缶詰を使ったレシピの中でも、炊飯器ひとつで作れる「炊き込みごはん」は常に人気です。しかし缶詰博士の黒川氏は、炊き込みごはんよりもさらに手軽に作れる「混ぜごはん」に注目しているそうです。
「混ぜごはん専用の缶詰も増えてます。残りごはんと混ぜるだけ。究極の時短メニューです!」
今日はそんな混ぜごはん専用缶詰の紹介です。
富永貿易の思惑
缶界(缶詰業界)でじわじわと勢力を増している、混ぜごはんの素の缶詰。炊き込みごはんの素ではありませぬ。混ぜごはんの素、であります。
僕が把握しているだけでも、現在5社で17種類もの商品が出ている。その中でも比較的新しいのが、富永貿易「トミナガ さば先生」だ。
普通のさば缶と違い、ごはん(2杯分)に混ぜるとちょうどいい味になるように、味付けはしっかり濃いめ。「ケチャップ味」と「和風だししょうゆ味」の2種類が出ていて、今回はケチャップ味を取り上げようと思う。
この缶詰は、デザインがかなり変わっている。混ぜごはんの作り方が、図解入りで詳細に描かれているのだ。中身や盛りつけ例の写真は一切なし。
実はそこに、富永貿易の思惑が隠されていた。しかし僕はまだ、そのことを知らなかった。
人参とコーンも入っている
開缶すると、真っ赤なケチャップの海が広がった。ケチャップ好きの僕にはたまらない光景であります。中身をボウルに移すと、さばのほかに人参とコーンが入っているのが分かった。オマケが付いてきたような、ちょっと嬉しい気分だ。
さて、台所ではごはんが炊きあがった。あとはほぐしたさば先生と混ぜるだけ。ところが、このあと僕は重大なミスを犯してしまう。
問題発生
あまり深く考えずに、ごはんの炊けた鍋(炊飯器でもいいが)に、しっかりほぐしたさば先生ケチャップ味を投入した。これを混ぜれば出来上がり……と思ったら、さば特有の青臭い匂いが立ち昇ってきた。
どうしてこうなった? さば先生、教えてください!
手順を間違えた
缶詰に描かれていた作り方を再度チェックすると、手順を間違えていたことが判明。"ごはんに"投入ではなく、"ごはんを"投入だったのだ。作り方(2)の部分に「ほぐしたさば先生にごはんを入れる」という意味のことが書いてあった。すまぬ、先生!
問題解決
念のため、正しい手順も撮影しておいた。サバ先生の入ったボウルにごはんを投入して、混ぜるのだ。
この手順でやり直したら、さばの青臭さがしなくなった。実に不思議である。そこで富永貿易のW氏に訊いてみると、
「汁気が先にごはんに染みこんだせいで、匂いが強調されたのだと思います」
とのこと。順番が大事なのであります。さらに思うのは、あの作り方を前面に押し出した缶のデザインのこと。
あれは、こうした間違いを防ぐためだったのだ。いろいろすまぬ、さば先生。
炊き込みごはんとまったく違う
かくのごとし。今回は添えものやトッピングは一切なし。ごはんと缶詰を混ぜただけにした。
ひとくち頬張ると、さばの旨味に甘いケチャップ、わずかな酸味、穏やかな塩味が絡みあっている。コーンがプチッと弾ける食感もいい。ちょいと昭和な味付けで、臭みはもちろんナッシング。
食べていて気付いたけど、混ぜごはんと炊き込みごはんはまったく違うものだ。
米と具を一緒に加熱する炊き込みごはんは、互いの味が融合して、味が平面的になる(均一なおいしさ)。
一方の混ぜごはんは、ごはんと具、調味料それぞれの風味が完全には混ざり合わない。だから立体的な味が味わえるのだ。
缶詰情報
富永貿易/トミナガ さば先生 ケチャップ味 150g 430円
Amazonなどの通販サイトで入手可。