JR東日本が今年3月16日に実施したダイヤ改正で、中央本線の特急列車は運行体系やサービスが一新された。特急「あずさ」「かいじ」などの定期列車がE353系に統一され、富士急行線へ直通する特急「富士回遊」も運行開始した。
筆者はダイヤ改正前に一度、新宿~河口湖間を往復している。往路は快速「ホリデー快速富士山」、復路は富士急行の特急「富士山ビュー特急」とE257系の特急「かいじ」に乗車した。今回、ダイヤ改正で新サービスが導入された中央本線の特急列車の現状を探るべく、再び新宿~河口湖間で乗車。往路・復路の2回に分けてレポートしたい。
■キャッシュレス&チケットレスで「あずさ」に乗車
ダイヤ改正から約1カ月が経過した4月の土曜日、筆者は新宿駅11時30分発の特急「あずさ13号」に乗車した。往路は「あずさ13号」から大月駅で富士急行の特急「フジサン特急3号」に乗り換え、終点の河口湖駅へ向かう。
中央本線の特急列車はダイヤ改正に合わせ、新たな着席サービスが導入された。同時に「えきねっとチケットレスサービス」も開始している。これまで、あらかじめ「えきねっと」で予約した場合も駅の指定席券売機で紙のきっぷを受け取り、改札機に通す必要があったが、ダイヤ改正後は中央本線の特急列車も「えきねっとチケットレスサービス」を利用可能に。筆者はこれを使って事前に予約し、座席を確保した。
新宿駅で「あずさ13号」に乗車する際も、改札機に「Suica」をタッチするだけでよく、非常に楽になったと感じる。キャッシュレス&チケットレスの動きは今後、近距離輸送だけでなく、広いエリアでも進んでいくことになるだろう。
ホームに上がるとすでにE353系が入線しており、ドア付近に多くの人が並んでいた。ドアが開き、車内に入って座席上のランプを見ると、すでに緑色に点灯しているところが多い。黄色のランプはちらほらとみられる程度。赤色のランプは少ない。
緑色のランプは指定券発売済の区間、黄色のランプは間もなく指定券発売済の区間、赤色のランプは空席であることを示す。発車を待つ間にも、赤色のランプが次々と色を変え、発車間際の車内放送で指定席が満席になったと案内されていた。
「あずさ13号」は新宿駅を定刻に発車した。車内は外国人観光客が多い。車掌の外国人観光客に対する案内も上手であり、中央本線の特急列車に多くの外国人観光客が押し寄せていることを実感する。E353系の走りはこれまでの車両と比べてもなめらかだ。外はよく晴れていて、車窓に見える青空が気持ちいい。
国立駅の手前で車内販売がやって来た。扱う商品の点数は以前より減っている。とはいえ、乗車前に商品を購入する傾向が強まっていることもあり、仕方がないともいえる。
11時52分、立川駅に停車。ここでも外国人の乗客が多い。12時1分、八王子駅に停車する直前、黄色のランプが一斉に緑色に変わった。駅ホームでは多くの人が列車の到着を待っていた様子。ここで完全に満席となった。
八王子駅を発車し、高尾駅を通過すると、それまで流すように走っていたE353系が本気の走りを見せ始める。ただし、かつてのE351系やE257系、もっと前の183系・189系のような全速力ではなく、どこか余裕を感じる。高尾駅から先は山岳区間だが、E353系は揺れもうまくコントロールできるようになっていて、快適さもある。
少し車内を歩いてみると、指定席が満席だけに、座席未指定券で乗車している立客が多い。中央本線の特急列車は新たな着席サービスの導入にともない全車指定席となり、加えて「あずさ回数券」の廃止などもあったことから、「実質的な値上げ」と批判もあったようだ。実際に乗車すると、外国人観光客が急増しているという事情はあるにせよ、中央本線の特急列車に対する需要の高さを感じさせる。
■大月駅から「フジサン特急」で河口湖駅へ
「あずさ13号」は12時28分に大月駅に到着した。ここで下車する人は外国人観光客が中心であり、そのほとんどが富士急行との乗換口に向かっていた。
大月駅からは富士急行の特急「フジサン特急3号」に乗車。特急券と指定席券はあらかじめインターネットで予約していたが、窓口で発券するしくみになっているため、大月駅で特急券・指定席券を発券してもらい、支払いはクレジットカードで行う。
改札をそのまま通って「フジサン特急3号」に乗り、12時46分に大月駅を発車。使用車両の富士急行8000系は、かつて小田急電鉄20000形「RSE」だった車両だ。ハイデッカー構造のため、車窓の見晴らしが良い。運転室後方にロビーがあり、多くの人が大型窓の前面展望を楽しんでいた。マスコンとブレーキハンドルの付いたKATOの鉄道模型用運転台型コントローラーも設置され、こどもたちがこの装置を使って遊んでいた。
自由席の様子を見に行くと、立客が多い。窓口の混雑を考えると、はたして全員乗れたのか……。そう思えるくらい、富士山方面へ観光客が押し寄せているようだ。
列車は上り勾配に向けて、ゆっくりと力強く走る。筆者の座っている席からも前面がよく見える。「混雑のため車内販売は中止」という内容の車内放送が流れ、普段は車内販売が行われていることに驚く。田野倉駅で旧京王5000系塗色と「富士登山電車」を併結した1000系の快速と行き違い、下吉田駅で運転停車して「富士山ビュー特急」と行き違う。富士山駅で方向転換を行い、富士急ハイランド駅付近で車窓から満開の桜を眺めつつ、13時37分、定刻よりやや遅れて河口湖駅に到着した。
河口湖駅では外国人観光客が多く見られ、駅係員も英語などで対応している様子だった。なお、富士急行線も「Suica」など交通系ICカードに対応している。筆者の場合、特急券と指定席券は回収されたが、乗車券は「Suica」をタッチするだけでよかった。新宿駅から河口湖駅までのIC運賃は2,457円だった。