「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

ふるさと納税の返礼品というと、米、肉、魚、果物などのその地域ならではの特産品や、日常的に使うトイレットペーパーやティッシュペーパー、タオルなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。そして、その返礼品は、自分や自分と一緒に暮らす家族のためだけにあると考える方もいらっしゃるでしょう。

間違いではありませんが、そもそもふるさと納税とは、「自分のため」ではなく、生まれ育った地域や、魅力的と感じた地域を応援するために寄附をする制度です。 あくまでも、返礼品は、寄附を受けた自治体が「お礼」としてするものです。その「お礼」の返礼品も誰かのために役立てるというのはどうでしょうか。

今回は、「自分のためでなく誰かのためになる」ふるさと納税返礼品をお伝えしたいと思います。

思いやり型返礼品とは?

「思いやり型返礼品」とは、寄附をすることで、自分のためでなく誰かのためになる返礼品や、社会貢献に繋がる返礼品のことです。この思いやり型返礼品を全国に広めるプロジェクトのことを「きふと、」と呼びます。

2017(平成29)年7月に群馬県前橋市が始め、取り組みに賛同した岩手県北上市も2018(平成30)年より開始し、2024年9月現在では、北海道から沖縄まで、全国の多くの自治体が賛同しています。参加自治体については、下記の「きふと、」サイトをご参照ください。

一般的な返礼品と思いやり型返礼品の違い

一般の返礼品

寄附をする→自宅に返礼品が届く
食料品や製品など、地域の事業者の売上に貢献し、地域産業の支援や雇用支援に繋がります。

思いやり型返礼品

寄附をする→返礼品が誰かのためになる
自分が品物を受け取るのではなく、誰かに返礼品を送ったり(直接支援)、障がい者福祉施設等で作られた品物を受け取ったり(間接支援)することで、地域のNPO(非営利団体)や児童養護施設などの支援に繋がります。

思いやり型返礼品は4つに分類される

【1】支援型…障がい者支援施設などで作られた製品を返礼品として選ぶことで、障がい者の雇用支援に繋がります。
【2】寄贈型(あしなが型)…寄附した人からの寄贈として、運営困難な子ども食堂に対して食料品を送る費用などに活用されます。
【3】協賛型…NPOや障がい者支援施設、コミュニティ活動団体、職業訓練学校など地域で活躍する団体への協賛金になります。
【4】参加型…お年寄りのための雪かきや草取りなどの、困っている人を直接手助けする体験イベントなどを行います。

参照:「きふと、」の詳細はこちら

「思いやり返礼品」の具体例

■茨城県結城市(【1】支援型)
返礼品:デニッシュやクロワッサンなどのパンセット
寄付金額:1万1,000円
社会福祉法人が運営する就労継続支援B型事業所で働く人々がパンの製造や販売に取り組んでいます。詳細はサイト参照

■福岡県北九州市(【2】寄贈型)
返礼品:子ども食堂へ手造り醤油を寄贈
寄付金額:1万円以上
寄附した人からの寄贈として、北九州市内の松中醤油が製造する手造り醤油を北九州市内の子ども食堂へお送りします。なお、寄贈先への子ども食堂や送付時期は、北九州市におまかせとなります。寄附した人へは、醤油を受け取った子ども食堂を利用する子供達から感謝の手紙が届きます。詳細はサイト参照

■岩手県北上市(【3】協賛型) 返礼品:くろいわ産直支援サポーター(ブロンズ)お礼状+りんごジュース
(りんごジュース200g×5個とお礼状) 寄付金額:3万8,000円以上
閉鎖された学童保育所だった建物にくろいわ産地直売所を移転することによる、移転費用やリフォーム費用、地域活動費のための協賛金を募っています。なお、学童保育所だった施設を改修して、2024年3月31日に移転オープンしています。詳細はサイト参照

終わりに

社会貢献に繋がる「思いやり型返礼品」を選択することで、「誰かのためになる」「誰かを少しだけサポートできる」「誰かに喜んでもらえる」ことができます。「地方で生まれ育ち都心部で働く人が、生まれ故郷を応援する」、「都心部で育った人が、訪れた地方を好きになり、その地域に住む人達を応援する」などの手段として、「思いやり型返礼品」も、ふるさとの納税をする際の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。