まだまだ続く未曾有の不況……。ここまで明るい未来が見えないと、心まで冷え込んでしまいますねぇ。さてそんな昨今、2010年1月期のドラマ界は妙に以前放送した作品のパート2が多かったりして、やや冒険心に欠けているような印象があります。実は、新作モノも然り。思い切った冒険作はほとんど見当たらず、視聴者の関心を引くことがある程度予想できる題材に傾いているようです。そのひとつが、予想外の大ヒットを記録した『ROOKIES』で世間が求めていることが証明された"まっすぐ&熱血"系ドラマ。もうひとつは、職場環境や転職・就職問題を扱う作品です。大まかに言えば理想と現実――両極端な題材なので、どちらに軍配が挙がるかが楽しみなところ。そんなちょっとしたワクワク感も含め、動向が気になる5作品をご紹介します。

枠移動で高視聴率を維持できるか!? - 『コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命- 2nd season』

枠移動が吉と出るか!?

2008年7月クールに放送された第1シーズンでは平均視聴率15.9%、2009年1月に放送された新春スペシャルでは23.1%を記録した『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』。この作品はフライトドクター候補生たちの群像劇ですが、緊急救命という一刻を争う緊迫感&スピード感に溢れる現場が舞台であることが功を奏し、放送中に少しでも退屈すればザッピングしがちな視聴者を吸引し続けるのに成功したといえます。そして、今回はその業績が評価されて、堂々とフジテレビの目玉枠・月9に放送時間帯を移動! もちろん、月9で高視聴率を取ってくれることを見越しての編成でしょう。しかし! 木曜22時枠で放送されていた時の固定ファンが、そのままオンタイムで観続けられるかは疑問。新規の視聴者も付くと思いますが、21時台ではオンタイムで観られない視聴者もいるであろうことを考えると、視聴率的に爆発的な上昇は望めなさそう……。ただ、ドラマの内容的にはさらに力を入れてくるでしょうし、期待しても大丈夫なのでは?

さくらの期待度は……☆☆☆☆

今クールで期待以上の成果を出せれば、第2の『救命病棟24時』も夢じゃない!?

主人公をウザく感じてしまったら終わり!? - 『曲げられない女』

菅野の演技で女性たちを共感させることができれば、飛躍もあり得るか

まっすぐで純粋すぎるがゆえに、司法試験の面接に9年連続で不合格。それでも夢を諦められず、ひたすら自分を曲げずに生きる32歳独身女を菅野美穂が演じます。信念を貫いて生きれば、いつかは報われる――そういう美徳を信じたいという思いが誰しもあるでしょう。でも、その思いだけに従って生きられないのが実情。そんな現実が痛いほど分かっている同世代の多くは、心から菅野演じる主人公のキャラクターには共感できないはず。ともすればウザがられたり、反感を買ったりする恐れもあります。そういう意味では、好感度の高い菅野をキャスティングしたことは正解! あとは、菅野がどう演じるか、脚本や演出でどんな風に描かれるか。現実を度外視して応援したくなるようなキャラクター、理屈抜きで浸れるような"ファンタジー"が構築できれば、視聴者もついてくるはず。

さくらの期待度は……☆☆☆

菅野とは対照的なポジションを演じる永作博美の演技力にも期待します!

寺脇康文が亀山薫以上のハマリ役を目指す! - 『853~刑事・加茂伸之介』

脱"亀山"がキーポイント?

『相棒』を卒業しちゃって、寺脇康文はハズレくじを引いちゃったんじゃない?――なんて思った人も世間には多いでしょう。でも、テレ朝はちゃんと彼に卒業プレゼントを用意していました。何と言っても、『853~刑事・加茂伸之介』は連続ドラマ初主演作! これは彼のキャリアにとっては嬉しいことであるはずです。しかし、それが今後のキャリアを左右する作品になることも、これまた真実。『相棒』ほどとは言わないまでも、『853』で少なくとも合格点を出さなければ、これまでTVドラマ・ジャンルで築き上げてきたものが正当に評価されなくなる危険性もあるわけで……。寺脇にとっては幅広い意味で勝負どころとなる作品です。しかも、この勝負に勝つには相当高い壁が待ち受けている! なんせ今回演じる加茂刑事という役、熱さや情がほとばしるキャラクター。ベースがどうも『相棒』の亀山薫を彷彿とさせるんですねぇ。そんな役をどう差別化して演じ、なおかつ加茂ファンをどこまで増やすことができるか!? 大変だとは思いますが、ぜひ世間に「寺脇康文といえば加茂伸之介」と言わせるようなキャラクターを作り上げてほしいものです。

さくらの期待度は……☆☆

脚本は『相棒』でもおなじみの櫻井武晴と岩下悠子。亀山薫の寺脇に基づいた宛書にならないことを祈りたい!

ミスター・ミステリアス板尾の本領発揮!? - 『連続ドラマ小説 木下部長とボク』

板尾は連ドラ初主演!

職場の環境を描く作品の中でも、異色を放つのは大宮エリーが脚本・演出を手掛ける『連続ドラマ小説 木下部長とボク』。なんせ連続ドラマ初主演の板尾創路が演じるのはド天然でミステリアスな部長。芸人たちからも不思議だと言われ、その言動がたびたびバラエティー番組でも取り上げられる板尾にとって、まさにハマリ役だといえます。もちろん、板尾自身が後輩の名前も覚えていなかったり、その日その時の気分で生きている"平成の無責任男"というわけではありません。しかし、演技力で高評価を得ている板尾! 小気味よく無責任男ぶりを演じてくれる予感でいっぱいです。ただし、しずるの池田一真、ココリコの田中直樹、チュートリアルの徳井義実も超メインどころで出演するということで、正統派ドラマファンからすれば「芸人フィーチャーのドラマかよ!」と言いたくなるかもしれませんね。でも、深夜ドラマですから! 俳優ばかりが出演するドラマではできないような冒険への期待を込めて、まずはお手並み拝見といった姿勢で観てみるのもアリでは?

さくらの期待度は……☆☆☆

個人的に津田寛治が今回どんなハジケっぷりを見せてくれるか楽しみにしてます。

イジメの描写をどこまで極めるかが重要!? - 『泣かないと決めた日』

活発な少女を演じることが多かった榮倉。年齢的にもそろそろイメージチェンジを図りたい?

セクハラやパワハラなど、これまで職場での問題が大きく取り上げられてきましたが、最近大きな問題になっているのがイジメです。そんな職場のイジメに斬り込むのが『泣かないと決めた日』。主人公の新入社員・美樹(榮倉奈々)が凄惨なイジメに耐えながら、立ち上がっていく物語です。何と言っても、イジメをどう描くかが大きなポイント。「ただひたすら性格の悪い人間たちが心の美しい人間をイジメる」→「それでも心が穢れることなく、主人公は立ち向かっていく」なんていう単純な図式では、ドラマとしては薄っぺらい! 悪意がどう芽生え、どこまで人の心に影を落とすのかを徹底的に描かなければ、この題材を扱う意味がないのではないでしょうか。劇中で描かれるイジメの内容自体はすごくリアルなので、それに負けないくらい渦巻く心情も描いてほしいところ。「イジメられてる人たち、主人公みたいに耐えて頑張ってね」というような"社交辞令的"メッセージしか与えられないドラマでは、視聴者も納得しないはずですから。

さくらの期待度は……☆☆☆

繊細な問題なので難しいところもあるでしょうが、ぜひ「所詮はドラマ」と思わせないようなストーリー展開にしてほしい!

2010年1月放送スタートの主な連続ドラマ

放送スタート日時 放送局 タイトル 主なキャスト 内容
1月7日(木)20:00 NHK総合 とめはねっ!鈴里高校書道部 朝倉あき、池松壮亮、葉月里緒奈ほか 弱小書道部の部員たちが繰り広げる熱血青春ドラマ。連続ドラマ初主演の朝倉あきをはじめ、若手俳優たちが勢ぞろい! 青春ドラマの王道要素が詰まったストーリー展開はベタではあるけど、ある意味安心して観られるドラマ。
1月8日(金)23:15 テレビ朝日系 サラリーマン金太郎2 永井大、井上和香、細川茂樹、古谷一行、宇津井健ほか 暴走族あがりの破天荒なサラリーマン・矢島金太郎(永井)の活躍を描くドラマの第2弾。高橋克典が演じた金太郎のイメージが根強く残る中で、意外にもハマった永井版金太郎。今回はどんな飛躍を見せてくれるか期待したいところ!
1月11日(月)20:00 TBS系 ハンチョウ~神南署安積班~ 佐々木蔵之介、中村俊介、塚地武雅、黒谷友香、賀集利樹ほか 都心にある神南警察の刑事課強行犯係を舞台にしたドラマの続編。事件だけでなく、安積(佐々木)率いる班の絆も見どころだ。決して華やかではないけれど、飽きずに観られる作品。
1月11日(月)21:00 フジテレビ系 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-2nd season 山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介ほか 08年に放送され、高視聴率を叩き出した『コード・ブルー』の第2シーズン。前回、悪戦苦闘しながらも成長を遂げた藍沢耕作(山下智久)らフライトドクター候補生たち。今回は、彼らがフェローシップ(=専門研修制度)を卒業できるかどうかが物語の軸となる。
1月12日(火)22:00 フジテレビ系 まっすぐな男 佐藤隆太、深田恭子、貫地谷しほりほか とにかくまっすぐなサラリーマン・健一郎(佐藤)が小悪魔系の女性・鳴海(深田)に出会い、さらに成長していく姿を描くヒューマン・コメディー。佐藤と深田はこれまでよく演じてきた役柄と大差ないので、芝居も予想がつく!? いい意味で期待を裏切るためには、脚本の意外性が必要。
1月13日(水)21:00 TBS系 赤かぶ検事京都篇 中村梅雀、菊川怜、原沙知絵ほか 単発ドラマで好評だった『赤かぶ検事奮闘記』が連続ドラマに! 視聴率の面では、大人気ドラマ『相棒』の真裏という放送枠で苦戦を強いられることは間違いない。しかし、原作は和久峻三のベストセラー小説ということで、ストーリー展開自体は完成度の高い良作になるはず。
1月13日(水)22:00 日本テレビ系 曲げられない女 菅野美穂、谷原章介、塚本高史、永作博美ほか 自分を曲げられない性格が災いして、司法試験の面接に9年連続で落ちている女性・早紀(菅野)の生きざまを描く。主人公のキャラクター設定はドラマでは目新しくない路線。それを菅野がどう魅力的に演じられるかが、作品の明暗を分けるカギのひとつとなる!?
1月14日(木)20:00 テレビ朝日系 853~刑事・加茂伸之介 寺脇康文、富田靖子ほか 京都を舞台にした昭和系刑事ドラマ。寺脇康文にとって、連続ドラマ初主演作となる。寺脇が本人の意気込みどおり、『相棒』の亀山薫役で与えた大きなインパクトを超えるものを提示できるか!? 俳優として、ここ一番の勝負どころとなりそう。
1月14日(木)21:00 テレビ朝日系 エンゼルバンク~転職代理人~ 長谷川京子、ウエンツ瑛士、生瀬勝久ほか 高校教師から一転、転職代理人になった真々子(長谷川)が依頼人の転職をサポートしながら、自分らしい生き方を見つけていく様を描くドラマ。人生を逆転させる発想転換術や成功するためのヒントが満載ということで、マニュアル系の視聴者には好まれるかも!?
1月14日(木)23:58 日本テレビ系 連続ドラマ小説 木下部長とボク 板尾創路、池田一真、田中直樹、徳井義実ほか 板尾扮する無責任上司・木下部長を中心に繰り広げられるコメディー。キャストはよしもと芸人が中心で、脚本・演出は大宮エリー! ドラマとコントの中間を行くような作品になりそうだ。深夜のエンターテインメントとして観るにはちょうどいい作品かも!?
1月15日(金)21:00 テレビ朝日系 宿命1969-2010~ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京~ 北村一輝、小池栄子ほか 首相を目指す野心家・有川崇(北村)を中心に、愛欲と憎悪が交錯する権力闘争を描くドロドロ系ドラマ。主演が北村ということで、アヤシさは抜群!? 視聴率的には非常に厳しい枠でありながら、欲望劇ではいつも好視聴率を得ている金曜21時。今回もそれなりの結果を残すのでは?
1月15日(金)22:00 TBS系 ヤマトナデシコ七変化 亀梨和也、手越祐也、大政絢、内博貴、宮尾俊太郎ほか イケメン4人組が外見も内面も冴えないホラー少女を美しく変身させていくラブコメディー。亀梨出演作でこの手のストーリーは以前にもあったことだし、新鮮味は薄い……。イケメン・ブームもやや下火になっている今、どれだけお客を呼び込めるかは微妙な予感。
1月16日(土)21:00 NHK総合 『君たちに明日はない』 坂口憲二、田中美佐子、堺正章ほか 企業に代わってリストラを代行する会社の敏腕面接官・真介(坂口)が、リストラ候補者たちとの交流や恋愛を通して葛藤。仕事とは何かを見出していく姿を描くヒューマンドラマ。理屈だけでは割り切れないサラリーマンの複雑な思いが随所に投影されているため、多くの共感を呼びそう。
1月17日(日)21:00 TBS系 特上カバチ!! 櫻井翔、堀北真希ほか 弱者を救おうとする行政司法書士補助者・田村勝弘(櫻井)の奮闘を描く社会派ドラマ。劇中には法のテクニックが散りばめられているので、役立つ情報も多そう。ただ放送中にクイズを出題したり、デコテロップを使ったりするという試みは、ドラマの世界観へ浸りきれない逆効果を生むような……。
1月23日(土)19:56 TBS系 ブラッディ・マンデイ 三浦春馬、佐藤健、吉瀬美智子、成宮寛貴ほか 天才ハッカー・藤丸(三浦)とウイルステロとの戦いを描いたシーズン1から約1年。シーズン2では藤丸が核爆弾から東京を守るために立ち上がる! 今回は2クールぶち抜きでの放送。中だるみせずに視聴者を最後まで引っ張ることができるか!? 脚本と演出の力が問われることになるだろう。
1月23日(土)21:00 日本テレビ系 左目探偵EYE 山田涼介、横山裕、石原さとみほか 角膜移植によって左目に映るようになった謎の映像をもとに、犯罪組織の陰謀阻止に挑む中学生・愛之助(山田)の活躍を描くサスペンス。'09年10月のスペシャルドラマでは意外な結末で視聴者を驚かせたものの、途中ではやや間延び感が……。今回は改善されていることを祈りたい。
1月26日(火)21:00 フジテレビ系 泣かないと決めた日 榮倉奈々、藤木直人、要潤、杏ほか 問題になっている職場のイジメにスポットを当てたドラマ。商社の新入社員・美樹(榮倉)が同僚からのイジメに耐えながら、前へ進んでいく姿を描く。美樹の恋愛は出来すぎの急ピッチ展開で現実味に欠けるが、目も当てられないほど卑劣なイジメの内容にはリアリティーがある。

さくら

"ドラマを見てはセリフを覚え、友人とドラマごっこをする"という幼少期からの趣味が高じ、大学卒業後は流れ流れてエンタメ雑誌業界へ。テレビドラマなどの特集担当記者を経て、現在はフリーライター。テレビ番組を中心とした特集やインタビュー記事を手がける。