FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「リーマンショックのインパクト」を解説します。
前回も書いたように、2008年のリーマン・ショックは、1930年代に起こった大恐慌以来の世界経済の危機という意味での「100年に一度の危機」、そのきっかけになった出来事でした。
もしそうであれば、「リーマン・ショック発の世界経済危機」クラスは、100年先はともかく、この先数十年は起こらないと思いきや、まだリーマン・ショックから10年ほどしか経っていないのに、2020年には「リーマン・ショック発の世界経済危機」をも上回りそうなコロナ・ショックという激震が走りました。
そこで今回は、コロナ・ショックの今後の経済的インパクトを考える参考として、リーマン・ショックの経済的インパクトを見てみたいと思います。
リーマン・ショックで起こった雇用減、株安、円高とは?
<失業>
前回も書いたように、リーマン・ブラザーズが突然破綻した2008年9月の米国のNFP(非農業部門雇用者数)は30万人の大幅減となりました。すでに、2008年1月からNFPは減少が続き、8月までに100万人以上の減少となっていましたが、そのペースがリーマン・ショックで跳ね上がることとなったのです。結果的に、リーマン・ブラザーズ破綻から1年でNFP減少は約700万人になりました。
これが、「100年に一度の危機」とされた「リーマン・ショック発の世界経済危機」における米国の雇用悪化でした。コロナ・ショックでは、それが表面化した2020年3月に、早速NFPは70万人の激減となりました。リーマン・ショックとの違いは沢山あるものの、最初からいかにインパクトの大きい数字だったかは分かるでしょう。
<株暴落>
NYダウは、リーマン・ブラザーズ破綻前の2008年10月初めには1万1,500ドル程度でした。それが、リーマン・ショックの中2009年3月にかけて6,500ドル程度まで一段安に向かったのでした。最大下落率は4割以上となりました。
さて、コロナ・ショックが拡大する前、NYダウは2020年2月に2万9,500ドル程度の最高値を記録しました。ところが、3月には一気に1万8,000ドル割れとなり、最大下落率は早速4割にも達したのです。リーマン・ショックの株安をほんの1カ月程度でやったのだから、やっぱり凄いですよね。
<円高・米ドル安>
リーマン・ショック前、2008年3月に100円割れとなった米ドル/円でしたが、8月には110円まで戻しました。それから、リーマン・ショックで下落再燃となると、2009年1月には87円まで下落したのです。その意味では、リーマン・ショックでの最大下落率は2割程度といった計算になるでしょう。
さて、コロナ・ショックが急拡大する中、米ドル/円は2月の112円から、一時はあっという間に101円まで、ざっと1割の暴落となりました。しかしその後は、リーマン・ショックではあまり記憶にない、「有事の米ドル買い」が広がる場面もありました。
「有事の米ドル買い」とは、昔からある言葉ですが、むしろ近年はあまり聞かなくなっていました。そんな言葉を引っ張り出す必要があるほど、コロナ・ショックは普通の「有事」を超えて、「さすがの基軸通貨」の米ドルが必要とされるほどの「超有事」ということなのでしょうか。いろいろと考えることが多いですよね。