フィンランドの魅力は「ムーミン」や「マリメッコ」だけに限らない。首都ヘルシンキと北海道の新千歳空港が直行便でつながったということで、実際に行って魅力や見どころを探ってきた。
冬のフィンランドはサンタクロース村ツアーやオーロラ観光が有名だが、それらはすべて北部の話。
ヘルシンキからだと飛行機での移動が必要となってしまう。ヘルシンキを拠点にして、気軽に他都市も旅するならポルヴォーという街をお勧めしたい。
フィンランドで2番目に古いフォトジェニックな町
ポルヴォーは、毎年100万人以上の観光客が訪れる、ヘルシンキからバスで1時間程度のフィンランドで2番目に古い町。特に旧市街地の美しい街並みは、同国屈指の撮影スポットとして人気がある。
いざ足を踏み入れてみると、黄色、ブルー、ピンクのパステルカラーに彩られた建物がとにかくかわいい。まるでおとぎ話の舞台に飛び込んだような景観で、40男がひとりで歩いていると自覚すると、ほんの少しだけ気恥ずかしさも感じてしまう。
とはいえ、古い建物の多くは雑貨屋、カフェ、レストランとして使われていて、どの店も景観を考えて装飾されているため、外観やショーウィンドウを見て歩くだけでも楽しい。
町自体は1346年に設立されたそうだが、1760年の大火でほとんどの建物が焼失してしまい、現在も残っているのは18世紀以降に建てられたもの。
日本でいうと江戸時代の建築物だと考えると、何と文化の違いを感じることか。ちなみに石畳は大火の際にも燃えることはなく、14世紀(こちらは日本だと室町時代)のものがそのまま残っていて、どことなく中世の面影も感じさせてくれる。
また、旧市街には今も600人以上の人が暮らしていて、中には一般住宅として利用されている建物もある。
その中で窓に不思議な鏡が付いた家があり、聞いてみると、それはスウェーデンの古い建築に見られる「ゴシップミラー」というもので、かつて家の中から外の様子を見るために取り付けられたのだという。
1871年に創業したポルヴォーで最も古いチョコレート店「ブルンベリ」に入ってみると、ほとんど商品が試食できるという大盤振る舞い。程よい甘さのトリュフチョコは、〆パフェなどのスイーツ文化が根付き、「スイーツ王国」を掲げる札幌に住む筆者が食べても相当なおいしさで、簡易的な包装で通常より割安で購入できる商品もある。
ポルヴォーはヘルシンキ空港からも車で30分と近いので、日本に帰る途中にお土産を買うために立ち寄るのもいいかも。
19世紀の暮らしを感じるルーネベリの家
ポルヴォーは、フィンランド国歌を作詞した国民的詩人J.L.ルーネベリが住んでいたことでも知られ、彼の邸宅が博物館として観光スポットになっているということで行ってみた。
家はフィンランド最古のホームミュージアムとして、装飾品や家具、食器などが当時のまま残されていて、19世紀の人たちの生活を現代に伝えてくれている。
また、訪ねたのが冬だったため見られなかったが、外にはルーネベリの妻フレデリカが手入れしていた庭があり、春から秋にかけては、さまざまな花が咲き、果物もなって見応えがあるそうだ。
ルーネベリは甘い物が好きで、妻がよく作っていた好物の焼き菓子は今、フィンランドの伝統菓子として根付いている。それが「ルーネベリタルト」。
フィンランドでは年明けから2月5日のルーネベリの誕生日までの期間にお菓子屋やスーパー、カフェなどに並ぶそうだ。今回は残念ながら食べられなかったが、ぜひいつか食べてみたい。
フィンランドは他にも見どころがいっぱい
時間がなくて写真を撮れなかったが、ポルヴォーはかつて「貿易の街」として栄えた歴史を持っていて、旧市街にはその歴史を象徴する真っ赤な倉庫群が川岸に沿って建ち並ぶ。
その水辺に倉庫がある景色といい、ヘルシンキから1時間という距離感といい、道産子(札幌市民)としてはどこか小樽に似た印象を受け、親しみを感じずにはいられなかったポルヴォー。
フィンランドは他にもムーミンワールドがあるナーンタリやムーミン美術館のあるタンペレ、さらには「水曜どうでしょう」でも訪れていたサンタクロースがいるロヴァニエミなどなど、魅力的な都市がまだまだいっぱいある。
たとえフィンランドが目的でなくても、ヘルシンキ空港はヨーロッパ各国へのハブ空港にもなっているので、帰国を一日延ばすだけで、ヘルシンキ市街やポルヴォーを十分に楽しめる。
残念ながら新型コロナウィルス感染の世界的な拡大に伴い、フィンエアーの新千歳空港含む日本からのフライトは6月30日まで運休してしまったが、終息したら今度は白夜の夏に行ってみたい。
※羽田―ヘルシンキ線は5月3日より運航予定だが、延期の可能性もある
取材協力:フィンエアー、フィンランド政府観光局
※記事中は1ユーロ=120円で換算