就活での面接官からの質問は、「言葉通り素直に受け取り、直球で答える」と失敗します。なぜなら、その質問の「裏」に面接官が聞きたい本音の質問が隠れているからです。

前回は「他の選考企業への質問」について解説しました。今回は「入社してやりたいことは何ですか?」です。

  • 面接官の本音とは?

社会貢献を一番に答えると失敗する

就活生がやりがちなのは、エントリーした企業の社会貢献やSDGsの取り組みなどから、「共感した。やりたい」と答えることです。ここに大きな落とし穴があります。

面接官が聞きたいのは、あなたのやりたいことを聞くプロセスを通して

・我が社の企業研究はどの程度「ちゃんと」やってきたのか?
・我が社の本業の中で「どんなこと」をやりたいのか?

を知りたいのです。

確かに社会貢献は大事なことですが、企業は慈善団体ではありません。

企業はビジネスを通して利益をあげることで成立します。利益があってこそ、雇用も守れるし、設備や組織を充実させられるし、税金を払うことで世の中に貢献できる、こちらが先で、極端に言うと、その土台があってこそ社会貢献活動ができるのです。

面接では、その企業に本気で興味があり、きちんと調べてきたのか? が問われます。逆に考えれば分かりますが、「ビジネスを一緒にする仲間としてどうか」ということが面接官の関心事であるとイメージできるでしょう。

誰でもイメージできる仕事だと、その他大勢の枠から出られない

誰もがやりたいと考えそうな仕事を「入社してやりたい」ということはリスクが伴います。それは、誰でも同じように思うからです。

例えば、TV局なら番組プロデューサー、広告代理店ならプランナーやコピーライターを希望する就活生は100%に近いものです。

「では、あなたがもし、その仕事につけなかったらどうしますか?」と質問されたアウトです。取って付けたような言い訳や、「どうしてもその仕事がしたいのです」と懇願するしか打ち手がなくなり、ジ・エンドです。

誰でもイメージできるピカピカした仕事を担えるのはごく一部。実際は、それ以外の仕事が9割です。TV局でも制作以外に、営業、編成、管理など、ネットで検索すればすぐ分かります。職種によっては「入社後すぐに任せてもらえない仕事」も沢山あります。

業界・企業のイメージだけで「やりたい仕事」を空想すると薄っぺらで、一発で面接官に見透かされます。その会社のビジネスの本業を調べ、自分なりの「真剣に働く姿」がイメージできてから面接に臨んでいるのか。問われるのは、そのスタンスです。

その企業の本業の中で、新人でつける可能性が高い仕事を希望するのが正解

その企業のビジネスをすべて把握できず、実際に働いていないので100%押さえることは無理だと面接官は分かっています。

企業研究を通し、「入社後にやりたい仕事」をPRする時に押さえておくべきポイントは、

・会社の事業内容から「やりたいこと」をみつける
・新人が「つける可能性が高い」仕事を調べる
・新人が「すぐにつけない仕事」は将来の目標とする

です。今回も失敗例とお手本で解説します。

失敗例:
アジアを中心に海外の工場敷地の緑化活動や周辺地域の清掃、緑化活動に力を入れる御社の社会貢献活動に感銘し、共感しました。SDGsの観点からも、環境問題は大切な問題です。
グローバルで活躍するため、大学時代に得た語学力や留学経験を活かし、この環境問題への取り組みを世に広める広報職を私は希望します。

これでは、この企業の本業や新卒に求める人材要件などをきちんと調べず、ホームページやネットでみた記事の都合のいいところだけ切り取った、薄っぺらな印象にしかなりません。

本人なりに、自分のやりたいことと結び付けたのかもしれませんが、本業に触れないばかりか、それとかけ離れた職種を希望する学生を「一緒に働きたい」とは思えません。

「うちの本業に興味がなく、やりたい職種に就ければどの会社でもいいのでしょう」とバッサリ見透かされるだけでしょう。

お手本:
大学生活や留学経験を通した異文化コミュニケーションと語学力を活かし、御社のネットワークで海外とやり取りをする海外営業の仕事を私は希望します。

御社は現在、売り上げの9割が海外で、その中でも、インドネシア、ベトナム、タイといったアジアで拠点を拡大されているとお聞きしました。

私は、欧米より、この3ケ国の友人が多く、バックパッカーとして現地で生活し、その文化の違いや特徴を肌で感じてきました。また、リモート環境を活用し、大学の研究では、そうした国々で友人を増やし、共同研究を立ち上げ、リードした経験があります。この経験を活かし、最初は国内で営業の基本を学んで一人前以上の実力をつけた上で、海外拠点のメンバーと交流しながら、将来は海外駐在やグローバルでのプロジェクトを任せられるようになりたいと思っています。

いかがでしょうか。大学時代に学び、経験し、身に付けたことと、応募した企業で求められる人材要件とのつながりに無理がなく、現実的に企業研究をしてきたことが伝わります。

本業を押さえ、新人で配属される可能性が高い仕事も押さえ、どうステップアップしていきたいかが中長期の視点で無理なく描けていることで、本気度が伝わります。

お手本のような本業やキャリアステップについては、実は会社説明会の時に教えてくれます。ただし、就活生全員向けのメッセージになるので、抽象度が高くなっています。

お勧めは、会社説明会の前に、「この会社の本業、将来の方向・戦略」をホームページや会社案内で理解し、「自分が希望する仕事を担うには現実的にどんなステップが必要か」の仮説を立てることです。

そして説明会で聞くのです。きちんと事前に調べ、考えてきた仮説は「ピントがズレて」いても、説明会のスピーカーや同席した先輩社員に必ず響きます。すると、可能な範囲で答えてくれます。コツはピンポイントで具体的に聞くことです。

・将来海外駐在をしたいのですが、現実的にどんなキャリアステップになりますか?
・最初に新人はどんな仕事に就くことが多いのですか?

と聞けば、あなたの希望に添ったピンポイントの内容で教えてくれる確度があがります。日系企業では新人が最初に配属される職種や仕事はオープンにしていない企業が多いので、説明会、OB・OG訪問の時に確実に押さえてください。

この質問も必ず就活の面接で聞かれるので、この型に沿って自己PR内容を整理しておくといいでしょう。