同じような経験では結局差がつかない
大学時代に経験できることは、バイト、サークル、旅行、学業など、あまり他の就活生と大きく差がつきにくいですよね。自己PRの教科書では、より具体的なイメージを湧かせるため、名詞や数字で表現するというのが定説となっています。
「高齢者の理不尽なクレーム」より、「70歳位のおじいちゃんが、『みかんを食べたら腐っていた。店長を出せ』と毎日10時に店中の人が振り返るくらい大きな声でクレームしにくる」のほうがより具体的で臨場感があり、イメージしやすいのは分かるでしょうが、ここに罠があります。
そう、話が長くなるのです。「高齢者の理不尽なクレーム」より「70歳位のおじいちゃん~」の話しは長い。また、名詞や数字を入れるなど、具体的にすればするほど説明要素が増えて話が長くなるのです。面接は演説する場ではないですし、面接官も就活生の「似たり寄ったりな自己PR」をずっと聞いてくれるほど暇ではありません。
挙句の果てには、「話は具体的で分かりやすかったけど、話をまとめる能力に欠ける」とマイナス評価されたら、元も子もありません。ではどうすればいいか。今回はシンプルですぐに使える特効薬を教えましょう。
マッキンゼーの万能ツールを使う
ズバリ、「ソラ・アメ・カサ」を活用しましょう。ソラ・アメ・カサは、マッキンゼーの日本オフィスが考案したフレームワークで、問題解決の一つの「型」です。問題解決というよりも、日々の仕事やコミュニケーションの改善に使える万能ツールで、誰でも使いこなせるくらい簡単で万能なものです。
ソラ「空を見ると曇ってきた(事実)」
アメ「雨が降りそうだ(解釈・判断)」
カサ「傘を持っていこう(打ち手)」
この3つをセットにして伝えれば認識のズレもなく、正しく相手に判断してもらえるというものです。逆に、このうち一つでも欠けていると、説得力は一気に落ちてしまいます。 例えば、「ソラ」が抜けてしまうと、
アメ「雨が降りそうだ(解釈・判断)」
カサ「傘をもっていこう(打ち手)」
となり、根拠がなくなってしまい、信頼度が格段に落ちてしまいます。
また、
ソラ「空を見ると曇ってきた(事実)」
カサ「傘を持っていこう(打ち手)」
これは「アメ」という解釈が入っていないために、「私は持っていかない」「傘だけでなく長靴と雨合羽も用意すべきでは」などと、解釈に幅が出てしまい、打ち手の足並みが揃わなくなるリスクがあります。
さらに、
ソラ「空を見ると曇ってきた(事実)」
アメ「雨が降りそうだ(解釈・判断)」
これだと「カサ」がないため、「だからどうした」という話になってしまいます。
日本語は主語が省略されがちなので、「ソラ・アメ・カサ」をセットにして話すだけで、論理的かつ端的に伝えたいことを正しくPRできるのです。ただ、「ソラ・アメ・カサ」のスゴイ所はそれだけではありません。
「アメ(解釈・判断)」であなたの洞察力がPRできる
「ソラ・アメ・カサ」のキーは「アメ(解釈・判断)」です。大学時代に経験できる、「ソラ(事実)」はあまり違いがなく、結果「カサ(打ち手)」も似てしまうのです。例を出しましょう。
「サークルで新入生の申し込みが少ない(ソラ)」
「こんなPRをした(打ち手)」。
ここで差別化をはかるなら、PRの方法の違い、熱意、効果といったカサ(打ち手)を中心に命を懸けますが、大量に就活生の自己PRを聞いている面接官にとっては「またこのパターンか」と、その他大勢の一つの印象しか与えられません。
「カサ(打ち手)」を導き出した凄さや効果を感じさせるには、「アメ」がキーになります。
ソラ「サークルで新入生の申し込みが少ない(事実)」
アメ「コロナでリモートだからこそ、体感したいのでは(解釈・判断)」
カサ「だからVR新歓をして一緒に盛り上がった(打ち手)」。
いかがでしょうか。アメがあるだけで、なぜカサが必要だったのか、端的に分かります。同じ事実でも、
アメ「掲示板、HP、動画は他のサークルと同じで差がつかないのでTVに取り上げてもらえることをして注目を集めよう」とかアメ「新入生がキャンパスにいないので仕方ないのでネットを使おう」
というように、そう、アメ(解釈・判断)は人の数だけ違いがあるので、その違いをスパっと一言で伝えられる結果に。
頭の中でどんな見方、考え方、洞察をして先読みをしたのかを伝えるアメがあると、カサ(打ち手)に重みが加わり、他者との差別化が容易にできるのです。
しかも「ソラ・アメ・カサ」でまとめることで、端的で論理的になるのでスマートな印象を与える嬉しい誤算もついてきます。
ソラ・アメ・カサは順番ではなく三点セット
もう一つ大事なことは、「ソラ・アメ・カサ」が順番ではないこと。この3つが「セット」になっていれば、論理的にまとまるのです。就活でどう応用できるかというと、面接官が気にしている順番に沿って「入れ替えて伝えること」が簡単にできるのです。
ビジネスの世界では、相手が知りたい優先度と判断基準にそって伝えることを求められます。あなたが、ソラからじっくり伝えたくても、面接官が結論から聞きたければ、結論から順番に話せないとジ・エンドです。
悪い例は、自己PRを一行目から暗記しているもの。急に順番を入れかえて話せと言われても、覚えた順番でないと話が飛ぶ。しどろもどろになる等、急に対応しにくいものですが、ソラ・アメ・カサを使えば簡単にそれができるのです。
少し暗い例え話ですが、分かりやすいので以下の情報を使って考えてみましょう。事実から説明すると、次のような展開です。
ソラ「お客様が来ない(事実)」
アメ「来月にはお店が潰れそうだ(解釈・判断)」
カサ「銀行から追加融資してもらおう(打ち手)」
もし、相手がいち早く「経営状況」を知りたいのならば、
アメ「来月にはお店が潰れそうだ(解釈・判断)」
ソラ「(なぜなら)お客様が来ない(事実)」
カサ「(なので)銀行から追加融資してもらおう(打ち手)」
と伝えればいいのです。あるいは、「結局、どうするのか」に関心があるのなら、
カサ「銀行から追加融資してもらおう(打ち手)」
ソラ「(なぜなら)お客様が来ない(事実)」
アメ「(なので)来月にはお店が潰れそうだ(解釈・判断)」
と「ソラ・アメ・カサ」で何を伝えるのかだけを頭に入れておけば、面接の場で、相手が聞きたい順に入れ替えて話せば忘れたり、詰まったり、動揺することなく、サラリと伝えられます。
このフレームワークはシンプルで、すぐ覚えられます。話す時に「ソラ・アメ・カサ」で何を言うか。「カサ」を伝えたので、残りは「アメ」と「ソラ」を伝えるというように三点セットであることを忘れない、注意点はそれだけです。
当然、面接だけでなく、グループディスカッションでも活用できます。ソラ・アメ・カサで話し、議論の内容を整理することで、「問題解決能力がある」「伝わりやすい会話ができる」と印象付けることが可能です。
世界最高峰の外資系コンサルタント会社のマッキンゼーのノウハウがあれば、他の就活生より頭一つ抜け出せ、何より自己PRや発言で焦らなくてよくなるので、お勧めします。