いよいよ12月。2008年のトレード成果はいかがだっただろうか。運良く(今年の相場展開だとまさに運良くではないか? )利益が出そうだという人の場合は、今年1月1日から12月31日までのトレードで得た利益を計算し、確定申告しなければならない。

これを忘れると、"脱税おばさん"のようになるからご用心。来年以降、国税庁はFX会社に対して、顧客の支払い調書の提出を義務付けるという噂も浮上している。また、確定申告を忘れると追徴課税され、本来納付すべき税金に加えて、延滞税や加算税も課せられるので、税負担が一気に重くなる。くれぐれも確定申告を忘れないようにすることが肝心だ。

さて、FXの税金には2通りある。店頭取引業者と取引所取引業者とでは、同じFXで得た利益でも、税率が大きく異なるのだ。取引所取引業者でトレードしている人であれば、申告分離課税が適用されるので、預貯金と同じように一律20%の税率で済むが、店頭取引業者でトレードしている場合は、雑所得として総合課税の対象になる。この税率の違いが大きい。

確かに雑所得の場合であれば、年収2,000万円以下の給与所得者で、雑所得の合計額が年間20万円以下であれば、確定申告する必要はない。しかし、ここで言うFXの利益とは、売買益だけでなくスワップポイントも含まれる。ある程度のレバレッジをかけてトレードしていると、年間20万円の利益は実現困難であるように見えて、実は意外と簡単に達してしまう金額でもある。

実際に課税される場合、総合課税だと自分の所得とFXで得た利益を合算し、その合計額に対して税金がかかってくる。その税金も、所得税に住民税を加えたものになる。これが意外とバカにならない。

たとえば、年収700万円の人がFXで年間300万円の利益を得たとしよう。課税所得額は1,000万円だ。これに対する税額を計算すると、合計で276万4,000円になる。これがもし給与所得のみであれば、納税額は167万4,000円なので、FXの利益300万円に対するFXの税額は109万円になる。税率にすると36%だ。

これに対して取引所取引であれば、税率20%なので、かなり有利になる。取引所取引といえば、今のところは「くりっく365」のみだが、来年春からは大阪証券取引所も参入してくる予定だ。税負担を考えると、取引所取引業者を選ぶことも視野に入れた方が良いかも知れない。

もちろん、税額のみで店頭取引業者にするか、取引所取引業者にするかを決められるものではない。情報提供の他、システムの使い勝手の良し悪し、取扱通貨ペアの数、最大レバレッジ、きちっとした値付け、取引コストなど、取引業者を選ぶ基準はさまざまだ。デイトレ派かスワップ派かによっても、選ぶFX会社は違ってくる。

どれかひとつの基準ではなく、総合的に見て、自分のトレードスタイルに合う取引会社を選ぶようにしよう。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。