JR東日本は横浜線、南武線、武蔵野線、京葉線を「東京メガループ」と名づけ、サービス改善に力を入れている。今回はその中から、東神奈川駅と八王子駅を結ぶ横浜線に注目した。当連載第32回で紹介した南武線に並行する路線で、似ている部分もあれば違う部分もある。日中の快速運転は似ているけれど、南武線には貨物列車があり、横浜線にはない。横浜線では休日に特急列車が走る。今回は横浜線の平日ダイヤと休日ダイヤを比較してみよう。

横浜線の平日ダイヤ

まず、横浜線平日ダイヤの全体像から。黒い線が各駅停車、緑の線が快速列車だ。通勤通学路線の証拠として、朝の7・8時台に列車が多い。夕方も18時台を中心に運行本数が多い。列車の運行本数を増やすため、すべて各駅停車にして速度をそろえた「平行ダイヤ」である。快速運転は10時台から15時台まで。途中停車駅は菊名駅・新横浜駅・鴨居駅・中山駅・長津田駅・町田駅・相模原駅・橋本駅・相原駅・八王子みなみ野駅・片倉駅だ。新幹線が停車する新横浜駅と、東西方向の私鉄との乗換駅、市の中心駅に停まっている。

南武線では中間駅同士を結ぶ区間列車があった。私鉄への乗換えを考慮したようだ。しかし横浜線では、ほとんどの列車が起点の東神奈川駅を発着する。一部は京浜東北線に乗り入れて横浜へ、さらに根岸線に乗り入れ、桜木町駅や大船駅まで直通する。通勤ラッシュ時間帯は列車が多く、このダイヤでは塗りつぶされたように見える。その黒い部分を見ると、6時台から8時台にかけて、右斜め上に集中している。横浜線は東神奈川駅や根岸線の駅を起点として郊外を結ぶ通勤路線といえそうだ。

列車の運行本数は東神奈川駅から橋本駅までがほぼ均一で、橋本駅から八王子駅までは比較的少ない。ここまで圧縮するとわかりにくいけれど、橋本駅と八王子駅を結ぶ区間列車がある。これは相模線からの直通列車で、横浜線の運行本数を補いつつ、相模線沿線から中央線への乗換えを便利にしている。

横浜線の休日ダイヤ

休日ダイヤを見てみよう。平日ダイヤと比較すると、通勤ラッシュの増発がなく、運行本数は1日を通じてほぼ等間隔になった。運転間隔にゆとりがあるため、快速列車の運転時間も拡大されている。休日は横浜方面だけではなく、町田駅周辺もショッピング需要が多い。遠くに出かける人は新横浜駅で東海道新幹線に乗り換える人も多いだろう。横浜線の重要な役割は、東海道新幹線へのバイパスともいえる。新幹線接続機能は平日も休日も同じくらい重要だけど、休日は通勤需要がない分、新幹線接続の重要性が際立つ。

横浜線で快速運転が行われ、休日に増発している理由に、ライバルの存在もあるといえそうだ。新横浜駅には横浜市営地下鉄ブルーラインが通っている。ブルーラインは横浜駅に直結し、桜木町、関内、伊勢佐木長者町と繁華街を結ぶ。ブルーラインの新横浜~横浜間の所要時間は11分。横浜線の各駅停車は13分、快速は12分だ。

JR東日本の本心は、「すべての時間帯で快速を走らせたい」「全列車を京浜東北線に乗り入れたい」だろう。しかし輸送量を確保するために、通勤通学時間帯は各駅停車の平行ダイヤにせざるをえないし、京浜東北線の運行本数も多いから割り込めない。現在の横浜線のダイヤは苦心の結果といえそうだ。

横浜線休日ダイヤのうち、午前中を拡大した

横浜線の休日ダイヤと平日ダイヤの大きな違いは特急列車だ。横浜線では休日に特急列車が1往復走っている。臨時列車扱いだけど、ほぼ毎週末と祝日に走っている。この列車は横浜駅と長野県の松本駅を結ぶ「はまかいじ」だ。横浜線では珍しい特急列車。車両は185系で、中央本線を走る185系としても珍しい列車である。

中央本線は甲府行が「かいじ」で松本行が「あずさ」だから、松本行の「はまかいじ」は「はまあずさ」のほうがふさわしい気がする。これは「はまかいじ」が甲府行だった頃の名残だろう。「はまかいじ」の名前が定着したため、そのままになっているようだ。185系が老朽化して車両がリニューアルされるときに、名前も新しく「はまあずさ」になるだろうか?

横浜線休日ダイヤのうち、午後を拡大した

臨時特急「はまかいじ」は、時刻表では東神奈川駅を通過と表示されているけれど、実際は下り・上りともに東神奈川駅で停車している。京浜東北線と横浜線の自動列車停止装置の種類が異なるため、運転停車して切り替えるそうだ。そこで、ダイヤを描くために、快速列車の所要時間を参考にして東神奈川駅の発着時刻を入力している。「はまかいじ」は下り列車が町田駅と橋本駅で各駅停車を追い越す。上り列車は町田駅で各駅停車を追い越す。快速列車の線の傾きを比較すると、かなり俊足だとわかった。

南武線と横浜線、どちらも神奈川県を南北に結ぶ路線としては似ている。快速運転もしている。しかし、路線の性格や快速列車の意味が異なる。南武線は貨物列車が走り、快速列車は"ヨコ糸路線"との乗換駅を結ぶ役割だった。横浜線は休日に特急列車が走り、快速列車は新幹線連絡とライバルの地下鉄と競争する役割を持っている。似たようなダイヤを持つ路線でも、成立した背景が違う。幾何学模様の列車ダイヤから、路線の性格を推し量る。これも列車ダイヤの楽しみ方のひとつだ。