「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

駐車場2台分の一戸建て

東京在住の頃、住んでいた地域は、高層マンションが建ち並び、一戸建ての数は少ないと感じました。住んでいた場所の近くにあった一戸建ての多くは、おそらく後から建設された高層マンションの陰となってしまい、日が当たらない家もありました。

現在住んでいる地域は、一戸建てが多く、中には集合住宅もありますが、2階建てで4~8世帯くらいのこじんまりした建物が多いです。一戸建ては、広い敷地で、駐車場が2台分ある家も多く、「地方は車社会」と言われますが、その言葉を実感しました。前回は、マンション購入について調べましたが、今回は、フラット35を利用した建売住宅融資利用者を対象に、一戸建て(新築の建売住宅の場合)購入に関して調べてみました。

一戸建て購入者は、マンション購入者よりも決断が早い?

表1を見てみると、年齢は、2017年度の東海圏以外は、すべて30代です(青色で表示)。前回のマンション購入者は、すべて40代でしたので、一戸建て購入者の方が早めに購入の決断をしているようです。

  • (表1)2017年度フラット35 建売住宅融資利用者の主要指標
    ※出典「フラット35利用者調査 2017年度」の「2017年度フラット35建売住宅融資利用者の主要指標」(住宅金融支援機構)

世帯年収は、マンション購入者の多くは、約700万円台~800万円台でしたが、一戸建て購入者の多くは、約500万円です(赤字で表示)。これは、マンション購入者と一戸建て購入者の年代の違いが年収に影響していると思われます。

また、マンション購入価額は、4,000万円を超える地域が多いですが、一戸建て購入価額は、2,000万円台後半から3,000万円台で、一戸建ての購入価額の方が低いです。しかし、住宅面積は、一戸建ての方が広いのです。「面積が広い方が、購入価額も高いのではないか」と考える方もいらっしゃると思います。一戸建ての方が、購入金額が低い理由として、下記のようなことが考えられます。

〇素材の違い:一戸建ては木造で建てられる場合が多く、一方マンションは鉄筋コンクリートで建てられる場合が多い。

〇立地の違い:マンションの方が、駅前や主要道路沿いなど地価が高い場所に建設することが多いので、土地代が高い。その土地代が購入価額に反映されている。

〇設備の違い:マンションの方が、免震や耐震構造となっていたり、防犯セキュリティ、防火機能などの設備が充実していたり、建物自体の付加価値が高いため、購入金額が、一戸建てよりも高くなる。

手持金(頭金)の伸び率は、一部の地域を除いて、マンション購入者と同様に、2016年度よりも2017年度の方が下がっています(紫色で表示)。近年は、比較的住宅ローンの金利が低いので、手持金を貯めずに、住宅ローンを組む人が増えているようですが、住宅の購入を検討しているのでしたら、早めに手持金の準備にとりかかると良いでしょう。

住宅を購入した後に、結婚、出産、教育、介護などで多額の出費が出る可能性は大きいです。手持金が少なかったために、月々の住宅ローン返済額が重くなり、さらに他の出費が重なり、思い描いていた生活ができなくなってしまうのでは、本末転倒です。

前回の表2(マンション融資利用者の主要指標)と今回の表1の「手持金」の金額を参考に、少しずつ貯蓄していきましょう。

終わりに

現在は、住宅に関する価値観も多様化し、家の中で床の騒音を気にせずに子供達と賑やかに暮らしたいので一戸建てが良い、駅から近くてセキュリティがしっかりしているマンションの方が良い、など様々な考え方があると思います。 一戸建てには、自由に間取りの変更や増築、建て替えができる、駐車場や駐輪場代がかからないなどのメリットがあります。逆に、修繕費を自分で計画的に貯めておく必要がある、災害や害虫などの対策を自ら考えなければならないなどのデメリットがあります。

マンションには、オートロックや防犯カメラなど防犯性が高い、建物自体の管理は管理会社等に任せられるなどのメリットがあります。逆に、駐車場代や駐輪場代がかかる、管理組合などでの決定事項に従わなければならないなどのデメリットがあります。

一戸建てとマンションのメリットとデメリットを理解した上で、住宅を購入することが大切です。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。