「熊谷まで行ってきてください」

おなじみ編集の千葉さんからの指令だが、今回は内容が盛り沢山なので早速本題に入りたい。取材の舞台は埼玉県北部の熊谷市。そこには週末限定で開放されている倉庫があり、いまでは滅多にお目にかかれないレトロゲームの数々が置かれているという! というわけで噂の「エコープレイランド別館倉庫」にお邪魔してみた。

新宿から快速で約1時間。熊谷にやってまいりました。名物はラグビー。あと今年は日本最高気温の40.9℃を記録

目的地は駅から徒歩2分の熊谷ショッピングセンタービル内にあるということですが……

入るとすでにレトロな雰囲気です。奥の階段を下りたところにゲームセンターと倉庫が

こちらが隣接するゲームセンター「エコープレイランド」

お話をうかがったのは、レトロゲームセンタープロジェクトとして、この「エコープレイランド別館倉庫」で活動するゲームサークル「UGSF-WEST」のみなさん。ところがお会いするなり「じつは来年早々に建物自体が取り壊されるんです」との驚愕のお知らせが。

「元々ここは倉庫で、隣のゲームセンターさんの機械を置いて、壊れたのを修理したりする場所だったんですね。で、ご好意で奥に大型筐体の『ギャラクシアン3』とかを置かせていただいてて、修理しがてら動くものについては、この10月からメンバーが集まれる週末に限って開放しています。遠くは富山や山形から来てくれた人もいます」

「置いてある筐体はメンバーが『置く場所だけあるからとりあえず買っちゃえ』って購入した私物もありますし、旅館やボーリング場から壊れたのを譲ってもらったものもあります。普通のゲームセンターだと新しいゲームを買うとその前のはすぐ処分しちゃうんですけど、地方のホテルなんかには古いゲームがそのまま置かれてたりする場合があるんですね」

「ただ来年1月には建物が取り壊しになるんで、目下移転先を探してます。見つからなければこれが入るだけの倉庫を借りて、とりあえず積み上げちゃう。で、またいい場所が見つかったらそこでできればいいね、っていうそんな状態です」

倉庫の入り口付近はこんな感じ。こちらは主に修理中の筐体

倉庫の奥には主にテーブル筐体のレトロゲームが並べられてます

『パックマン』の純正基盤(左)と、比較用として置かれたコピー品の『パック1』(右)

記念すべきナムコのオリジナルビデオゲーム第1弾『ジービー』(1978年)。ピンボール風ブロック崩しといった内容で、これはテーブルタイプ

2本のレバーが特徴的な日本物産の『クレイジークライマー』(1980年)。折りしもWiiとアーケードでリメイクが予定されている

何しろ20~30年前のものなので、ゲームによってはスタートさせるだけでひと苦労なものも

セガの『チャンピオンベースボール』(1983年)。もちろんナムコの『ファミスタ』よりも前です

コナミの『チェッカーフラッグ』(1988年)。大型筐体をドリームキャスト用のハンドルコントローラーを使って修理したもの

ナムコの『F-1』(左・1976年)と『ポールポジションII』(右・1983年)。ナムコ初のレースゲーム『F-1』はビデオゲーム以前のエレメカと呼ばれるもの

貴重なレトロゲームの散逸を防ぐためにも、広い置き場所に心当たりのある方はぜひとも「UGSF-WEST」までご一報いただきたい。レトロゲームセンタープロジェクトでは、基盤だけでも500タイトルを収集しており、倉庫を見渡すだけでもかなりの数の筐体が置かれているが、まだまだ修理中のものも多そうだ。壊れた筐体の修理と言っても見当がつかないが、どのように行っているのだろうか?

「ブラウン管やプロジェクターがダメになっちゃうのが多いですね。ブラウン管なんかはどうしても焼けちゃったりするんですけど、電子部品は意外と昔のものでも壊れないんですよ。ソフトが入ったボードも意外と大丈夫なことが多いです。あと壊れるのはスイッチ類。どうしても昔のゲーム機は共通規格じゃなくて、それぞれデザインがあって、全部違うレバーとボタンになっているので、写真とかを見てなるべく近いものに合わせて交換したり作ったりしています。基盤を入れ替えるだけで汎用の筐体で遊べるものは、週代わりで何台か入れ替えて出すようにしているんですが、汎用性がないものに関しては筐体ごと残さないとどうしようもないんですね」

倉庫の奥で修理の様子を見せていただいた。こちらが修理前の筐体の中身。なんと言うかまあ、ボロボロです……

こちらが修理したもの。木製の外装と基盤以外はほぼ総入れ替えされている

セガの『タイムトラベラー』(1991年)をパカッと開けたもの。左側のモニターの映像を右側のミラーで反射し、擬似的に立体映像を見せる仕組み。残念ながら動かず

こちらも『タイムトラベラー』の中身。こうしたLDプレイヤーを使った機種は、修理するのにもまず代替機を調達するのが大変とか

置かれているゲームのなかにはメンバーの方が購入したものもあるとのことなので、そちらも見せていただいた。

「これは僕のです」

おお、かっこいい! やはりゲーマーとしては一度は大型筐体を前に「僕のです」と言い切ってみたいものである。クラシックカーやクラシックカメラに熱をあげる年配の紳士と、クラシックな大型筐体を買ってうっかり輸送費に数万円かけてしまうゲーマーの間にいかほどの差があろうか? いや、ない! ちなみに購入価格は『GYNOTAI 技能体』が4万円、『メタルホーク』が10万円、『スターブレード』が15万円とのこと。

メンバー所有のナムコ『スターブレード』(1991年)。凹面鏡が使われているので、プレイヤーじゃない人が横から見ると歪みます

同じくメンバー所有のナムコの『GYNOTAI 技能体』(1996年)。奥の画面にレール上のボールを投げつけ、ミニゲームをこなすことで技・脳・体が測定される

左からレトロゲームセンタープロジェクトの池上さん、伊藤さん、井上さん。それぞれ自前(!)の筐体の前で記念写真

隣のゲームセンターでもレトロゲームが多数稼動中。『ASO』『Mr. Do! VS ユニコーン』『妖怪道中記』『大魔界村』などなど

さて、筐体の購入と言えば、もともとこのサークルは大型シューティングゲーム『ギャラクシアン3』を共同購入するために集ったメンバーによって結成されている。そしてその『ギャラクシアン3』こそが、この「エコープレイランド別館倉庫」の最大の目玉なのである。メンバーの方に「じゃあ、やってみますか」と声をかけていただいたので、緊張しつつ操縦席に向かう。

というわけで次回はバブル期に開発された幻のゲーム、『ギャラクシアン3』がついに登場です!

<※ご注意>
今回取り上げた「エコープレイランド別館倉庫」は2008年1月5日で閉館となります。残りの開放日は2007年12月9日、12月15日、12月30日、2008年1月3日、1月5日の予定です。詳しくはリンク先のブログでご確認ください。また、訪問には個人の有志団体の運営であることへの配慮をお願いします。閉館後のレトロゲームセンタープロジェクトの活動状況は暫定ページでの告知が予定されています。