では、人間は何歳まで生きることができるのでしょうか? 毎年発表される「平均寿命」は、メディアはじめ社会の話題にのぼります。厚生労働省が発表した最新データ「2016年の日本人の平均寿命」では、男性が80.98歳、女性が87.14歳で過去最高、男女ともに香港に次いで世界2位の長寿国となっています。

「平均寿命」はよく耳にする言葉ですが、実は「その年に生まれた0歳児が平均で何年生きられるか? 」を意味する指標で、現在50歳の人がこの先30~35年、75歳の人があと10年~15年しか生きられないということではありません。

日本をはじめとする先進国では、「人生80年」を超える方が増えています。医療の進歩が長寿に貢献しているとしても、この数字は動物と比べると長生きなのでしょうか?

実際に比較してみましょう。例えば、人間に身近な存在である犬の寿命は約10~15年、猫は15年前後で短いです。ただし、自然界で生きる象は50~70年、オランウータンは30~50年、亀やワニでは80年を超える個体や150年以上生きるクジラもいるとされています。

自然界に生きる野生動物は正確な年齢が測定できないうえ、争いやケガ、病気で静かに死んでいく個体の方が圧倒的に多いことは間違いないでしょう。単に結果として長生きした個体だけが残っている可能性も否定はできません。

それでも人間や飼育動物と違い、生活環境も厳しく、医療や医学技術の恩恵を受けられない野生動物が、なぜ長生きできるのか? はっきりしたことはわかりません。人間は多くの動物と比較すれば、一般的には長生きであっても、必ずしも「最長寿」という訳ではないようです。

世界最高齢は何歳?

今年、「世界最高齢」と言われていたインドネシア人のムバ・ゴトさんが146歳で死去しました。にわかには信じがたい年齢ですが、ジャワ州スラゲン市の行政当局から「認定」はされています。

それまでの最高齢は、1997年8月4日に122歳で死亡した、フランス人女性のジャン・ルイーズ・カルマンさんが記録として残されています。85歳でフェンシングをはじめ、100歳でも自転車に乗っていたそうです。

100歳を超えても、なお元気で生きる人はいます。医学的には、人間の寿命は、おおむね120歳程度とされています。日本で100歳を超える方(百寿者)は1963年時点では153人でしたが、2015年には6万1,568人と、約50年間で400倍以上も増加しています。

アンチエイジングを語るうえでは、「物体における死」の問題を切り離すことはできず、「年齢を重ねること」や「寿命」について今回は触れました。次回からは「アンチエイジングとは何か」を紹介していこうと思います。

※写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: 倉田大輔(くらた だいすけ)

日本抗加齢医学会 専門医、日本旅行医学会 認定医、日本温泉気候物理学会 温泉療法医。

日本大学医学部卒業後に、形成外科・救急医療などを研鑚。2007年に若返り医療や海外渡航医療を行う池袋さくらクリニックを開設。「お肌やアンチエイジング」や「歴史と健康」などの講演やメディア出演。海上保安庁が行う海の安全推進活動への執筆協力や「医学や健康・美容の視点」から地域資源を紹介する『人生に効く”美・食・宿”』を執筆。東京商工会議所 青年部 理事。