本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ――。この連載では、松居大悟が、恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわしていきます。今回は、演劇ユニット「ブス会*」主宰で『たたかえ! ブス魂』著者、そしてAV監督でもあるペヤンヌマキさんとの対談を振り返る反省コラムをお届けします(対談1回目2回目3回目)。最終回です。

恋愛も連載もむずかしい

むずかしいですね。恋愛って奴はむずかしくて、連載って奴もむずかしいです。恋愛の対談の連載っていうのはむずかしさがタッグを組んで大変なことになるな! この野郎!

ペヤンヌさんはすごく優しくて、同じ立場に立ってお話ししてもらえたので、すごく素直に自分の事が相談できました。ですが、対談回が更新された後、「草食男子の嫌な所が全部詰まってる」「彼女ほしいって言う資格ない」「仮予約ってなんで上から目線だよ」的な批判が飛び交う飛び交う。ちょっと誤解されてる所もあったんですけど訂正なんてできなくて、じっと見届けることしかできませんでした。

こういうの初めてだったので、マジでつらかったですね。つらかったというか、またそういうこと言うと、お前の被害妄想だろこっちの気持ちも考えろと言われかねないのでそういうのじゃなくて……。

対談そのものを批判されると、もう軽い人格否定なので、本当に狂いそうになりますね。いや、実際に狂いました。これなんでしょうね。どう生きてきたからダメだったんですかね。この一連の経験をして、なぜ男性の恋愛指南本がないのかとか、男性の恋愛マスターみたいな人が全く力を持たない、ということがわかる気がしました。

恋愛相談したって、味方なんて一人もできないどころか、敵を増やすばかりです。ここに何を書いても言い返される材料になってしまうのでこの辺で! でもまあ恋愛の企画だしね! 個人的な経験に触れたら許せなくなることもありますよね! 失礼しました!!

「さあハイヒール折れろ」が最終回に

「ありがとうございました。またどこかで」

その矢先ですが、この連載はこの号で終わります。決定事項として伝えられたのですが、衝撃でした。自分で言うのもなんですが、「対談読んでるよ」と言われる機会も多かったし、この連載には手ごたえと安定した居場所のようなものを感じていました。なので、いきなりすぎて整理できなくて……。すぐに電話をしました。部屋だと落ち着かないので、裸足でベランダをウロウロして、気づいたら僕は泣きながら、「少し考え直してくれませんか?」とお願いしていました。

なんかなんとなく、この「さあハイヒール折れろ」で皆様に教えられてきた、恋愛のようだな、と思いました。違うのかもしれませんが、僕から見た景色で言わせてください。

こちらがうまく付き合っている、気持ちを通わせられていると思っていても、「別れよう」と一方的に言われることがあるのかなぁとか。言われた側は、「なんで別れるの?」「うまくいってたじゃん!」と粘るのですが、もちろんそれはふられた側の景色で、ふった側の景色の中には、すでにもう自分の姿はいなくて(それがもう新しい景色を見ているのか、見ていた景色が色あせていたのかはわかりませんが、元いた景色に帰ってくることなんかできなくて)それで「せめて話し合いたかった……」なんて言われても、ふった側からしたら、そういう問題じゃないですもんね。なんだか、そう書いていたらすごく、悔しいけど、納得してきている自分がいます。

今まで恋愛に対して、怖くて自己完結して終わらせてきたのは他でもない自分でした。付き合いたくても、自分が傷つきたくないから、自分から行こうとはしませんでした。

自分の都合ばかりで、相手の気持ちなんて考えてなかったかもしれない。ずっと皆さんに言われてきたことを身を持って感じました。そういう意味では、いままで、自分がしてきたことの痛みを、理屈ではなく感覚で理解できた気がします。

ありがとうございました、またどこかで!

すごく申し訳ないなあ。でもそうやって、新しい恋愛に進んでいくんでしょうね。この「さあハイヒール折れろ」で色んなことを教えてもらいましたし、最後にすごく大切なことを、痛みをもって教えていただきました。半年間という短い期間でしたが、本当に充実した連載でした。自分の価値観がばきばきに折れました。

こんなやつそんなこと言うけど何も変わんねえよ! という方、そうかもしれません。でもこの連載でお世話になった方、応援してくださった方のためにも、いや違いますね、他でもない自分のためにも、これからもがんばろうと思います。

今までありがとうございました。またどこかで!

(連載おしまい!)

(c)Nobuhiko Hikiji

<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団"ゴジゲン"主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。近年はクリープハイプ、大森靖子らアーティストのミュージックビデオも手がける。最新監督作の映画「スイートプールサイド」は全国公開中。

タイトルイラスト: 石原まこちん