「相手にどれくらいの収入があり、どれくらい貯蓄しているのか分からない」「お金に余裕があると思ってついつい使いすぎてしまう」など、共働き夫婦の家計管理のお悩みは複雑です。
さらに、お互いが忙しくて時間がないため、その悩みは雪だるま式に大きくなってしまうことも……。上手に節約・貯蓄し、家族が本当にお金をかけたいところに支出を向けられる家計管理は、どうすれば実現できるのでしょうか。
今回は、共働き夫婦の家計管理について、『お金が貯まる! 世帯年収500万円から始める共働き夫婦の超効率家計簿』を出版された、ファイナンシャルプランナーの福島えみ子さんと江尻尚平さんに話を聞きました!
共働き家計の一番の問題は「お互いに見えない部分があること」
――共働き夫婦から、家計に関してどんな悩みが寄せられていますか?
福島:多くの共働き家計をみてきましたが、「共働きで稼いでいるのにあまり貯まっていない気がする」という悩みをよく聞きます。
共働き家計で貯まらないという家庭では、「2人で働いているんだから、これぐらい使ってもいいよね」という「ご褒美出費」が多くなっているケースはよくみられます。さらに、必須の支出ではなく、「あったらいいな」に過ぎない支出がみられるのも特徴です。こうした「あったらいいな支出」は、実は「なくてもいいな支出」であることが多いんです。
――なぜ、こうした悩みを抱いてしまうのでしょうか?
福島:共働き夫婦の家計管理の悩みの根本は「お互いに見えない部分があること」だと思います。しかも結婚するまでは、それぞれが自分の稼いだお金で生活してきているので、「すべてをパートナーと共有したくない」という人が少なくないんですよね。
また、パートナーがお金の話を避けるから節約しようと思っても難しいという相談も寄せられています。いずれにしても、お互いに見えない部分があるがために、うまく家計を回せないと思っているケースがよく見られます。
ちなみに、それぞれがお互いに「相手が貯金してくれているだろう」と思っていたら、どちらも貯めていなかったという深刻なケースもあります。
江尻:だからといって、夫婦は"すべての支出と収入"をお互いに見せ合わなければいけないというわけではありません。必要な部分の認識を合わせ、共有ができていれば、問題はないと考えています。
たとえば「本当は見せたくないのに」と不仲になってしまう場合や、詳細を見せると「これは何に使ったの?」と言い合いになってしまい、必要なことの認識合わせができていなかったりと、最初でつまずいてしまい、自分たちに合った家計管理ができないご家庭が多いように感じます。
「支出分担タイプ」は貯まらない!? 4つの家計管理法と注意点
――共働きの家計管理にはどのような方法があるのでしょうか?
福島:共働きの家計管理は、共働き家庭の数だけあるといえるほど、千差万別です。ただ、大きく分けて、「共働きの家計管理の方法」は4つのタイプに分類することができます。
●「オールオープンタイプ」
すべてが2人の共有。支出も収入もオール合算
●「収入シークレット/共通財布タイプ」
お互いの収入は明らかにせず共通の財布をつくる
●「収入シークレット/支出分担タイプ」
お互いの収入は明らかにせず支出だけ分担
●「ワンオペタイプ」
片方の収入だけで基本的には生活する
このうち、どれか1つだけが、だれにでも「正解」の方法というわけではないですし、どのタイプにもメリットとデメリットがあります。何よりも大切なのは、「"自分たちの場合は"どのタイプの家計管理がぴったりフィットするのか?」ということ。どのタイプがフィットするのかは、夫婦の価値観に左右されます。ぜひ夫婦でじっくり話し合っていただきたいです。
江尻:どちらか一方が細かく家計管理できないタイプだと、課題が生まれることもあります。どちらがどのように管理するかについても、最初に相談して決めておいた方がいいと思います。
――4つのタイプの中で、お金が貯まりやすいのはどのタイプでしょうか?
江尻:「オールオープンタイプ」と「ワンオペタイプ」の方が、お互いに相手の収入を把握して行うので、貯まりやすい傾向にはあると思います。
ただ、夫婦間の納得感においては、「収入シークレットタイプ」の方が高い印象を受けます。2人とも「貯める」と決めて頑張れる夫婦もいますが、どちらかが無理して不満をためているケースもあります。管理方法の共通認識や価値観が共有できていれば、「シークレットタイプ」を選ぶのも、選択肢の一つだと思います。
――シークレットタイプを選ぶ場合、どういったことに注意すべきですか?
福島:夫婦のどちらかに収入の変化が起きた場合にはどうするか、あらかじめ話しあっておくことが大切です。妻の出産による収入の減少や、勤務先のボーナスカットなど、予期せぬ出来事も想定して、夫婦でいつでもフレキシブルに話しあいができる状況を作っておきましょう。
――できるだけ選ばない方がいいタイプというのもあるのでしょうか?
福島:ご夫婦で納得して決められることが大前提ではありますが、「収入シークレット/支出分担タイプ」のうち支出費目を分担するスタイルは、できるだけ避けていただいた方がいいと考えています。
このタイプは、たとえば家賃や水道光熱費は夫が担当して、妻が食費と日用雑貨費を負担するというスタイルですが、特に独身時代が長いカップルに、このタイプが比較的多いようです。
費目ごとの分担だと、費目の額が変動したり、当初はなかった費目が増えたりしたときに不公平感が募ることが多く、さらに家庭全体の支出額が把握しにくいデメリットがあります。お互いに定期的に情報共有しあうことが難しければ、選ばない方がいいでしょう。
まずは現実の支出を「見える化」しよう
――タイプを決めたら、まず何から始めればいいですか?
江尻:まずは、入るお金と出るお金を把握することから始めるといいと思います。「なぜか貯まらない」という悩みの、「なぜ」という部分を明らかにするためには、現状を把握することが第一歩なんです。
特に、支出については把握しにくいご家庭が多いので、1カ月あたりの支出を出してみると、「こんなに使っていたんですか?」と驚く方も多いです。「出るお金」を把握すると、夫婦間で課題の共有もしやすいと思います。
――支出を記録していくことで、課題が見えてくるのですね
江尻:私の会社が提供している家計簿アプリのあるお客さまは、カフェで朝食をとるなどの日々の支出を削るだけで7万円もの節約に成功したと話してくださいました。
お金の出入りを「見える化」することで、自分にとって必要な買い物かどうかがわかり、どこを削れば良いかがわかったそうです。おそらく、どのご家庭にも少なからず、そういった無駄な支出があると思うので、支出を記録することで、「見える化」していただきたいです
福島:「ちょっとぐらい」という支出こそ、ぜひ見直してほしいですね。月々5,000円の支出でも年間では6万円、それが10年続けば60万円になりますから。
大事なのは、夫婦でゴールを共有すること
――家計管理を見直すことは、自分たち夫婦がどのような生活を送りたいかを見つめ直す機会にもなりますね
江尻:貯蓄を何に使うかということでも、価値観はそれぞれに違いますよね。以前お話を伺ったご夫婦に「夫婦で時計が好きで、そのために貯金をしている」という方がいました。一方だけが時計にお金を使っている場合は不満が出るかもしれませんが、夫婦で同じ方向を向いていれば、夫婦の夢を実現する良い使い方だと思います。
福島:夫婦でゴールを共有することが、大事なんですよね。特に30~40代の夫婦の場合は、子どもの教育費や住まいにどうお金をかけるか、価値観が分かれがちな出来事に多く直面します。そういった、夫婦が共通でかかわる部分については、"夫婦の共通認識"をすり合わせていくことが大切です。
月に1回、週に1回など、ゆっくり話し合えるタイミングで、時間を設定して定期的に話しあう習慣をつけていけるといいですね。
福島えみ子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)、1級FP技能士。大学卒業後、銀行を経て法律事務所に勤務。その後女性のマネープラン専門のFP会社に在籍ののちに独立。お金の相談プレイス「リュクスセオリーFPサロン」設立。2016年にマネーディアセオリー株式会社として法人化。著書に『キャッシュレスどんどん得する使い方』(河出書房新社)がある。
江尻尚平
ファイナンシャルプランナー。大学卒業後、大手外資系携帯電話メーカーを経て、大学院へ進み、経営学修士(MBA)を取得。2012年にスマートアイデア株式会社を創業し、代表取締役に就任。家計簿アプリ「おかねレコ」が450万ダウンロードを達成するなど、フィンテック分野に注力した事業を展開している。