大手集団塾を活用しつくす方法は?

家庭教師や個別指導塾にお世話になるにせよ、基本は子どもを集団塾に通わせるご家庭が多いと思います。今回は、どうしたら共働きの親たちが大手集団塾を活用しつくせるのかについてご説明します。

「時間を買う」という意識

「ワーキングママ」に対して一般には「専業ママ」と言いますが、ワーキングママを語るとき、どうしても彼女たちとの比較で物を言ってしまいがちです。

はじめに、「兼業VS専業」なんて対立的な図式でなく、単なる生活スタイルの違いだとお伝えしておきたいと思います。働き続けることを選択したママと、じっくり家庭のなかで生活を育む選択をしたママ。私の口癖ですが、生きることは選択の連続。ワーキングママと専業ママの違いは「選択の結果の違い」という以上でも以下でもないのです。

さて前置きが長くなりましたが、中学受験においてワーキングママが専業ママと明らかに大きく異なっている点をあげてみましょう。それは「時間」。子どもと接する時間、勉強をみてあげる時間、おしゃべりする時間が、専業ママに比べると相対的に短いことに異を唱える方はいないでしょう。

幼稚園や小学校受検のいわゆるお受験は「親の受験」、それに比して中学受験はよく「親子の受験」と言われます。中学受験は親子の二人三脚そのもの。しかしワーキングママは二人三脚すらままならず、ゴールまで走る時間も決まっています。ゴールまでの道筋を効率よく進めなければ、長く走れて息の合った専業ママ親子の二人三脚のほうが有利に決まっているのです。

ですから、時間を買いましょう。簡単なことなのです。親が勉強を見てあげる時間、宿題を管理する時間、そしてわが子の状況を把握する時間を短縮するために、プロの力を借りるという意識を持ってください。ではどうやって、プロの力を借りたらいいのでしょうか。

塾との信頼関係を築け!

まずは、基本となる大手集団塾を活用しつくしましょう。前回も説明しましたが、大手集団塾のよさは、そのカリキュラムにあります。中学受験の受験範囲を網羅した卓越したテキストと、自分の位置を定期的に知ることができる試験制度。毎年多くの受験生を送り出すなかで生まれてきたシステムです。しかし集団がゆえのきめこまやかさに欠けるため、その日の授業のポイントを押さえて宿題をさせるといったことが必要となってきます。

そこで、家庭教師や個別指導塾を活用する前にできる安価な方法を1つ。集団塾の講師にはじめから「わが子がやるべき問題」の優先順位をつけてもらえばいいのです。そのためには「この親は、わが子をかわいがってもらおうと熱心なんだな」と思わせることが大切です。ひいては「われわれに感謝している」と思わせられたら目的は達成することができます。そして、校舎長や担当講師と「信頼」という関係性を築くことが重要です。ポイントとなるのは「顔を見せる」「言葉を交わす」「ほほえむ」の3つ。これを繰り返すことで、塾との関係は強固に良好になっていきます。

具体的に要求せよ

相手との信頼関係を築いたなら次のステップ「要求」です。「家庭学習のポイントを教えてください」といった要求では、一般的な回答しか得られません。ですから、赤ペンを持ってこう言ってみてください。「先生、自宅でやるべき問題に丸をつけてください」と。小学生にとって解くべき問題の優先順位をつけることは、意外と難しいもの。これで、自宅学習でやるべきことがはっきりします。

ただ、要求に応えてもらった代わりに、教えてもらったことは必ずやりましょう。講師だって時間を割いて教えたことが無駄になれば、2度と教えようという気にはなりません。また、そもそも講師に会えないという塾もあるかもしれませんね。そんな時は電話をしましょう。その際も、真摯(しんし)に質問し、感謝し、教えてもらったことは実行するということが大切です。

かくして、大手集団塾に通っている場合、そこの講師陣の知見を活用すること。これが、共働き世帯の「時間を買う手段」です。

次回は、大手集団塾に加えて「家庭教師」を併用する場合のポイントについてご紹介します。

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

中学受験ドクター講師 春野陽子
日能研で約10年間にわたって中学受験の国語指導を担当したのち、中学受験ドクターの講師として活躍。元中学受験ママでもあり、2人の息子をそれぞれ巣鴨中学校と海城中学校に合格させた実績を持つ。講師としての立場、先輩ママとしての立場の双方から、親たちに向けた受験のアドバイスを行っている。
中学受験ドクター