我が家の食料自給率をアップする

熱帯夜が終わったと思ったら、あっと言う間に秋らしくなってしまいました。ベランダの野菜も元気が無く、キュウリは3株で14本の収穫に終わり、ナスはやっと実がつき始めた状態で、夏らしい時間が短かったように思えます。筆者の住む練馬のデータを調べると、4~7月の日照時間は昨年対比92.9%、5~7月では80.3%と圧倒的に短く、夏野菜の育ちが悪かったのも頷けます。

さて、6月の特集で紹介したLED照明の効果を、小松菜での実験結果を報告しましょう。写真は左が7月、右は8月の上旬に撮影したものです。それぞれ左のポットはLEDのみ、右は基本的に日光+雨の日はLEDを用い、どちらも照射時間は同じにしたものです。結果は、左のポットの方がわずかながらも大きく育ち、LED照明が有効であることが分かりました。使用したLEDは1W(ワット)の赤色パワーLED×6で、植物に最適と言われている660nm(ナノ・メートル)では無く、一般的な625nmです。波長や明るさを工夫しながら、今回は我が家の食料自給率アップに挑戦することにしました。

一般的な赤色LEDでも、曇天続きよりは効果があることが分かった

LEDのキホン

LEDを扱う上で特に覚えておきたいのは、(1)電圧/電流、(2)放熱、(3)波長(色合い)の3つの要素です。まず(1)はLEDごとにかけられる電圧/電流が限られているので、それを超えないように制限しないといけません。もっともポピュラーなのは抵抗と直列につなぐ方法で、1本5~10円程度と安価なのがメリットですが、何オームの抵抗が適切かを自分で算出する必要があり、少々メンドウです。他には定電流ダイオードを用いる方法もありますが、1本20~30円と高価なため、LED数が多い照明には不向きです。

次の放熱は、低発熱と言われているLEDも全く発熱しないわけでは無く、見合った冷却をしておかないと故障したり、寿命が極端に短くなってしまいます。特にパワーLEDは、直径8ミリ程度で5Wクラスの明るさを得られるので、便利な反面、放熱基板やヒートシンク無しでは、あっという間に故障してしまいます。

最後の波長は、植物の成長には赤(660nm)、青(470nm)付近の光が効果的と言われていますので、それに合ったLEDを使用したいところです。青の470nmは一般的なものでOKなものの、赤色LEDは625nm前後が多く、660nm近辺のものは入手しづらいのが現状です。

左からパワーLED、Flux LED、砲弾型。形は異なるが基本構造は同じ

光量も発熱量も多いパワーLED。裏面の金属部分から放熱する

パワーLED用の基板には、放熱性の高いアルミや銅が使われている

市販のLED照明を改造する

LED照明を作ることはさほど難しくありませんが、電源の確保や放熱対策、基板の固定方法など、その後の運用がメンドウです。対して電球型LED照明は、スタンドやソケットで固定しコンセントに差し込むだけで使えるので、これを使わない手はありません。しかしながら使用されている白色LEDには赤の光が含まれていないので、植物育成には期待薄です。白色LEDの光は、実は青で、これが蛍光体に反射して「白色に見える」仕組みになっているのです。そこで白色LEDを赤や青に交換し、100Vで使える植物育成照明を作ってみることにしました。

まずは980円でゲットした「ハロゲンタイプ:LED電球 【白色】 口金:E11 3W」。webの写真で分解しやすそうだったのが選定理由です。1Wの白色パワーLED×3の構成で、肝心のLED基板が取り出せず四苦八苦…。結局、手元にあった別のLED電球と「2個イチ」し、1Wの赤×2+青×1に交換して無理やり完成。放熱面積が少なく、点灯中は結構熱くなりますので、カバーなしで使った方が無難です。

ネジ留め式で分解も簡単。改造してくれと言わんばかりの一品だ

2つ目は「【白色】空冷ファン内蔵スポットライトLED電球:E26」は1,980円也。4つの3W・パワーLEDを、電球内に組み込まれたファンで「強制空冷」する変り種です。全体を覆うプラスチックとレンズの間に精密ドライバを差し込み、隙間を拡げながらレンズを取り外します。その後、固定ネジを外して放熱器を取り出せば、LEDにたどり着きます。楽勝ですね。放熱器の上部にはファンが組み込まれ、下向きの風で冷却する構造はCPUクーラーと同じ。風通しの悪い環境でも安心して使えそうです。

肝心のLEDには、ちょっと半端な656nmの3W・赤色パワーLED×4と交換。1個700円弱と高価でしたが、波長による効果の違いを知るには良さそうです。定番の「固まる放熱用シリコーン」で放熱器に固定し、4つのLEDを直列につなげば完成。レンズは透過性の悪いタイプでしたので、取り外したまま使用することにしました。

ヒートシンクが印象的な強制空冷式。ファンの作動音も静かでgoodです

点灯すると、1W×3の方が照射角が狭く、ピンスポットで照らされているのが分かります。せっかく青と赤の2色を使っているのに、場所によってはどちらか一方だけになってしまいました… レンズを外すと光量が減るものの、2色が混ざり紫っぽくなりましたので、これで良しとしましょう。

対して3W×4は光が拡散し、まんべんなく照らされているのが分かりました。こちらで全体を照らしながら、1W×3で部分的に強化する、なんて使い分けが良さそうです。

狭い範囲に光が集まるスポットライトタイプ。1株ならこれで充分だ

3~4株なら照射角が広いタイプがオススメです

パルス照射で収穫アップを目指す

専門書を読むと赤:青の比率は10:1が良いとか、LEDを高速でOn/Offさせる「パルス照射」が良いなど、有益な情報が満載で、しかもちょっとした工夫で自作できそうです。ただし両方を実現するためにはLEDの数を増やし、パルス用の回路を追加したりと、市販のLED照明では収まりそうにもありません。ユニバーサル基板を使うのも芸がないので、直径165ミリの基板に196個(!)のLEDを実装できる「円形基板 165-196x」を使用し「全部乗せ」照明を作ってみることにしました。これに赤×151、青×15、赤外線×15、紫外線×15のFlux LEDと、1/4Wのチップタイプの制限抵抗を実装します。少々気が遠くなりますが、合計916ヵ所(!)をハンダ付けするだけで、アナタだけのオリジナルLED照明の完成です。

スルーホール加工がなされたしっかりした作りで、1,500円はお買い得です!

パルス照射は200μ(マイクロ)秒、つまり百万分の200秒単位でOn/Offすると効果的とされています。On=200μ秒とOff=200μ秒を合わせて400μ秒、つまり1秒間に2,500回(=2,500Hz)発振すれば良いことが分かります。さほど高い精度も必要ないでしょうから、インバータIC・4069を使い、少ない部品点数で仕上げることにしました。発振周波数は図中のCとRで決まり、1/(2.2×C(F)×R(Ω))で求められます。今回はそれぞれ0.1μFと1.8KΩを使い2,525Hzとしました。ICからはせいぜい100mA程度しか取り出せませんので、196個のLEDを点灯させるのはムリですので、NチャンネルのパワーMOS FETを介して点滅させることにしました。

パワーMOS FETがスイッチの役目を果たし、発振回路に同調してLEDをOn/Offする仕組みだ

配線図はこんな感じ。ハンダ付け箇所も少ないので簡単に作れます

レイアウトを工夫すれば、もっとコンパクトになりそうです

全ての部品を実装し終わったら樹脂製の器に貼り付け、電球スタンドから剥ぎ取ったアームを付けて完成です。連続照射で約1.8A、パルス照射では半分の0.9Aが流れますが、ぼんやりと温かくなる程度なので、特に放熱に気を使う必要もなく一件落着。ちょうどニームの苗を仕入れたところなので、今回作った照明別に成長を比較し、後日レポートします!

アームが無ければ照明とは分からない風体。また得体の知れないモノを作ってしまいました…

露出を落として撮影した様子。暗い部分は赤外線と紫外線だ

LED数にモノを言わせた明るさは、電球タイプの比ではありません!

おまけ

AM8時からPM6時までタイマー制御でLEDを照射。消費電力も表示される便利モノです。