前回は新型コロナ対応融資の新規性について概観いたしました。今回は新型コロナ対応融資の契約面の特徴について、(1)日本政策金融公庫による新型コロナウイルス特別貸付、(2)商工中金による危機対応融資、(3)セーフティネット保証4号、(4)危機関連保証の4つの事例を取り上げて解説いたします。
新型コロナウイルス対策融資の全体像につきましては、StartupList「新型コロナウイルス対策融資・保証まとめ最新版(2020年7月3日更新:追記あり)」の記事に詳しくまとめられているので、本稿では説明を割愛いたします。
(1)日本政策金融公庫による新型コロナウイルス特別貸付
経済産業省のWebサイトに掲載されているパンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(以下、パンフレットと呼びます)を確認すると、融資の条件は下記の通り紹介されています。
融資限度額:中小企業事業6億円、国民生活事業8,000万円
貸付期間:設備資金20年以内、運転資金15年以内、うち据置期間5年以内
担保:無担保
金利:当初3年間が基準金利マイナス0.9%、4年目以降が基準金利
基準金利は日本政策金融公庫のWebサイトにて公表されており、毎月更新されます。中小企業事業(主要利率一覧表)と国民生活事業(主要利率一覧表)で異なる利率が設定されています。国民生活事業の利率一覧表には複数のタイプが存在しますが、新型コロナ対応融資では「4.災害貸付、東日本大震災復興特別貸付(震災セーフティネット関連を除く)、平成28年熊本地震特別貸付(その他被害者を除く)、平成30年7月豪雨特別貸付(その他被害者を除く)、令和元年台風第19号等特別貸付(その他被害者を除く)、新型コロナウイルス感染症特別貸付をご利用される方」を参照します。
パンフレットに記載されていない融資の条件としては、下記の項目が挙げられます。
保証:経営者保証あり
繰り上げ返済:可能(日本政策金融公庫の同意が必要)
(2)商工中金による危機対応融資
パンフレットにて紹介されている融資の条件は下記の通りです。
融資限度額:6億円
貸付期間:設備資金20年以内、運転資金15年以内、うち据置期間5年以内
担保:無担保
金利:当初3年間が基準金利マイナス0.9%、4年目以降が基準金利
資金の貸し手は商工組合中央金庫ですが、基準金利は日本政策金融公庫の中小企業事業(主要利率一覧表)が適用されます。
パンフレットに記載されていない条件は下記の通りです。
保証:経営者保証あり
繰り上げ返済:不可
利子補給制度:利用の限度額は日本政策投資銀行(DBJ)からの融資と合算されます。
(3)セーフティネット保証4号
信用保証協会から保証を受けて民間金融機関の所定の融資条件で契約を締結するため、パンフレットに記載されている条件は融資限度額のみです。
融資限度額:2.8億円
ただし、「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」の制度を併用する場合は追加の条件があり、パンフレットに記述があります。
融資限度額:4,000万円
貸付期間:10年以内、うち据置期間5年以内
担保:無担保
金利:個人事業主(事業性あるフリーランス含む、小規模のみ)は3年間金利ゼロ
小・中規模事業者は売上高が前年同月比15%以上減少している場合に3年間金利ゼロ
保証料:個人事業主(事業性あるフリーランス含む、小規模のみ)は全融資期間に渡り保証料ゼロ
小・中規模事業者は売上高が前年同月比5%以上減少している場合は全融資期間に渡り保証料1/2、15%以上減少している場合は全融資期間に渡り保証料ゼロ
保証:代表者は一定要件((1)法人・個人分離、(2)資産超過)を満たせば不要(代表者以外の連帯保証人は原則不要)
パンフレットに記載されていない条件は下記の通りです。
信用保証料:保証書に「感染症全国C」と表示されるケースでは国負担
繰り上げ返済:金融機関所定の契約書を利用するためケースバイケースで、金融機関が同意した上で可能な場合や、手数料を支払った上で可能な場合等があり得ます
金利:東京都で「感染症全国」の制度を利用する場合、下記の通り定められています。
3年まで1.7%
5年まで1.6%以内
7年まで1.8%以内
10年まで2.0%以内
融資金利の上限については各都道府県の信用保証協会が発表しており、例として東京信用保証協会においては情報誌「保証マンスリー」8月号に掲載されている「新型コロナウイルス感染症に対応する 保証制度一覧」に融資条件が示されています。セーフティネット保証4号は「共有対象外」の欄を参照します。
なお、セーフティネット保証5号の認定を受けて「感染症全国」の制度を利用する場合は「責任共有」の欄を参照します。融資期間3年までは1.7%、5年までは1.8%以内、7年までは2.0%以内、10年までは2.2%以内です。
経営者(代表者)保証を不要とするための条件は、金融機関へヒアリングした限りでは「プロパーで保証協会なし・保証人なしの融資残高が存在する」場合に「(1)法人・個人分離」を満たすと見做すそうです。
(4)危機関連保証
先述のセーフティネット保証4号と同様に、信用保証協会から保証を受けて民間金融機関の所定の融資条件で契約を締結するため、パンフレットに記載されている条件は融資限度額のみです。 融資限度額:2.8億円
「民間金融機関における実質無利子・無担保融資」の制度を併用する場合の追加の条件は、セーフティネット保証4号と同等のため記載を省略します。パンフレットに記載されていない条件は下記の通りです。
信用保証料:保証書に「危機対応 補」と表示されるケースでは都道府県負担
繰り上げ返済:金融機関所定の契約書を利用するためケースバイケースで、金融機関が同意した上で可能な場合や、手数料を支払った上で可能な場合等があり得ます。
金利:東京都で「危機対応」の制度を利用する場合、下記の通り定められています。セーフティネット保証4号と同様に「共有対象外」です。
3年まで1.5%以内
5年まで1.6%以内
7年まで1.8%以内
10年まで2.0%以内
また、金融機関が独自に提供している金利スワップを組み合わせて支払金利を低減させるタイプのリスクヘッジ型融資商品は、新型コロナ対応融資制度の趣旨を鑑みて利用することはできません。
新型コロナ対応融資の契約面の特徴に関する説明は以上です。
次回は「2019年の資金調達環境について」と題して、連載の第21回にて紹介した情報をアップデートします。