神奈川・葉山の森戸海岸では、前回のシロギス以外にメゴチも釣れていた。メゴチ……。料理誌の編集を約10年してきた私であるが、食べたことも料理したこともない。いざ料理を始めてみると頭の後ろに付いていた棘で負傷しかけ、さらには皮を剥ぐのに悪戦苦闘。すんなりとはいかなかった今回のメゴチクッキングである。

神奈川・葉山にある森戸海岸

後輩編集Aが持って帰ってきたシロギスの中にまぎれていたメゴチ。関西ではネズッポと言うらしい。京都出身の私ですが、知りませんでした、ごめんなさい。さてこのメゴチ、シロギスと同様、白身の魚である。全長15cmほどのメゴチを見て、「やっぱり天ぷらか……」と思ったのだが、後にこの計画は暗礁に乗り上げることとなる。

こちらがメゴチ。ネズッポやネズミゴチとも呼ばれる

メゴチをさばく

いよいよ、メゴチをさばくとしよう。ちょいと特殊な方法となるので、先にさばき方を紹介していく。

1.メゴチをまな板の上にのせ、背びれを包丁でそぐように取り除く。なお、頭頂部には棘のようなものが付いているので、負傷しないように。私はもう少しで手を怪我するところだった……。さて、頭部の後ろのほうまで包丁が到達したら、そのまま包丁を斜め下方向に切り進め、中骨を切る。完全に頭を切り落とさないように注意。皮一枚つなげておくのが大切なのである。
2.頭部を手で持ち、頭から尾に向けて皮を剥ぐ。
3.「勢いよく皮を剥ぐと、身が千切れるのでは……」と心配する方もいるかもしれないが、そんな心配は無用。なかなか皮が剥けないので、「エイッ!! 」と力任せに皮を引っ張ってしまったが、身は無事であった。

と、ここでビックリ。皮を剥いだメゴチは、予想以上に小さい。メゴチは5匹ほどしか釣れなかったので、メゴチだけを天ぷらにしても量が少なくなる。そこで方向転換。野菜の天ぷらをプラスして、天丼をつくろう。

メゴチの天丼

材料
メゴチ / レンコン / カボチャ / しし唐 / 大葉 / 天ぷら粉 / 水 / ご飯 / 天つゆ

つくり方

1.皮を剥いだら松葉おろしに。頭があった部分から尾に向かって、中骨に沿って切り進める。尾の手前で止め、反対側も同様に。
2.中骨を尾の手前で切り落とすと、このような形になる。
3.レンコンやカボチャなどの野菜類は適当な大きさに切っておく。天ぷら粉に水を加えて軽く混ぜて衣をつくり、メゴチや野菜に衣を付けて揚げる。器にご飯を盛り、天ぷらをのせたら完成。天つゆをかけていただこう。

メゴチの味噌汁

残ったメゴチは天丼に使ったもの以上に小ぶり。そこで、味噌汁の具にするとしよう。

材料
メゴチ / 水 / カツオ節 / 味噌 / ネギ / 山椒粉

つくり方

1.皮を剥いだメゴチをひと口大に切る。
2.沸騰した湯にカツオ節を入れ、漉してだしをとる。だしを鍋に注ぎ、メゴチを入れる。
3.メゴチに火が通ったところで味噌を加え、椀に入れる。
4.ネギを入れ、最後に山椒粉を少量振りかける。

ふんわりとした食感のシロギスとは異なり、メゴチはムッチリとした食感。味は非常に上品で淡白で、やはり天ぷらは絶品。味噌汁はと言うと、淡白なはずなのにしっかりと旨味は溶け出していて、こちらも堪能した。

ちなみに最後に加えた山椒は、とある割烹を取材した際に教えてもらったワザ。その店の料理長は「酔ったときに山椒入りの味噌汁を飲むと、とてもおいしいよ」と言っていたが、今回は魚臭さを消すためにこのワザを活用させていただいた。山椒の香りが湯気と共に立ち上り、魚特有のにおいをうまく消してくれ、魚の旨味だけを感じることができる。見た目は地味だが、一度試していただきたい一品だ。