「リモートワーク(remote work)」という言葉はご存じでしょうか。「リモートワーク」とは、会社から離れた場所で働くという意味です。オフィスには行かずに、自宅のほか、コワーキングスペースやカフェ、レストランなどで仕事をすることも含まれます。
「リモートワーク」という働き方は、以前からありましたが、なかなか日本国内での働き方として、普及していきませんでした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、国や地方自治体から企業に対して在宅勤務を行うように促されました。会社員として働いている方々は、最初の緊急事態宣言が発令された頃は、「在宅勤務と言われても……」と困惑されたのではないでしょうか。
そして2021年11月現在、オフィスに行かなくても業務として支障がないと感じている方々もいらっしゃるでしょう。「リモートワーク」を導入している企業であっても週に1度や月に1度はオフィスで顔を合わせてミーティングを行うとルール化している企業も多いようです。さらに、「フルリモートワーク」といって、まったく出社せずに仕事をする働き方も、まだ多くはありませんが導入している企業もあります。そこで、今回は、「リモートワーク」や「フルリモートワーク」で働く場合に、知っておきたい情報をお伝えしていきます。
自宅でケガをした場合は?
例えば、プライベートな時間に自宅または外出先でケガや病気をして病院に行ったとき、私たちは、保険証(健康保険や国民健康保険の被保険者証)を提示して、原則として全体の医療費の3割(小学校入学から70歳未満)を負担します。一方、業務上でケガや病気をして病院に行った場合、労災保険(労働者災害補償保険)より保険給付を受けられるため、診察や治療の費用を、労働者側が負担することはありません。では、在宅勤務中にケガをした場合は、どうでしょうか?
[具体例]
所定労働時間内に自宅にある仕事用の部屋でパソコン作業中に、本棚にある資料を取るために立ち上がり、座る際にバランスを崩して転倒してケガをした。 上記のようなケースの場合、業務災害に該当するとされ、労災保険より保険給付が受けられます。ただし、企業によっては「業務中の災害である」という証拠を提示するように求められる場合もあるでしょう。
このような場合に備えて在宅勤務をする際には、下記のような報告をメール等で行うとよいでしょう。
【1】事前に在宅勤務をすることを上司が知っていたとしても、在宅勤務する当日、改めて上司に、在宅勤務であることを伝える。
【2】子供の送り迎えや食料の買い出しなど中抜けする場合、事前に上司に中抜けする理由と時間を伝えておく。
【3】所定労働時間を過ぎて残業する場合は、残業する前に上司に残業する業務と残業終了予定時間を伝える。
【4】その日の業務が終了したときは、上司に1日の業務内容と業務終了時間を伝える。
最もよいのは、【1】~【4】のような内容を報告しやすいように、業務時間の設定、業務の記録方法、報告義務項目、業務の進捗状況、業務以外で伝えておきたいことなどフォーマットを作成して、ルールを明文化しておくことでしょう。
現在ではまだ、セキュリティ上の理由で「リモートワーク」は承認しているが、在宅勤務しか認めないという企業が多いようです。自己判断でコワーキングスペースやカフェなど、自宅以外の場所で働いているときにケガをした場合は、業務だけではなくプライベートな時間も過ごしていたとされて、労災保険においての業務災害として認められない可能性が高いです。
現時点では、リモートワークで働く場合、労災保険の保険給付が受けられるかどうかは、あいまいな点が多いです。そのため、リモートワークするときは、業務時間とプライベートな時間を区別して、仕事の進捗状況をこまめに上司に報告するなどして、リモートワーク中のケガや病気になったときの事前対応をしておきましょう。