日本の法律では、贈与を受けた側が納税を行います。住宅資金贈与の特例など、贈与には特例がいろいろあります。それらの特例を利用した際は確定申告が必要です。怠ると特例を利用できずに多大な贈与税を徴収されかねません。

下記のほかに「結婚・子育て資金贈与の特例」の制度や「教育資金の贈与の特例」などを利用するときは、確定申告ではありませんが、金融機関を通じて申告することになります。

贈与を受けた際の確定申告

確定申告は、贈与された方の所轄の税務署に申告書を提出します。贈与税の申告書、計算明細書などを添付しますが、受けた贈与の種類によって添付書類が異なります。申告書の書式はすべて国税庁のホームページからダウンロードできます。

必要書類は個別のケースなどによって異なるときがありますので、実際に申告する際には所轄の税務署にお問い合わせください。

年間の贈与の合計額が110万円を超えた

「暦年課税」の贈与の基礎控除額は年間110万円です。複数の人から受けたときは、その全部の合計額が年間110万円を超えれば申告が必要です。

「住宅取得資金の贈与」を受けた

110万円を超えれば当然申告は必要ですが、基礎控除額を超えていても特例として一定範囲までは非課税となります。非課税枠は贈与を受けた年で異なります。

添付書類の主なものは下記のとおりです。建物の完成度や居住状況によって変わりますので、詳細は所轄の税務署にお問い合わせください。

■受贈者の戸籍謄本
■受贈者の源泉徴収票
■家屋に関する登記証明書や請負契約書の写しなど
■土地の登記証明書

「相続時精算課税制度」を利用した

その年ごとの贈与の課税方式である「暦年課税」に代えて、「相続時精算課税制度」を利用することができます。一定金額までは当面贈与税は課税されず、贈与した方が亡くなった際に贈与した金額を相続財産に加えて相続税を計算するものです。あらかじめ特定の子どもや孫に財産を贈与できる利点があります。この制度を利用すると「暦年課税」方式は利用できません。

必要書類は下記のものとなります(※住宅取得資金の贈与の特例は60歳以上の制限なし)。

■相続時精算課税選択届出書
■受贈者や贈与者の戸籍の謄本または抄本
■受贈者の戸籍の附表の写しなど(本人が20歳に達した以後の住所等の証明)
■贈与者の戸籍の附表の写しなど(本人が60歳に達した以後の住所等の証明)

贈与税の配偶者控除を利用した

サラリーマンの配偶者に限りませんが、婚姻期間が20年以上の配偶者が居住用不動産や居住用不動産を購入する資金の贈与を配偶者から受けたときは、贈与税の基礎控除額に加えて2,000万円までの控除が認められています。次の書類を添えて確定申告します。

■財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄本または抄本
■財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
■居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの

※金銭ではなく居住用不動産の贈与を受けた場合は、上記の書類のほかにその居住用不動産を評価するための書類(固定資産評価証明書など)が必要となります

住宅取得資金の贈与の組み合わせと申告資料

国税庁のホームページには贈与税の申告書の一覧が掲載されています。贈与関係の特例は、選択適用の場合と併用可能な場合があります。申告書は下記の組み合わせで提出します。その他に必要な書類もありますので事前に税務署に確認ください。

A 贈与税の申告書(申告書第一表)
B 住宅取得資金の非課税の計算明細書(申告書第一表の二)
C 相続時精算課税の計算明細書(申告書第二表)

暦年課税→A
相続時精算課税制度→A+C
住宅取得資金贈与の特例→A+B
贈与税の配偶者控除→A+B
暦年課税+住宅取得資金贈与の特例→A+B
相続時精算課税制度+住宅取得資金贈与の特例→A+B+C
暦年課税+贈与税の配偶者控除→A+B

譲渡所得の申告手続き

土地や建物を売却した際の譲渡所得は、確定申告が必要です。サラリーマンであっても、自宅や親から相続した住まいを売却することはあるでしょう。不動産所得の場合は申告書Bを使用します。「マイホーム譲渡の3,000万円控除」などのマイホームの譲渡所得の各種特例を利用する場合は、それぞれに必要な書類も添付します。

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。