本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ――。この連載では、松居大悟が、恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわしていきます。今回は『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』著者のジェーン・スーさんと対談してきました。前回の模様はこちら。
<著者プロフィール>
ジェーン・スー
1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家/ラジオパーソナリティー/コラムニスト。音楽クリエイター集団agehaspringsでの作詞家としての活動に加え、TBSラジオ「ザ・トップ5」を始めとしたラジオ番組でパーソナリティーやコメンテーターを務める。『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)が発売中。ブログ『ジェーン・スーは日本人です。』
付き合うのに告白って必要?
松居大悟さん(以下敬称略)「付き合いだすとかって、高校とかだったら告白して『好きです』とか言うっていうことじゃないですか。もう僕は28歳なんですけど、それくらいになるともう今さら言ってどうとかじゃなくなってきてて。付き合うってどこからが付き合うっていうことになるんだろうなあ」
ジェーン・スーさん(以下敬称略)「言ったほうがいいと思いますよ」
松居「好きだとか?」
ジェーン「いや、付き合おうとか。女の人はそれすごい悩んでますよ」
松居「言われたいんですか!? それで重くなったら嫌だなとか思うんですよ」
ジェーン「はあああああ!!!??? 重くしましょうよ、ちゃんと付き合うんだったら。
重くなるのを心配するのは女の人ばかりだと思ってたんで今びっくりしたんですけど、ちゃんと付き合うって伝えるのはコミットメントの意志を明解にするってことじゃないですか結局。そこで契約を交わされなくてやることだけやっちゃって悩んでる女の人はけっこういますけど」
グレーな恋愛関係は告白するべき?
松居「でも五分五分な戦いってあるじゃないですか」
ジェーン「えっ」
松居「言ったら壊れてしまうグレーの感じでいってるやつ」
ジェーン「男女に関係なく、言ったら壊れちゃうようなグレーなやつっていうのはそれを楽しむのがいいと思うので、そしたら言わないほうがいいと思います。後々自分の思い出として咀嚼するしかそれは役に立たないもので……。
本当に付き合いたいんだったら付き合いたいって言ったほうがいいと思う。『付き合うとかじゃないんだよね』とか言う女は都合よく男をキープしてるだけなんで。男だってそうじゃないですか。いい感じだったのに、付き合おうって言われたらきついんだよねっていう人は、相手を独占したいほどは好きじゃないってことじゃないですか」
松居「そうですね」
恋愛をうまくやるには変わったほうがいい?
松居「僕は変わったほうがいいんですかね……」
ジェーン「いや、変われないでしょう」
松居「いや変わりますよ! 僕ね、ほんとに好きな人とかにお酒やめろとか言われたらたぶんすぐやめますよ、ほんとにいろいろ。引越してとか言われたらすぐ引っ越すし」
ジェーン「自分はそんな簡単に変われるもんじゃないっていうのを、思い知ったほうがいいと思いますよ。恋愛ぐらいじゃ人間変わらないと思いますよ」
松居「なんかでもこの本(『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』)読んでたら、『あんた変わりなさいよこれじゃだめよ』って言われてる気がして」
ジェーン「それはその人次第でしょう。何が言いたかったかって、『これをやっちゃだめよ』っていう恋愛本を書いたつもりはさらさらなくて、状況がわからないと態度が決められないじゃないですか。今の未婚が置かれている状況の一例を伝えられればなと思って。そこから先の態度は自分で決めてくれって話で」
松居「男バージョンのこういうのがあったら自分はどうするんだろうなって思いました」
ジェーン「男の人こういうのしないからね。恋愛本ってほとんどないじゃないですか男の人用の。だから状況が変わっても発展しないんじゃないの考え方が、って気もしなくもないんですけど」
松居「しないですね。結果しか話さないですからね。相談してても、最終的には『もういっちゃえよ』しかない。いっちゃえよ、って言うことが楽しいみたいな」
恋愛の悩みは自分の性格の反射
ジェーン「どうしたいんですか結局」
松居「変わらないと幸せな恋愛できないんじゃないかと。あんまり今までうまいことやれてきてなかったんですよね。どうしたらいい感じの人といい感じになるんだろうって」
ジェーン「なんかね、恋愛相談を今ネットでやってるんですけど、最終的にみんな自分の話になっちゃうんですよ。結局、恋愛って相手あってのことなんですけど恋愛の悩みってほとんどその人の問題だなっていうのがすごくあって。
恋愛の悩みは自分の性格の反射っていうのがすごいあると思う。その人がどこに自分のコンプレックスを持ってるか、考え方がわかる。だから人と付き合うことで、自分を知るってことだと思うんですけど。逆に今までの恋愛で、自分はこういう人間だなって思ったりする?」
自分のことばかりで……
松居「やっぱ演出したくなっちゃうんですよ。初めて彼女できた時とか、クリスマスにお台場のヴィーナスフォートのレストラン予約して、プレゼントとかも何あげたらいいかわかんなくて冬ぴあ読んだりして小学校の同級生とかに相談してスタージュエリーだなって言われて買いに行ったりして、渡すタイミングとかも作戦立てて。
さあ行くぞって12月24日に予約してたんですけど、22日にドトールに呼び出されて『好きな人ができました』って。まじかって思って。そのときもなんかみじめにすがりつくのもかっこ悪いなと思ったから、『了解』とか言って、コーヒー一口も飲まずに帰って、翌日になってどうしたらいいかそわそわして、クリスマスがやってくると思って。やばいな本州いたらつらいなと思って浜松町からフェリーに乗ってぶわっと伊豆大島まで逃げて」
ジェーン「狂ってる……!」
松居「一晩過ごしたんですけど、なんかでも今考えたらちょっと自分に酔ってる……」
ジェーン「でしょうね。すごい気取ってるよね」
松居「わりと"自分"だなっていうのがありますね。相手のこととか考えてなかったですもん。予約するとかプレゼントあげるとかもそういうことしちゃってる俺、みたいな。自分のことばっかりなんですよね」
ジェーン「というわけでただいま上映中ですよね」(※映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』)
松居「宣伝ありがとうございます(笑)」
恋愛しても相手を一番にできない
松居「撮影とか稽古とか始まったらそっちに集中したいから。相手もそういうの分かってる、応援してるし、連絡しないみたいな感じで言ってくれて。じゃあ始まりましたってなってちょっとしたら、『元気?』って連絡くるから、それちょっとやめてくれ集中したいって言ったら、メールくらい返してよって言われて、もう思考停止してしまってメールくるたびに削除して」
ジェーン「読みもしないで?」
松居「読みもしないで」
ジェーン「っていう俺に酔ってるんでしょ(笑)」
松居「僕は相手を一番にできないな、仕事が一番になってしまうたちだなって。向こうも自分を一番にしない人だったらうまいこといくんじゃないかと思うんですけど……」
ジェーン「どっちも一番じゃなかったら終わるんじゃないですか。こっちが1カ月だめだったら、相手も1カ月だめだみたいな。年に3回くらいしか会えないってそういう……。まあ松居さんには恋愛でうまくいってほしくないですけどね」
松居「いやいやいやいや」
ジェーン「このままこじらせて、すごいこじらせあげてほしいです」
誕生日には彼女がほしいものを
松居「じゃあ相手の誕生日何するんですか?」
ジェーン「彼女がほしいものをあげればいいじゃないですか。ある人は妻から『私が何をほしいかをわかるくらい、毎日私のことを観察するところからがプレゼントだ』って言われたって。彼女を喜ばすのには俺がやりたいことじゃなくて、彼女が喜ぶことで。結局彼女を喜ばすために俺がやりたいことをやるっていうと、彼女は松居さんの演出する理想の誕生日の台本を読まなきゃいけなくなるんですよ」
松居「うわあ、僕自分の好きなCDとかあげてましたね」
ジェーン「そうそう、結局、俺脚本、俺演出、俺主演の舞台におまえベストアクトレスとして出てこい、ってことじゃないですか。ベスト助演賞として。誕生日に酷ですよね。自分の誕生日に人の台本読まなきゃいけないっていうのは」
松居「それちょっと反省ですね……」
ジェーン「ひとりよがり、ひとり相撲感」
松居「ひとり相撲しかしてなかったですよそう考えると」
ジェーン「私が40歳近くになってようやくあみ出した戦法っていうのが、大切な同性の友達にやらないことは相手にやらないってこと。やっぱり異性を傷つけたり困らせたりしてることってだいたいが大切な友達にやらないことなんですね」
「 こんな演出できる俺すげえ」という壁打ち恋愛
松居「ちょっと難しいのが店員に歌われたときに女の子がうつむいたりするじゃないですか。でもそのうつむいてる感じすごいかわいかったりするんですよね」
ジェーン「あの、プライベートではそのファインダーをはずしたほうがいいですよ。ファインダー越しにすべてを見るのはやめたほうがいいですよほんとに」
松居「あのはずかしがってる感じ……」
ジェーン「完全にカメラ覗いて片目つむってるじゃないですか。そのね、カメラアイはどうにかしたほうがいいと思いますよ。
映画としてはいいんじゃないですか、そのシーンは。女の子がちょっと過剰な誕生日祝いをやられちゃって、男の子はなんかこう鼻フガフガいわせてどうだーみたいになってて、女の子のほうは『もー』とか恥ずかしがりながらも下見てニヤッとしてるみたいな。いや、いい画だと思うんですけど、実際には平たくいえば嫌がることをやっているわけで」
松居「いやね、それは分かるんですよ。だいたいの人は嬉しいわけないって思うんですけど。なんか一週間くらい前からまったくそういう素振りを見せないわけですよ」
ジェーン「でもそんなのバレてるから」
松居「でも普通に祝われるのはいやじゃないですか?」
ジェーン「結局またそこで、はい、ダーン! こんな演出できる俺すげえ、みたいな。それ壁打ち恋愛じゃないですか。壁打ちテニスみたいな」
下の名前で呼べない
松居「結局女の子の下の名前を呼べずに終わったりするんです」
ジェーン「すごいですね、それ」
松居「すごい悩みですね……。なんとかさん、なんとかさん、ってすごい名字で呼んでて、その名字やめて、下の名前で呼んで、とか言われて。ただその下の名前で呼んでって言われた瞬間に下の名前で呼ぶのは負けみたいになるじゃないですか」
ジェーン「いやいや勝ち負けじゃないですから」
松居「だから俺のタイミングで!ってなる」
ジェーン「でた、俺のタイミング。男言うよね俺のタイミングでって。ばかみたい。なんだよ俺のタイミングって……」
松居「じょじょに変えてく、みたいな」
ジェーン「知らねーよ」
松居「じゃあどうしたら……」
ジェーン「いやいや自分で考えすぎ。相手不在ですよ完全に。さっきから話してて完全に相手不在ですよ」
松居「でもメールとか僕めっちゃ返すんですけど。ラリーは僕で終わるみたいな。それは関係ないですか?」
ジェーン「3か月しかもたなくて振られるんでしょ」
松居「……はい」
ジェーン「ということは、相手は『私のこと見てないな』って思ってるってことですよ。恋愛では好きな相手に自分のことを見てほしいっていう思いが強いじゃないですか。恋愛なんてみんなたぶんそうだと思いますけど。自分のことをわかってくれる、自分だけを見てくれるみたいなことが恋愛に求めることの一つであるならば、この人は私のことを見てないなっていう……」
松居「息苦しくなってきました」
(つづく!)
<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団"ゴジゲン"主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。次回監督作は「スイートプールサイド」2014年公開予定。
タイトルイラスト: 石原まこちん