FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。今回は「リーマンショック」を解説します。

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さて、「リーマン・ショック編」は、これまで主にリーマン・ショック「最悪の日」となった2008年10月の出来事を説明してきました。2008年10月に、記録的なリスクオフの株安、円高が起こり、それはFX(外国為替証拠金取引)のルール見直しをもたらすことにもなったということです。

ただ、この株安・円高は、リーマン・ショックから始まったわけではありませんでした。株安・円高となっており、リーマン・ショックすなわち大手米系投資銀行だったリーマン・ブラザーズの突然の経営破綻をきっかけに、リスクオフの株安、円高は加速したということだったのです。

リーマン・ショックも含めたこの一連の株安・円高、リスクオフの動きは、信用バブル崩壊、または世界金融危機などと呼ばれます。ただ、信用バブル崩壊より、リーマン・ショックという言葉の方が有名な気がします。

とりわけ、2020年に入り「コロナ・ショック」が急拡大すると、「信用バブル崩壊以来」ではなく「リーマン・ショック以来」といった表現になります。なぜリーマン・ショックはこれほど有名なのでしょうか。そしてそれは、どんな出来事だったのでしょうか。それについて、少し書いてみたいと思います。

リーマン・ショック前後の為替と株の違い

これまで、トランプ・ラリーとアベノミクスについて書いてきましたが(番外編除く)、この2つは、それぞれの継続期間は違いますが、歴史的なリスクオン(株式や投資信託などのリスク資産を選好する相場)がまさにそこから始まるというものでした。

「リーマン・ショック編」がそれらと違うのは、リスクオンではなくリスクオフ(リスク資産が売られる相場)だということです。そのリスクオフの株安・円高は、大手米系投資銀行だったリーマン・ブラザーズの経営破綻といった「サプライズ」の前から起こっていたのです

このリーマン・ブラザーズ破綻前から起こっていたリスクオフと、破綻を受けてのリスクオフであるリーマン・ショックとを含めて、「信用バブル(破裂)」と呼ぶのが一般的だと思います。外国では、「世界金融危機(Global Financial Crisis)」との呼び方もあるようです。

まどろっこしい言い方をしていますが、リーマン・ショックとは、信用バブル崩壊、または世界金融危機と呼ばれた歴史の一局面であり、そしてそのクライマックスということになると思います。

では、リーマン・ショックを含む、信用バブル崩壊、世界金融危機とはどんなものだったのでしょうか。

分かりやすいように主な出来事を図表にまとめました(これまでのトランプ・ラリーとかアベノミクスと違うのだから、「リーマン前」も説明が必要だろうということです)。

  • 【図表】世界金融危機(Global Financial Crisis)「信用バブル崩壊」(出所:各種資料をもとにマネックス証券が作成)

    【図表】世界金融危機(Global Financial Crisis)「信用バブル崩壊」(出所:各種資料をもとにマネックス証券が作成)

これらをVTRの「早送り」風に説明すると、2007年8月の「パリバ・ショック」で信用バブル崩壊のリスクが表面化し、2008年3月「ベアー・スターンズ・ショック」を経て、同年9月のリーマン・ブラザーズ破綻をきっかけに一気にクライマックスに向かったということです。

では、パリバ・ショックとは、そしてベアー・スターンズ・ショックとはどんなものだったのでしょうか。その時(特にこのコラムは、「そうだったのか!FX大相場の真実」ですから)、為替相場はどう動いたのでしょうか。

先に言っておきますが、為替と株では、リーマン・ショック前後の動きには差がありました。為替、例えば米ドル/円は、ざっくり説明すると、一連の信用バブル崩壊局面においてリーマン・ショックまでには半分下がり、そして「リーマン後」に残りの半分下がったといった感じでした。一方で株は、例えば米国株指標のNYダウは、まさに「リーマン後」に底割れの様相となったのでした。

一連の出来事は、基本的には、信用バブル崩壊、または世界金融危機と呼ばれます。しかし、リーマン・ショックという表現が圧倒的によく知られるようになったのは、このような株安拡大の影響が大きかったのでしょう。まさに、この「リーマン後」から、「100年に一度の危機」といった表現が広がったのです。