皆さんはじめまして! 僕は、"たらおじさん"こと外山たらです。もともとはハーブの専門家ですが、農薬を使わない野菜作りにハーブが役立つということを英国の専門書で知り、それ以来20数年「コンパニオンプランツによる野菜の無農薬栽培」の研究に取り組んでいます。

現在は東京都板橋区西台にある‘ハーブ&おいしい野菜塾’の塾長として、都会でもできるハーブ & 野菜作りを塾生たちに教えています。この塾は約1,000平方メートルの敷地にコンピューター制御のグリーンハウスと圃場を持ち、ここで採れた新鮮な野菜を使ったレストランを併設しています。レストランは大人気でいつも大入り満員です。

塾にはいわゆる団塊の世代といわれる定年を迎える方々や、将来自給自足の生活を送りたいという20代から50代までの男女が楽しくハーブ & 野菜作りの勉強に取り組んでいます。

ドイツはクラインガルテン(市民農園)の先進国で、ドイツの野菜需要の30%を市民農園がまかなっているとのことです。日本にも市民農園はありますが、その生産量は国の野菜需要の0.0?%ではないかと想像されます。自分や家族のために、農薬を使わない清潔で新鮮な野菜を作るというのが、ドイツのクラインガルテンが発展した理由ではないかと思われます。

ハーブ&おいしい野菜塾

1962年、レイチェルカーソンの『沈黙の春』が提起した農薬のおそろしさ……。あの時代に比べ現在の農薬は、残存性はほとんどなく、人体に与える影響は大幅に軽減されたといわれています。しかし、環境ホルモンなど化学薬品の影響を疑える問題もでてきています。できれば我々も農薬を使わない野菜作りに取り組みたいものです。しかし正直なところ、大規模農業で無農薬栽培は不可能です。今すぐ世界中で農薬使用を止めたら、何十億という人々が餓死するでしょう。

ただし、"たらおじさん流・野菜栽培"なら農薬を使わない野菜作りが可能です。何故でしょう? 今、スーパーの店頭に並ぶ野菜は、ほとんどの場合、同じ畑で一種類の野菜を大量栽培します。その理由は植え付けから収穫まで、耕作機械を使いやすいようにまっすぐ植えるなど合理性を追求しているからです。このような栽培方法は、本来自然がもつ摂理に逆らっており、バランスがよくありません。自然の森や林、草原では、様々な動植物が共生し、生態系のバランスを保っています。生態系が安定した自然では、特定の植物が全滅するような病害虫の被害はほとんどありません。なんらかの外的要因によってバランスが崩れない限り、病害虫の大量発生は起きないのです。

前述した「コンパニオンプランツによる野菜の無農薬栽培」は、このような自然のバランスを利用します。農薬を使わないで野菜を作るとなると、病害虫を防いだり、雑草取りなど非常に手間がかかります。野菜と一緒にコンパニオンプランツを混植すると、病害虫がつきにくくなったり、丈夫になったりして、管理の手間もはぶくことが可能です。

このようなコンパニオンプランツなどの栽培方法を中心に、今回より30回のシリーズで「たらおじさんの野菜・ハーブ作り入門」を連載します。都会ではいきなり市民農園や畑を手に入れようと思ってもすぐには難しいのが現状です。そこで、まずは皆さんのマンションのベランダや小さな庭でもできるプランター栽培に取り組んでいただきます。ベランダでもトマトやナス、キュウリ、レタス、ルッコラ、根菜の大根、ニンジン、はてはジャガイモまで収穫することが可能です。

嘘か誠か……? やってみてのお楽しみです。それでは次回「トマトとバジルのおいしい関係」…をご覧下さい。

イラスト:押金美和

たらおじさんのプロフィール

1945年 東京生まれ。学習院大学卒業後、米国留学し、ハーブと出会う。日本特産農産物協会認定ハーブマイスター、NPO日本コミュニティーガーデニング協会会長、NPOジャパンハーブソサエティー顧問、グリーンアドバイザー東京副会長など 1995年、夫人である外山道子氏と共に"ハーブとアートのラテラ塾"を東京・青山に設立。NPOジャパンハーブソサエティー認定ハーブインストラクター養成上級認定校としてハーブインストラクターの養成に努めている。 2005年4月東京・西台に創立した"ハーブ&おいしい野菜塾"の塾長に就任、市民農園の発展を願って「ハーブ&野菜栽培技能士」「園芸指導員」の養成を行っている。またNPO日本コミュニティーガーデニング協会の会長として小学校の総合学習や公開講座を通じて「環境教育支援活動」を全国展開している。 著書に「やすらぎのハーブクラフト」(世界文化社)、「ハーブのレシピ春夏秋冬」(実業乃日本社)、「感じるハーブ」(EH春潮社)、「有機・無農薬栽培の野菜づくり」(ブティック社)など