FXだけでなく、CFDやバイナリーオプションなど、個人投資家にとって使いやすく、かつ分かりやすい投資商品を次々にリリースしているFXオンライン・ ジャパン。そのオフィスが、汐留の高層ビル街に移転して、新しい一歩を踏み出しました。今回は同社取締役会長ジェームズ・ダラス・ガウ氏 に同社の歴史についてお伺いしました。

聞き手 : そもそもFXのビジネスを始めたのは、どういうきっかけだったのですか?

ガウ : FXオンライン・ジャパンを立ち上げたのは、ちょうど今から8年前のことです。2002年12月に、資本金1,000万円からスタートさせました。私も、共同設立者のトニーも、もともと金融のバックグラウンドを持っておりましたので、この分野で新しいビジネスを立ち上げようというのは、とても自然な流れだったと思います。

ただ、もともとは機関投資家向けの債券ブローキングビジネスや、TOPIX先物のトレーダーなどをやっていたので、個人向けビジネスとは無縁だったのは事実ですが、だからこそプロのトレーダーに比べて、個人トレーダーが非常に不利な条件でトレードをしていることに気づいたともいえるでしょう。

聞き手 : 設立当初は苦労されましたか?

ガウ : そうですね。ちょうどFXが日本国内で広まり始めた時期ですし、その頃はあまりお行儀の良くない会社もたくさんありました。現在、FX会社は金融庁の監督下にありますが、当時はまだ監督官庁がなく、誰でもFX会社を設立できる時代でした。300社、400社というFX会社が乱立している状態でしたし、電話で積極的に勧誘しているFX会社もありました。

正直、その頃のFX会社は、世間的にもイメージが良くなかったので、ビジネスを広げていくうえでの厳しさはありました。ただ、一方で日本のマーケットはかなりポテンシャルが高いということも分かっていました。

何しろ、当時のFX会社は、今に比べるとかなり高めの手数料、およびスプレッドを取っていましたから、海外のシステムを日本向けにローカライズして提供すれば、きっとコスト競争という点で十分に優位性があると思っていました。

聞き手 : 業界のなかでも真っ先に手数料の無料化を実現していますね。

ガウ : ええ。最初は海外のFX会社のエージェントとして、あくまでも仲介ビジネスだけを行っていたのですが、2005年からは仲介ビジネスではなく、自社で顧客の注文を受ける、今の形のビジネスに発展させました。ですから、ここからが本当の意味で、FXオンライン・ジャパンのビジネスがスタートしたということになります。

真っ先に行ったのは手数料の引き下げでした。2005年2月から、取引手数料無料サービスを開始しています。

取引手数料を無料にしたのは、日本のFX会社のなかで初めてです。追随するFX会社が出てきたのが、それから7カ月後のことでした。そして、2007年6月には、米ドル/円をはじめとする11通貨ペアのスプレッド引き下げを、2009年10月には主要5通貨ペアの「スプレッド固定」サービス開始しました。。取引手数料をはじめとして、コスト引き下げ競争が激しい現在でも、当社のローコストは、業界内でもトップクラスです。

聞き手 : 日本国内でFXビジネスを広げていくにあたって、どのような点を重視しましたか?

ガウ : ローコスト化以外にも、いろいろな工夫をしましたよ。ただ、なかでも一番重視したことは、やはり透明性が高く、常にお客様に対して正直な対応をしていこうということですね。

とにかく、FX会社のなかには、お客様をお客様とも思っていない、とにかく自分たちが手数料を稼げればそれで良い、お客様が大きな損をして今後、取引の継続が困難になっても、また新しいお客様が入ってくるからいいやというような、安易な考えのところが少なくありませんでした。ひどい会社になると、お客様が発注したレートをわざとずらして、自分たちにとって有利な条件で取引を成立させるといったところもあったくらいです。こういったトリックを極力排する。そうすることで、お客様からの信頼を勝ち得る。それをまず重視しましたね。

聞き手 : これからも顧客優位のビジネス展開には変わりがないということですね。

ガウ : そうですね。やはりFXのビジネスというのは、お客様があってのものですから。IGグループでは投資をするところが、恐らく他のFX会社と大きく違うと思います。

特にここ最近は、広告に多大なお金をかけているようなFX会社も結構見受けられます。でも、いくら広告にお金をかけたとしても、実際に利用してくださるお客様からすれば、何のメリットも得られません。

それよりも大事なことは、やはりサービス強化に投資を行うことです。トレードシステムもそうですし、新商品の開発もそうです。素早く、正確に約定できるようなシステムの構築とその改善は何よりも重要です。あまり目立たない部分ではありますが、使っていただいているうちに、徐々にその意味がお分かりいただけると思います。

顧客満足度を高めること。それが弊社にとって一番重要なミッションだと考えています。これからレバレッジ規制が行われ、FX業界にも逆風が吹くなどといわれていますが、お客様に満足いただけるサービスを提供し続けていけば、十分に勝算はあると考えています。

聞き手 : 2008年にはイギリスのIGグループと資本提携を結びました。その狙いは?

ガウ : IGグループの創業は1974年と古く、その株式はロンドン証券取引所に上場されています。FXやCFDのリテール・プロバイダーであり、世界中のさまざまな金融商品のトレードを行っています。

FXオンライン・ジャパンは2008年にIGグループと資本提携を結びましたが、これによってCFDをはじめとする、新しい金融商品を扱えるようになりました。IGグループは、イギリスのほか、オーストラリア、米国、シンガポールなど世界8カ国で展開していましたが、当時はまだ日本には参入していませんでした。そこで、CFDも含めて商品の拡大を狙っていたFXオンライン・ジャパンと協力して、日本市場を育てていこうという話になったのです。

聞き手 : これから、どういう戦略のもとにビジネスを展開していく予定ですか?

ガウ : まずはIGグループとの提携を行ったわけですから、CFDをはじめとして、より幅広い商品を提供していこうと考えています。

ただ、商品を広げるだけではなく、投資家に対する啓蒙も必要でしょうね。やはり分からないものに手を出すのは危険ですし、損するリスクも高まりますから、私どもは投資家に対する啓蒙活動もきちんと行っていく予定です。以前、このコーナーでも触れた「トレードセンス」というカリキュラムなどは、まさにそのために作られたものといっても良いでしょう。

2点目としては、FXのマーケットシェアを広げていくこと。これについてはリアルスプレッドを、より多くの人たちに認知してもらうことが大事だと考えています。リアルスプレッドというのは、「狭いスプレッド」と「高い約定率」を併せ持ったスプレッドのことを言います。FX業者のなかにはマーケットが荒れるとスプレッドを大きく広げたり、あるいは約定そのものが出来なくなったりするケースが見られますが、FXオンライン・ジャパンは、常に狭いスプレッドと高い約定率を実現することによって、安定した取引環境を提供するように心がけていきます。

そして3点目は顧客からの信頼感を得ることですね。8月からレバレッジ規制が行われますが、そうなると、今まで複数口座を開いて、A社では情報収集、B社でレバレッジを高めたトレードを行うといったような使い分けをしていた投資家も、徐々に口座数を減らすなど見直しを進めていくことになるでしょう。そうなった時に選ばれるFX会社にならなければなりません。そのためにも、顧客から高い信用が得られるように努力する必要があります。

聞き手 : オリコンの顧客満足度でも高い評価を得ていらっしゃいますね。

おかげさまで。顧客満足度で高い評価を得られた理由は、やはりリアルスプレッドなど、顧客にとって有利な投資環境を揃えたことが大きいと思います。

当社のリアルスプレッドは、投資家にとって非常に魅力的な取引条件だと思います。同業者比較で言うと、当社よりもスプレッドの狭いFX会社は確かに存在します。たとえば当社のスプレッドはドル/円の通常時で0.9の固定ですが、なかには0.7の固定、あるいは原則0.5というところもあります。

傾向としては、低スプレッドの業者ほど、約定率が大きく低下しているようです。当社の約定率は99.0%ですが、0.7固定を採用しているFX会社の約定率は74.9%、原則0.5を提示しているFX会社の約定率は74.1%ほどです。

つまり、あまりにも顧客にとって有利な条件を提示してしまうと、FX会社にとっては不利なビジネス条件になってしまうため、約定させないという事態が生じてしまいがちです。投資家に対して有利な条件を提示しつつ、会社の経営が維持できるような状態が望ましいわけです。したがって、あまりにも投資家にとって有利な条件のFX会社には、どこかに落とし穴があるということなのかも知れません。

聞き手 : 提供している商品も幅広いですね。

ガウ : 多くのFX会社は、基本的にFXのみの取扱ですが、当社の場合、創業当時からいろいろな商品を扱っていこうと考えていました。それが、IGグループとの業務提携によって、一気に進んできたわけです。

今ではFXだけでなく、CFDやバイナリーオプションといった商品も扱っています。特にCFDは、世界中の株価指数、株式の個別銘柄、債券、商品(コモディティ)などに分散投資できるツールです。現在、7000以上の銘柄を取り揃えているので、ほとんどの投資対象をカバーできます。今後も、投資家の利便性を第一に考えて、さまざまな投資商品のラインナップを揃えていきたいと考えています。