こんにちは。写真家の桐島ナオです。この連載では猫を一眼デジタルカメラで撮影する際のコツや撮影時の設定、レンズ選びなどを含めて御紹介します。今回は「よくある失敗写真とその対策 その1」です。

表情をうまく狙えないんです……

「きりっとした横顔……素敵ですがもうちょっと動きが欲しいところ」

猫に限らず動物の写真で一番気をつけたいのが「表情」です。どんな子なのか、何を考えているのか?その日の気分は?状況は?全てが「表情」で表現されます。では、表情をうまく狙うためにはどういう撮影方法をしたら良いでしょうか。

猫を動かすのではなく、人が動きましょう!

「おっ。ここは寝るのに良さそうにゃん」

日当たり抜群のスカイシェルターで寝床を探す猫を追いかけてみます。良い表情を撮らせていただくには猫を動かすのではなく、人間が動き、猫についてゆくこと!当たり前のようですが、良い写真を撮りたいという気持ちが焦ると人間主体になりがちになってしまうのです。

どんな被写体でもそうですが、相手の気持ちになることがとても大切。気持ち良い空間を作り上げることが、良い表情、良い関係、良い写真へたどり着く一番の近道です。

猫を動かすのではなく、人が動きましょう!

「ごろにゃん」

お?寝床が決まりましたか?人間は猫の邪魔をしないように、黙って少し離れて撮影しています。

「やっぱ寝ないにゃん」

あれ。気になるものがあるようです。気まぐれな猫だからこそ、一瞬一瞬で表情が変わります。逃さないように、丁寧に1枚づつ撮影させていただきます。

猫がちょっと気になるものを見つけたようです。この時は一眼レフだったので、撮影中はファインダーを離さずそのまま撮り続けます。

「やっぱやめたにゃん」

真剣だった横顔をごまかすように、ぺろりと舌を出す可愛い表情が撮れました。気まぐれな子だからコロコロ変わる表情もとっても愛らしくて。逃さないように撮影するには、1枚1枚撮影画像を確認しないこと。猫の動きを邪魔しないように、ついていけるように対応しましょう。

黒猫を黒く撮れないんです……

「ん?呼んだかにゃ?黒猫なのに黒くないにゃ!?」

次はよく私が開催する撮影会の中で、「難しい!!」の声が多数上がった「暗い場所にいる黒猫」の撮りかたです。

オート撮影モードで撮影した黒猫写真が「実物よりも明るく撮れてしまった」という経験はありませんか?上に挙げた写真も同じく、暗い所に黒猫がいる状況なのに妙に明るく撮れてしまいました。

黒猫の黒い色を撮影する場合、カメラは「真っ暗で何も見えていない!」と認識して「明るく撮らなくては!」と考えることが多いです。黒猫を明るくすると……黒猫ではなくなってしまいますね。

この場合は「露出補正でマイナス補正をする」か「マニュアル操作で露出をマイナス側にする」と写真が暗くなります。

「今度は真っ黒で何もわからないにゃ!!」

思い切りマイナス側にしすぎると真っ黒になってしまいますのでお気をつけください……。(でもこれも可愛いなぁ……と思ってしまう筆者です笑)。

「今度はバッチリだにゃん♪」

適正露出(プラスマイナスの真ん中の露出)よりも、少しだけマイナスにしてみたら程よい黒猫になりました!

撮った写真を画像処理ソフト等で加工する方もいますが、撮影した後に写真をいじるよりもその場で露出をきちんと決めた方が被写体をより深く見つめられると思います。特に黒猫、白猫は丁寧な露出が求められる素敵な被写体です。是非じっくりお付き合いいただいて、撮影させていただきましょう!

素敵な逆光写真が撮れないんです……

ふんわり優しい雰囲気を狙うなら逆光写真が毛並みも光も柔らかくて素敵な雰囲気になります。……が、逆光写真を撮影する場合は、光の方向と被写体の立ち位置が何よりも重要です。

「逆光写真なんか撮らせないにゃ!」

被写体さんが非協力的な場所にどっかりと腰を降ろしてしまいました。この位置では逆光にならないので露出を変えながら自分が動きます。

奇麗な逆光写真を撮るには被写体の背後から強い光が差していないと撮れないと思っている方も多いようですが、実は、この程度の明るさでも十分に撮影が可能です。まずは露出をプラス側に動かします。

「ん?明るくなったにゃ?」

露出をプラスにするだけで随分印象が変わります。露出をプラスにすると、シャッタースピードが遅くなるため、手ぶれに注意しましょう。

また、ISOをオート以外にしている人は大きめの数字に設定することをおすすめします。1枚目から2枚目の明るさにする際に、ここではISO400からISO1600に変更しました。薄暗い場所での撮影や、手ぶれが心配な人、動く猫を撮影する際などはISOの数字を大きな数字にするのをお忘れなく……。

「はつ。もしやこれはなでなで……!?」

猫さんにお付き合いいただいているので、緊張をほぐすためにもなでなでさせていただきます。そして、目線を猫と同じまで下げて正面に回ると……猫(被写体)の後ろから柔らかく光が差す逆光になります。

「なでなで……はにゃーん……」

すっかりなでなでのとりこの猫さんです。こっちがデレデレしてしまいますが……片手でカメラのシャッターを切るのをお忘れなく……。

「もうちょっと遊ぶにゃん?」

なでなで後なのでリラックスした表情の逆光写真になりました!

猫は行きたい場所に行きますし、気分で動く生き物です。人間が光を読み、動き、撮りたい構図を探しましょう。逆光は強い光でなくとも、被写体の後ろから光がふわりと当たっていれば十分です。そして、猫とのコミュニケーションとお礼の挨拶も忘れずに……。

(写真は全て東京キャットガーディアンにて撮影いたしました)

次回予告

次回は猫撮影における「よくある失敗写真とその対策 その2」です。

著者プロフィール

桐島ナオ
写真と詩を組み合わせた物語写真を中心に発表している写真家。植物と猫とカフェが大好き。PhotoCafe写真教室の講師もしています。公式HPはこちらから。

*桐島ナオ主催の保護猫カフェ月イチ撮影会 ネコサツ!*はこちらから。