「松居さんの雑誌などで話されている恋愛に対する考え方が面白いと思ったので、恋愛がうまくできない人目線のコラムを書きませんか?」というメールがきた。「はい! がんばります! よろしくお願いします!」と返信を送った後、(あ、おれ恋愛うまくできない人目線なのか)と思った。そんなわけで始めてみます。
本当はみんな恋愛なんてしてないんじゃないか?
みんな本当に恋愛なんてしてるのだろうか?
や、これは別にロマンチックな言い方のアレではなく、普通に出来事として、誰がどういう人を好きで、いつ告白したり付き合ったりしてるんだろう。こうして僕がパソコンでYouTubeを見ている間にそんな素敵な時間を過ごしているっていうのだろうか。
でも僕が接する人たちは、接している間はそんな素振り一切見せないから、みんな陰でそういうことをしているということ? ドラマの世界で犯罪が描かれるけど本当は犯罪なんかしてはいけないように、本当は誰も恋愛なんてしてないんじゃないか? 恋愛なんてドラマの中の出来事なんじゃないのか。
じゃないと、え、世界中の人が、僕の知らない間に、素敵な時間を過ごしてるってことになるよ? 誰か恋愛の仕方を教えてくれよ! さぁ前を歩く女性のハイヒールよ折れてくれ! 病院に連れてくから! さぁ! さぁ!!
極端に言えばこんなレベルで僕は恋愛と接している。もう正直、身動きがとれなくなっている。恋愛のやり方がわからない。恋愛迷子だ(書いてはみたけど違うとは思っている)。
女子を好きになっても傷つきたくないから何もできない
中学・高校は山奥の男子校だった。大学に入ってその華やかさに驚いてしまって、毎日図書館の踊り場みたいな所でパンを立ち食いしながらやり過ごしていた。女子と接するたびに好きになるけど、傷つきたくないから何もできない。
大学三年のときに初めてできた彼女は、一か月もたたないうちに別の人と付き合い、そのショックを周りに慰められることで救われた。その後、失恋した男を励ますだけの芝居を作って、自分の気持ちを昇華させて、その勢いで劇団を始めた。
そのせいか、劇団を作った最初の頃は女子が信用できないから、男だけで「モテたい」といいながら女子から逃げ惑う"童貞芝居"をしていた(ネタというか、売りにしていたのはその頃だ)。
その直後「アフロ田中」というひたすら彼女を作ろうとする童貞映画をやって、まとめサイトで「こんなパーマあててる慶応ボーイが童貞のわけがない」と書かれていてパソコンの前で途方に暮れた。
そもそも天然パーマだし、あの大学にいたせいでより屈折してしまったし、でもそれを主張すらしたくもない。アピールなんてしたくない。そんなこと書いたら、その一文がアピールだと思われて、「それネタでしょ、もうやめた方がいいよ」とか言われる。じゃあどうする! 正直どうしたらいいかわからないよ! 酒の肴になるのはもう十分だよ!
「恋愛どこだ……」(イラスト: 松居大悟) |
恋愛のアドバイス、みんな言うことが違うんだ
今まで僕が居酒屋で恋愛のアドバイスをされて、感銘を受けて携帯のメモ帳にいれていることを列挙しておく。
◎相手そのものに興味を持つ
◎話が続かないのは、相手ではなく自分のせい
◎頭をなでて拒否されなかったら大体いける
◎すぐ結果を求めない
◎第三者の目線で告白する
もうゴチャゴチャ過ぎてわからない。みんな言うことが違うんだ。というか頭をなでられるぐらいの甲斐性があったら、今こんなことになっていない。「本当に童貞なんですか?」はもう1000回は聞かれた(ここで、本当にそうであるかどうかの言及はしない。それは概念の違いだと思うからだ)。
「モテそうなのにね」と言われても、「まぁ私は興味ないですけど(笑)」のダブルミーニングにしか聞こえないから傷つく。そんなことを言う余裕があるんだろ馬鹿野郎(でもそれも「一概には言えないよ!」とか言われてまた悩む)。
恋愛も、女性も、もっと知りたい
本当のことを知りたいのである。恋愛のことももちろんだけど、女性のことをもっと知りたいのだ。
でも考えすぎかもしれないけど自分のこの演出家的な立場だと、もうカッコ悪いことは言えない。それでどんどん、本当に恥ずかしいことは話せず、本当に恥ずかしいことは聞けなくなっていく。そうして女性と正面から恋愛の話をするのは怖くて避けてきた。
だがしなければならない。するのだ。これはチャンスなのだ。このコラムを利用するのだ。なので、これを読んでいるあなたも、このコラムで恥ずかしい自分に向き合って、恋愛のすばらしさを見つけて、恋したくなったらいいですね。めざせ結婚ということで。タイトルはもちろんこれしかないですね。
さあハイヒール折れろ~こんな対談するんじゃなかった~
これは自分から何も行動せずに奇跡にすがる僕と、様々な恋愛猛者の女性たちと熱き激論をかわす連載です。週刊連載です。自信はないです。よろしくお願いします。
<著者プロフィール>
松居大悟
1985年11月2日生、福岡県出身。劇作家、演出家、俳優。劇団"ゴジゲン"主宰、他プロデュース公演に東京グローブ座プロデュース「トラストいかねぇ」(作・演出)、青山円劇カウンシル#5「リリオム」(脚色・演出)がある。演劇のみならず映像作品も手がけ、主な作品としてNHK「ふたつのスピカ」脚本、映画監督作品「アフロ田中」、「男子高校生の日常」、「自分の事ばかりで情けなくなるよ」。次回監督作は「スイートプールサイド」2014年公開予定。
タイトルイラスト: 石原まこちん