FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は、1級FP技能士の資格を持つ早乙女美幸さんが、借家の家賃と夫のカード支出に悩んでいるというひまわりさん(55歳)にアドバイスします。

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◆相談者さんのプロフィール

相談者

相談者 ひまわりさん(仮名)
女性/保育士(パート職)/55歳
愛知県/借家

家族構成

夫(大学教員/63歳)、子ども(21歳、大学生、同居)、子ども(高校3年生、同居)

◆お悩み

現在の借家に住んで17年、近所の環境がよく住み続けましたが、この間の家賃を考えると戸建てが買えたのでは? と思い怖くなります…が、夫は家を持つことに全く関心がありません。さらに自分の研究には自分の支出も惜しまないので、いつもカードの請求が恐怖です…。

子どもの大学費用が出せないと訴えても、研究に必要な支出だから、それも含めてやりくりする必要があるというばかりです。

もうすぐ大学生が2人となり、2人分の学費がまかなえるか心配ですが、ちょうど夫が大学を移り、多少収入が上がります。また年金も一部始まりました。ただ夫婦ともに、国民年金の加入期間が長くなく、老後が不安です。

今後今の借家に住み続けるのでいいのか、車を子どもたちに譲って3台にしてもいいか考えています。

夫にはなるべく長く働いてほしいと思っています。私もパートの時間を増やさないといけないのか、手遅れにならないうちに考えたいと思います。

◆ひまわりさんの家計収支

収入

支出

現在の貯蓄額

年間の収入は月間66万円、支出は56万円、相談時点の貯蓄額は54万円ですが今後は月平均で10万円の貯蓄が可能になります。

◆FPからのアドバイス

アドバイス1: 家計の交通整理で70歳定年までに1,600万円の貯蓄増を目指す

長年、今月の支払いができるか悩みながら生活してこられたそうですね。夫の研究が維持できて収入増につながったのは、ある意味相談者さんの功績ですね。お疲れ様でした! このタイミングであと少しがんばって、一気に老後の備えを増やしたいですね。

今年からの収支は月間で10万円の黒字と余裕が生まれました。しかし、この収入が約束されるのは70歳の定年までの8年間だけです。夫には以降も研究者の強みを生かして長く収入を得てもらうとしても、この8年間でできるだけ貯蓄額を増やすことが大事ですね。

そのためには、懸案の「研究関連費」を家計と切り分けて見える化しましょう。専用のクレジットカードを用意して家計と別にし、さらに夫の個人的な支出とも分けてもらいましょう。研究費の最終的な負担額をはっきりさせて、10%削減を目標にしてもらいます。

生活費も全体的に削減できそうです。お子さんも大きいので、通信費・趣味娯楽費は家計でなく、個人の負担にできればやはり10%ほどは削減できそうです。

生命保険に関しては、お子さんに死亡・医療保険をかけていますが、必要性は低く、解約して保険料分(年17万円)を貯蓄に回しましょう。夫の定期付き終身保険も定期部分があと2年で終了し、今のご家族の状況に合っていません。終身死亡保障のみ残し、特約を外すことで浮いた保険料(年額29万円)から、不足分の死亡保障に加入しましょう。勤務先の私学共済の保障も含め、割安なものから検討することで、保障を充実させた後でも約20万円の節約になる見込みです。

また前年の車の購入には残価設定型クレジットを利用していらっしゃいます。車は長く乗るつもりなら、残価設定型は避けましょう。次の購入は5年後以降であれば充分現金で購入可能です。けれども、3台所有はランニングコストも考えてもう少し先、お子さんたちが社会人になってからにしましょう。

以上の見直しの中から70歳までに毎月7万円の貯蓄上乗せができると、トータルで1,630万円になり、老後資金の寿命を少しでも延ばせることになります。

アドバイス2: 妻の社会保険加入と、夫の生涯現役で年金不足を補う

老後も長く働くことで、収入も確保できるほか、年金額も増えていきます。夫婦ともに国民年金の加入期間が短いということですが、60歳以降も厚生年金に加入して働くことで、厚生年金額だけでなく、国民年金の受給額も増やせます。

相談者さんは厚生年金の加入歴がなく、このままだと老齢年金の受給額は年60万円ほどだと思われます。なるべく早く厚生年金に加入する働き方に変えて、60歳~65歳にも加入を続ける方がメリットが多いです。条件次第では週20時間の働き方で加入できます。

アドバイス3: 今後の住まいは家族会議と実家の活用をふまえて

現在の住居費は、これまでの家計サイズに比べて負担が大きかったと言えそうですね。すぐにでも削減したいところですが、お子さんたちの気持ちも気になりますね。現在の借家に住み続けるなら、ぜひ家賃の減額交渉をしてみましょう。そしてお子さんたちの巣立ち具合で住み替えを検討しましょう。合わせてそれぞれの実家に住めるのか、また社宅付きの大学の検討など、広く考えることで老後の住居費負担を少しでも軽くしていきましょう。