「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第141回のテーマは「麦茶1センチ残しは罪である」です。

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我が家のルール「麦茶1センチ残しは罪!!!」は、私の心に刻まれています。これ、元夫がやるタイプだったんですよね。でも、以前の私はそんなに罪なことだとは思っていませんでした。なぜなら、私は他者に全然期待しないタイプだったからです。家事は気がついた人がやればいい。元夫がやりたくなかったのか、どこに麦茶のパックがあるかわからないからそのままにしたのかはわからないのですが、私は「そういうもの」だと思っていました。

離婚してから、ネットで「夫が麦茶を1センチ残して冷蔵庫に入れるのが許せない」というな意見があるのを見て「ああ、そうか! それはダメだよな! 」と改めて気が付きました。自分の他者に期待しなさすぎるのも、決していいことではないんですよね。だって、その状況を「幸せだなあ」と思っているわけじゃないから。それ以来「麦茶を1センチ残したり、残されたりする関係はよくない」と思ったのです。

というわけで、我が家は「麦茶1センチ残し」がなるべく起こらないように設定しています。麦茶を1センチ残す側の要因を考えると、やっぱりまず「麦茶のパックがどこにあるかわからない」ということがあると思います。同居しているのに、麦茶のパックの場所がわからないくらいキッチンのことがわからないなら、まずその環境を改善しなければなりません。我が家のキッチンはパートナーのテリトリーですが、私も麦茶パックのおいてある場所は把握しています。なので、我が家では「わからないからやらない」という初手の問題は起こりません。

そして「麦茶1センチ残し」の最も罪深いところは、「自分がお茶を飲もうと思ったときに冷蔵庫にちょっとしかお茶がない」という悲しみですよね。その最後のちょっとのお茶を飲みながら、新しいお茶を作らなければならないのはとても悲しい。

この問題を避けるために、我が家の冷蔵庫には2リットルのお茶ボトルが2つ入っているのです! 1つがなくなっても、すでに次の麦茶がスタンバイされている! これは実は、同居初期に私が「麦茶じゃなくて、冷たいほうじ茶が飲みたい」と言ったので、それぞれお茶を入れていたのが発端です。しかし非効率的なので、徐々にお茶ボトルに順番に入れるようになりました。そして息子が麦茶好きなので麦茶優先になり……今は麦茶を順番に作るという流れになりました。ゆえに「お茶が飲みたかったのに、もうない! 」という悲劇は、我が家では起こらないようになっています。

そんな我が家でも、1センチを残すことがあるとしたら「まあ、やっといてくれるだろう」という甘えです。これは私は、洗い物に関しては今でもやっています。「後でまとめて洗い物をするときに、ついでにコップを食洗機に入れておいてくれるだろう」という感じで、シンクの中にコップを入れたりします。これに関しては、パートナーはとくに気にせず食洗機に入れてくれます。ただ、「麦茶1センチ残し」はそれを見た人がタスクを押し付けられたような気になりがちなタスクなので、なるべく少なくなったら新しく入れるようにしています。

もちろん、子どもと出かける前に慌てて水筒に麦茶を入れたら少なくなって、ああでも、洗って入れ直す時間がない……! みたいなことはありますが。それは状況を見ればわかるので問題になることもありません。

ちなみに、漫画内でパートナーに「麦茶を入れてくれて嬉しい」と言われたのは、私が冬の間全然冷たい麦茶を飲まなかったせいでした。麦茶を飲むのはパートナーと息子。もちろん、息子のために私がお茶を入れることはありますが、「お茶がなくなるタイミング」に当たる確率が低かっただけなんですね。さすがに、少なくなったタイミングに当たらなかったらわからないので、作れません。というわけで、冬の間はパートナーがずっと麦茶を作り続けていたようです。たまたま、息子のお茶を入れたタイミングがお茶がなくなったときだったので、私が新しく入れた……というだけだったのです。

パートナーはもともと怒りっぽく、キレやすいタイプでした。私があまり他者に期待していないこと、そうすればむやみに他者に腹立たしい気持ちがわかないことなどを話しているうちに、だんだん「自分がイライラするのは人に期待しすぎだからだ」と気がついて、他者に対しての期待値を下げるようになったという経緯があります。

他者に期待していなければ、しばらく自分がずーっと麦茶を作ってたのに、自分以外の人が作ってくれたことが「嬉しい」と感じるようになるんですね……。おそらく前の思考だったら「なんで俺ばっかりやってんだよ!! 」ってイライラして、「最近オレばっかりやってる! 」と不満を爆発させ、私に「はあ? そりゃ私が麦茶飲んでないからでしょ!! 」って言い返されてケンカ……みたいな感じになっていたように思います。同じことでも、世界の見方を変えると心穏やかに暮らせるようになるんだなあと思いました。

かといって、他者に期待しなさすぎると、かつての私みたいに「なんか幸せじゃないな」ということになってしまいます。期待しないってことは、他者に自分の一部を委ねないということです。つまり、誰のことも信用していないということでもある。それはそれで幸せになれないので、私は今はパートナーに対しては「期待する」ようにしています。

コップをシンクに入れといたら洗ってくれるというのは、「甘え」だし「期待」です。今の私はパートナーに対してそれができるようになった。そしてパートナーは「麦茶を自分以外の人が作ってくれた」と喜べるようになった。

たかだか麦茶を誰が作るかどうか……というだけの話でしたが、今の我が家は少しずつお互いの弱点を克服して、お互いが快適に過ごせるようになってきているんじゃないかなと思いました。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。