缶詰を使ったレシピの中でも、炊飯器ひとつで作れる「炊き込みごはん」は常に人気です。しかし缶詰博士の黒川氏は、炊き込みごはんよりもさらに手軽に作れる「混ぜごはん」に注目しているそうです。

「混ぜごはん専用の缶詰も増えてます。残りごはんと混ぜるだけ。究極の時短メニューです!」

今日はそんな混ぜごはん専用缶詰の紹介です。

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  • 富永貿易/トミナガ さば先生 ケチャップ味 150g 430円

    富永貿易/トミナガ さば先生 ケチャップ味 150g 430円

富永貿易の思惑

缶界(缶詰業界)でじわじわと勢力を増している、混ぜごはんの素の缶詰。炊き込みごはんの素ではありませぬ。混ぜごはんの素、であります。

僕が把握しているだけでも、現在5社で17種類もの商品が出ている。その中でも比較的新しいのが、富永貿易「トミナガ さば先生」だ。

普通のさば缶と違い、ごはん(2杯分)に混ぜるとちょうどいい味になるように、味付けはしっかり濃いめ。「ケチャップ味」と「和風だししょうゆ味」の2種類が出ていて、今回はケチャップ味を取り上げようと思う。

この缶詰は、デザインがかなり変わっている。混ぜごはんの作り方が、図解入りで詳細に描かれているのだ。中身や盛りつけ例の写真は一切なし。

実はそこに、富永貿易の思惑が隠されていた。しかし僕はまだ、そのことを知らなかった。

  • さば先生ケチャップ味の内観と、ボウルに移した様

    さば先生ケチャップ味の内観と、ボウルに移した様子

人参とコーンも入っている

開缶すると、真っ赤なケチャップの海が広がった。ケチャップ好きの僕にはたまらない光景であります。中身をボウルに移すと、さばのほかに人参とコーンが入っているのが分かった。オマケが付いてきたような、ちょっと嬉しい気分だ。

さて、台所ではごはんが炊きあがった。あとはほぐしたさば先生と混ぜるだけ。ところが、このあと僕は重大なミスを犯してしまう。

  • ごはんにOnは間違い

    ごはんにOnは間違い

問題発生

あまり深く考えずに、ごはんの炊けた鍋(炊飯器でもいいが)に、しっかりほぐしたさば先生ケチャップ味を投入した。これを混ぜれば出来上がり……と思ったら、さば特有の青臭い匂いが立ち昇ってきた。

どうしてこうなった? さば先生、教えてください!

  • 作り方を再度チェック

    作り方を再度チェック

手順を間違えた

缶詰に描かれていた作り方を再度チェックすると、手順を間違えていたことが判明。"ごはんに"投入ではなく、"ごはんを"投入だったのだ。作り方(2)の部分に「ほぐしたさば先生にごはんを入れる」という意味のことが書いてあった。すまぬ、先生!

  • 正しい手順

    正しい手順

問題解決

念のため、正しい手順も撮影しておいた。サバ先生の入ったボウルにごはんを投入して、混ぜるのだ。

この手順でやり直したら、さばの青臭さがしなくなった。実に不思議である。そこで富永貿易のW氏に訊いてみると、

「汁気が先にごはんに染みこんだせいで、匂いが強調されたのだと思います」

とのこと。順番が大事なのであります。さらに思うのは、あの作り方を前面に押し出した缶のデザインのこと。

あれは、こうした間違いを防ぐためだったのだ。いろいろすまぬ、さば先生。

  • コーンの黄色が鮮やか

    コーンの黄色が鮮やか

炊き込みごはんとまったく違う

かくのごとし。今回は添えものやトッピングは一切なし。ごはんと缶詰を混ぜただけにした。

ひとくち頬張ると、さばの旨味に甘いケチャップ、わずかな酸味、穏やかな塩味が絡みあっている。コーンがプチッと弾ける食感もいい。ちょいと昭和な味付けで、臭みはもちろんナッシング。

食べていて気付いたけど、混ぜごはんと炊き込みごはんはまったく違うものだ。

米と具を一緒に加熱する炊き込みごはんは、互いの味が融合して、味が平面的になる(均一なおいしさ)。

一方の混ぜごはんは、ごはんと具、調味料それぞれの風味が完全には混ざり合わない。だから立体的な味が味わえるのだ。

缶詰情報
富永貿易/トミナガ さば先生 ケチャップ味 150g 430円
Amazonなどの通販サイトで入手可。