゃないですか……! 週に一度赤ちゃんから数時間解放されるだけで、私の精神は健康的に保たれましたし、それは家庭にとてもいい影響をもたらしたと思います。
……「私の精神は健康的に保たれた」とか軽く言ってすみません。私は不満をため込んでイライラするとスーパー恐いんです。「散歩に行けない大型犬」と暮らしてる、みたいな感じだと思います。パートナーは絶対その状況はイヤだったんですよね。なので、みんなが平和で安全にいられるための選択だったんだと思います。
というわけで、お母さんも夜のお出かけができるのはいいことばっかりじゃーん! と思っていたわけですが、世の中には「子どもが小さいときくらい、母親は自分のやりたいことは少しくらい我慢しなさい」という意見の人もいるようです。いや、まあ、わりと少なくないですよね。
根拠として「子どもがかわいそうだから」というのがあるのですが、すべては「程度」の問題だと思うのです。100%毎晩必ずお母さんがいないと、母の愛が感じられないということはないと思うんですよね……。子どもにはお父さんも、おばあちゃんもおじいちゃんも、いろんな人が関わっていたほうがいい。それで、お母さんがいなくても子どもが寂しくない状態を作れるなら全然いいと思うのです。かといっていつもお母さんがいなかったら寂しいでしょうけど、バランスがとれてるならいつも「お母さん」じゃなくてもいいんじゃないかと。
というのが私の意見なのですが……現在4歳の我が息子は、いつもお母さんがいい派となっております。0歳児から週1でお母さんは夜におでかけしているのに、慣れることも諦めることもなく「お母さん行かないで」と言っています……。
我が家はゴハンを作るのはお父さんの役目だし、家にお父さんがいる時間も長いし、お父さんはめちゃ子煩悩でよく世話はしているし、0歳のときからお父さんと2人っきりでも全然大丈夫だとわかっているにも関わらず、お母さんが好き……! 「なんでー!?」と思うのですが、うちの息子がそうだからって「子どもはみんなお母さんじゃないとダメなのね」と思うのは違うと思うんですよね。「うちの子はお母さんが好き」というn=1の話でしかない。
もしそれで自分の子がそうだったからと、夜のお出かけを諦めたとしてもそれは自分と子どもとの関係の話でしかないと思います。我が家はお母さんが好き過ぎて、私がいるとお父さんに冷たかったりイジワルだったりするのですが、私がいなくなればいなくなったでお父さんと仲良く遊んで一緒に寝るらしく、私のお出かけの日はお父さんにとって、息子との大事な時間となっています。なので「週1くらい、お母さんいなくなって……!」と言われています。
他のうちの子の話を聞くと、「お母さんが好き」という傾向はあるものの、お父さんも大好きでお父さんとのお留守番が楽しい子もいて全然問題なかったり、平気だったりというケースも多数あります。
世間的な正しさとか、よそのご家庭のことはさておいて、自分のコンディション、パートナーのスケジュール、子どものメンタル、いろんな要素を自分の家庭のバランスで考え、誰も我慢せずに話し合ってベストな状況にしたいものです。
我が家は、私が「散歩に行けない大型犬」にならない。お母さん好き過ぎる息子がお父さんと仲良くする時間を作る。というわけで、今のところいいバランスです。子どもの成長によってバランスは変わっていくと思うので、その都度話し合って決めていけたらいいなと思っています。
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著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。